第十七罪
No.61 利き犯罪者やらせたら最強です?
「おぉい、女乃都!! お前安全運転ってもの知らねぇのか! どうやったらこんなに揺れんだよ!」
「あぁも、うっさいです!! そんな言うなら先生が運転してくださいよ!」
「お前、私が免許持ってないこと知ってて言ってるのか? 免許無しで運転すると捕まるんだぞ?」
「免許持ってないぃ!? じゃなんでリムジン買ったの!?」
いや、そんなん乗るためだろ。いつまで経ってもバカだな、この女は。
今日私はリムジンを買った。
と言うのも、何かと仕事で色々と出回ることが多い。いつもタクシーを使っているのだが、タクシー高いし。
とまぁ、そんな理由で自家用車としてリムジンを買った訳なんだが......。
元より私は免許を持たないのだ。
「意味分かりませんでしたよ。突然免許を取りに行けだなんて。それも、普通の一般的な免許だけじゃなく、大型まで!!」
「リムジンって見た目的に大型かなと思ったんだよ!」
「先生って変なところ抜けてますよね......」
いやいや、リムジン大型だと思ってるやつ結構多いと思うぞ。
リムジンは乗っている人数が十人以下で総重量が五トン未満のリムジンであれば普通免許証で運転できるらしい。
つまるところ、私と女乃都だけの二人だけであるため普通免許を持っていればいいのだ。
「まあ、良かったじゃないか。運転免許は一回合格できて。お前司法試験落五だったろ?」
「司法試験とレベルが違いすぎて驚きましたよ、ホント」
そう言ってため息を吐く。司法試験は三回落ちると非常に面倒くさい。
説明するのさえ面倒くさいくらいに面倒くさい。
そんな面倒くさいの極みみたいな試験を一切面倒くさがらず何度も挑戦したという点だけ、私は女乃都を評価している。ちなみに私は一発合格だったしそこまで難しいと感じていなかったので、落ちた人間の気持ちなんぞ全く分からないのだが。
「あ、ところで今日の依頼のお話って......?」
「あぁ、まだ話していなかったか」
「はい。空港に向かえ、としか聞いてないです」
「実はな、ちょいと変なヤツに以来頼まれてな」
「変なヤツ、ですか......」
「あぁ。その依頼人ってのが......」
その時、私は前方を見て言葉が止まった。
何やら一人の男がこちらをじっと見つめていたのだ。
普段ならなかなかお目にかかれないリムジンに興味があるのだろうか。
私がそんなことを考えていると、突然男は走り出した。
猛スピードで走る男は止まる気配がない。勢いそのまま、男は車道に。
「女乃都! 止まれ!!」
「え?」
私の忠告虚しく、時すでに遅しだった。
ゴンという鈍い音と共にリムジンが停車する。
女乃都は走って車道に出て来た男を、轢いてしまったのだ。
「うわぁっ!? やっちゃったぁ!!!」
「そんなこと言ってる場合か!! 行くぞバカ寝癖!」
運転席でオロオロする女乃都に声を掛け、外に出る。
周りでは人だかりができており、言い訳は出来ない。
男は車の四メートル程先に吹っ飛ばされていた。見た目から推測する年齢は、五十代前半。少し白髪混じりでいかつい体だ。
私と女乃都が駆け寄ると、うめき声をあげながらこちらを見てくる。
「あんたたちかぁぁ。乗ってたのは」
「えぇ、そうです。体の方は大丈夫でしょうか?」
面倒ごとにしたくない私は、努めて優しい口調で話す。だが、男はそんなの気休めにもならないと言わんばかりに声を荒げた。
「運転してたのは、どっちだ!!」
「ひぃぃ! わ、わたしです〜〜」
「そっちか......。おい、あんた慰謝料払えよ」
「い、慰謝料!?」
「当たり前だろ! こちとらケガしてるんだ!」
男は手を震わせながら、指を四つ立てた。
「よ、四十万!?」
「あぁ、そうだ。今すぐ払え! そうすりゃ警察には連絡しない」
「ど、どうしましょうせんせぇ〜〜」
「............」
いや、それはおかしいだろ。こういう場合、まず一番にしなくてはいけないのは警察への連絡。自分がケガをしたという時は救急車の方が先だ。
何故この男は警察、救急に連絡しないのか。
理由は一つだろう。
「おい、あんた」
「な、何だ! お前が金払うのか!?」
「あんた、当たり屋だろ」
「え!?」
「げっ!?」
不敵に笑う私を見て、男はターゲットを間違えたという顔をした。
女乃都だけなら騙せていただろうが、私という人を疑いから始める者がいたのは不幸だったな。
次は当たり屋、涙の告白!?
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