101神猫 ミーちゃん、美猫親子と仲良くなる。

 具体的な説明を始めよう。


 白亜の迷宮までは馬で移動、これはギルド長に既に手配済み。白亜の迷宮で第三騎士団の騎士と合流して、ゴブリンの分布図及び本拠地の探索に五日を掛ける。それで見つからなければ撤収にする。地図作りは俺のマップスキルが役に立つ。それなりに、歩き回るだけでも地図ができるので良しとする。


 出発は明日の早朝、準備は万全にお願いしますよと念を押す。



「ゴブリンとの戦闘は考えてないのかな?」


「今回は調査偵察が目的ですので、戦闘は極力したくないです。相手に我々の事を知られたくないので」


「本拠地を見つけた場合はどうするんだ?」


「見つけた時点で、ある程度の情報収集の後撤収します」


「逆に、相手に見つかったら?」


「逃げます。あくまでも我々の任務は調査偵察です」


「騎士団の者も行くと言う事だが、指揮権はネロ君で良いのか?」


「当然です。勝手はさせません。騎士団長とも話はついています」



 他に無いようなので解散します。この後、ギルド長から皆さんに今回の依頼料が支払われるようです。


 俺達はお昼にしますか。



「み~」



 下の酒場に行くと、ペロとセラ、ルーくんが山盛りのご飯に囲まれご満悦だ。何が起きてるの?



 先程の訓練場での戦いを見ていたハンターさん達が奢ってくれたそうです。そうですか、一食分浮いたね。ラッキーです。



 ミーちゃんと美猫親子に猫缶とミネラルウォーターを出してあげる。俺はランチを注文する。



「にゃお~ん?」


「みゅ~?」


「どうぞ、召し上がれ」


「み~」



 ミーちゃんと一緒にハムハム食べ始めた。フェルママ体調もだいぶ良いみたい。パルちゃんも乳離れしたようで猫缶を美味しそうに食べている。元気に育てよ。



「み~」



 今日のランチはパンに大きなお肉が挟まれたサンドイッチだ。お肉はケチャップで味付けされていてタマネギのスライスも挟んでありパンに良く合ってる。何とも豪快でボリュームのある料理だね。


 ハンターさん達にも大好評のようだし、ギルドのお姉さん達も買って行きどこかで食べるようだ。流石に、人前で大きく口を開けて食べるのは恥ずかしいのかもしれない。



 午後からは大気スキルの講習会。時間はまだあるので訓練場の陽あたりのよい場所でお昼寝でもしようか。美猫親子も一緒に来るようです。


 陽の当たる場所にシートを敷くとシートの上でミーちゃんがパルちゃんの毛づくろいを始め、フェルママがミーちゃんの毛づくろいを始めた。仲の良いほのぼのとした光景だね。


 俺はその横でお昼寝タイム。



「ネロ君、時間だぞ」



 ギルド長の声で起こされた。周りを見るとペロにセラ、ルーくんもお昼寝している。みんなを起こさないようにして訓練場に移動する。


 男女のハンターさん十人とギルド長、パミルさん他三人の教官らしき人が集まっている。


 取り敢えず、自己紹介をしてからハンターさん十人に聞いてみた。



「みなさんは大気スキル持ちですか?」



 全員が頷いている。大気操作スキルの方はいないようだ。ちなみに操作スキルも熟練度があがると上位スキルになる事があるようです。


 一人一人に自分の最高の力で大気スキルを使ってもらったけど、大抵の人は若干強めの風を起こせる程度だった。


 さっきの訓練場での戦いを見ていたようなので、虎獣人のお姉さんを吹っ飛ばしたのは大気スキルと言ったら、興奮し始めて全員に詰め寄られて身動き取れなくなり、ハンターさん達にギルド長の雷が落ちた。


 取り敢えず、理論を説明する。ゼルガドさんからもらってきた筒で、一セン厚に切った大根に突き刺した筒に大根の蓋をし、反対の方向から棒に水で濡らした布を巻きつけた物を差し込み押す。


 ポンッ!


 と、筒の先を塞いでいた大根が飛んで行く。小さい頃に遊んだ経験があるおもちゃの空気砲だ。


 これを使って空気の圧縮を実地で教え、実際にやってもらい感覚を掴んでもらう。それでもよくわからないと言う人には、筒を塞がない状態で後ろの棒を押して空気を押し出してみせたり、先端を自分の手で塞いで棒を押してもらって空気の圧縮を実感してもらった。


 後はそれを実践してもらう。台の上に載せた三本のロウソクに火をつけて、少し離れて真ん中のロウソクの火を空気圧で消してもらうのだ。


 風を起こして消そうとすれば、真ん中以外も消える。ちゃんと空気を圧縮して一点に撃ち出せば真ん中だけ消える訳だ。実際におもちゃの空気砲と俺がやって見せると、真ん中のロウソクの火が消えたね。


 これができるようになるまで、練習してもらった。一時間程で全員できるようになったので、優秀な人を集めたって言うのは本当らしい。


 ここまでできれば、後は練習あるのみ。イメージしやすいように、一人一人に空気大砲を味わってもらう。みんな良い飛びっぷりでしたよ。


 次は応用編。


 ロウソクの前に集まってもらって、火の着いたロウソクにガラスのコップをかぶせる。すると、火が消える。


 無反応……あれ?


 不思議に思わないのか聞いてみると、洞窟や鉱山などでは奥に行く時にロウソクに火をつけて持って行くそうです。火が消えると空気が無く、危険と言うのは常識との事。空気が無くなる訳じゃないんだけどね。簡単な説明は必要のようだ。


 そこで空気が無くなるのではなく、火を燃やすものが無くなると説明してから同じ実験をする。今度はコップの中に酸素を作るイメージで大気スキルを使う。火は消えずに燃え続けている。が、これは結構きつい、二酸化炭素を分解するイメージでやってるのだけど、すんなりとはいっていない。


 これは俺が二酸化炭素を分解する為の知識を持っていない事から、強引に分解してるからだと推察できる。光合成って凄いんだね。


 これには流石にみんな驚いている。疲れた甲斐がありました。これを元に簡単な実験に切り替える。


 ロウソクの火に酸素を集めて火力をあげる実験だ。これは周りから集めるイメージなので簡単。


 十人にも、周りから火を燃やす性質を持った見えない物を集めると言うイメージでやってもらう。実際に目の前で俺がやった事を見ているので、これも意外と簡単できるようになった。


 なので、次は水素を集めて見せる。少し離れてもらってから、ロウソクの火に周りの水素を集める。


 ボンッ!


 と音がして火が消えた。みんなびっくりしている。水素を作ったのではなく、集めただけなので今のが限界だと思う。


 ここで、集めると作ると言う事が別だと説明する。大気操作スキルはそこにある物を操作するだけ、大気スキルはそこに無い物でも作る事ができる可能性があると言う事。正直、これを理解するには柔軟な考え方ができないと難しいと思う。だからこそ、学問としてスキルを研究する必要があると思う。


 小学生卒業程度の理科の知識が欲しいところだ。すぐには無理だけどねぇ。でも、これがその一歩になってくれれば良いと思う。


 ギルドだけでなく、国が国民が初等教育を受けれるように環境を整えてくれる事を切に願う。


 腐ってても、日本の教育は優秀だったんだなぁ。





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