58神猫 ミーちゃん、本物のお姫様に遭遇する。

 ゼストギルド長と王宮の中を兵士に先導され進んでいく。もちろん、ミーちゃんを抱っこして、ペロとは手を繋いでいる。



「凄いにゃー!」



 さっきから、これしか言ってないよ。


 ミーちゃんはお仕事着なので、お仕事モードに入りおとなしくしている。



 兵士さんがとある部屋のドアをノックして中に入り中に居る人に俺達の来訪を伝える。



「お客様をお連れしました」


「ご苦労、下がって良いぞ」


「ハッ!」



 部屋の中に居た人の年の頃は、ギルド長と同じくらいだろう。身長は高いが華奢な感じのする方で、眼鏡を掛けた眼付きの鋭い人だ。



「久しいな、ゼスト。呼んでも来ぬ癖に、今日は自ら来るとはどんな風の吹き回しだ」


「ふん。用があるなら出向いて来い。用があるから儂とてこうして出向いておるんじゃ」


「簡単に言ってくれるな……それで用とは?」



 ギルド長は俺が持って来た手紙を渡す。



「急がねば、大戦が起こるぞ」


「ふむ」



 部屋の主は眼鏡を掛け直し手紙を読み始める。ざっと目を通した感じで読み終えた部屋の主はギルド長に問いかけた。



「これを届けた使者は?」


「ここにおる者だ」



 部屋の主は眼鏡をずらして、全てを見透かすような眼差しで俺を見ている。鑑定持ちなのだろうか? 一つだけわかるのが、この人に逆らってはいけないと直感スキルが教えてくれる。



「私はこの国の宰相でアーデルベルトと言う。君がこの手紙を持って来たのかね」


「ネロと言います。この子はミーちゃん。こっちはペロです。その手紙は私がゼストギルド長に届けました」


「ふむ。書かれた日と届けられた日にちが合わないようだが、どうやってここまで来た?」


「私にはバトルホースの仲間がいます。彼女に頼んで乗せて来てもらいました」


「み~」


「仲間か……君が知っている事を聞かせて欲しい」



 宰相のアーデルベルトさんに、クアルトでゴブリンの襲撃にあった事から流れ迷宮の事、隣村が襲われた事、迷宮も襲われた事を語ったよ。



「迷宮が襲われた? 何故だ……」


「その事に関して、私なりに仮説を立ててみました。お話してもよろしいでしょうか?」


「仮説か……構わんよ」



 なので、以前考えた仮説を語ってみる。ゴブリン達の装備品の事だよ。



「この仮説は君が考えたのか?」


「はい。ゴブリンの襲撃を連続で二晩受けた時、ゴブリンは一日目のミスを修正して来ました。そこで、ゴブリンはそれなりの知性を持っているのではと考えました」


「ゴブリンが迷宮探索じゃと、信じられんな」


「だが、彼の仮説はあながち間違ってるとは言えまい。我々とて、あの武器防具はどうやって手に入れているのか、一度は考えた事があるだろう?」


「そうじゃが……だとしてどうする?」


「取り敢えずは、奪われんようにするくらいだな。ジェネラルまで居るとなると、多くのゴブリンが居る事になる。となれば、 武器防具が足りぬのは目に見える」


「早急に騎士団は動かせるのかのう?」


「何とかせねばなるまい。あの老害共を説得してな」



 アーデルベルトさんが、机から何かを取り出して渡して来た。少し大きい懐中時計のように見える。



「これは時計と言う物だ。朝に鐘の音に合わせれば、二、三日は正しく時を刻む。手紙を届けてくれた礼だ」


「ありがとうございます」



 やはり、時計だった。おそらくとても貴重な物なんだろうね。ウイラー道具店にでさえ売ってなかった代物だからね。



「ネロ君、儂はまだ話さなければならん事がある。しばらく、外の中庭で待っててくれ」


「わかりました」



 扉を出て目の前の中庭の芝生に腰をおろす。



「怖かったにゃ……」


「みぃ……」



 ミーちゃんのお仕事着をピンクのリボンだけにしてあげ、芝生の上におろしてあげ自由にさせる。ペロは芝生のうえでゴロゴロしている。


 ミーちゃんをコロコロと転がして遊んでいると



「ねこしゃん」



 いつの間にか後ろに女の子が立っていた。ちょっとびっくり。


 女の子は三、四歳くらいだろうか、可愛らしい顔立ちをしている。


 女の子はミーちゃんをなでなでしてから抱き上げ、ペロの横に行ってペロの手の肉球を指でツンツンしている。



「プニャプニャ」


「なんにゃ?」



 今度はミーちゃんの前足の肉球をツンツンして



「プニャプニャ」


「み~」



 ニパっと笑顔を見せた。


 その後も、ペロに抱きついてほっぺ同士をスリスリしたりしている。どこの子なんだろう。王宮の中に居るんだから貴族の子には違いないんだろうけど……。


 害もないので、しばらく好きなようにさせていた。ペロの事がだいぶ気に入ったようで、ヒシっとしがみついて離れない。ペロはモテモテですな。ペロは困惑気味だけど、好きにさせている。大人だ……。



「姫様!」



 中庭の脇の回廊から侍女さんのような方が現れた。



「ねこしゃん」



 女の子は侍女さんっぽい人に、ミーちゃんを抱っこして見せている。


 ん? 姫様……姫様だって!



「あら、レーネ。可愛い子猫ちゃんね」


「おかぁしゃま!」


「み~」



 また、違う女性があらわれる。見るからに高貴な方だね。お姫様がお母さんって呼ぶんだから……王妃様!


 何がなんだかついていけない。



「この子猫ちゃんはあなたの飼い猫なのかしら?」


「はい。ミーちゃんです。私はネロ、こっちは……」


「ペロにゃ」


「アンネリーゼ様! 怪しい者です! 近寄ってはなりません! 兵士は何をしているのですか!」


「落ち着きなさい。ニーア。このペロちゃんはケットシーですよ。ケットシーは心の綺麗な者にしか近寄らないと言われています」



 そうなの? ペロ? ペロはきょとんとした顔をしているので、迷信か何かなのかもしれないね。でも、その勘違いのお陰で騒ぎにならずにすみそう。



「ネロ君は、どうしてここに居るのかしら?」


「ギルド長と宰相様がお話をされている間、この中庭で待つように言われました」


「そう、それならお暇なのね」


「そう言う事になると思います」


「それでは、お茶にご招待させて頂けないかしら? レーネがミーちゃんとペロちゃんを気に入ったようですから、是非ともお受けして欲しいわ」



 この場合のお受けするのと、断るのどっちが失礼になるんだろう? ちらっとニーアさんを見ると、俺の疑問に気付いたようで頷いてくれた。



「謹んでお受け致します。宰相様の方は如何すればよろしいでしょうか?」


「誰かを行かせますので、気にする事はないわ」



 ミーちゃんを抱っこしたお姫様と王妃様に、手を繋ながれペロが歩いている。胃が痛いんですけど……。


 先程の中庭より立派な庭のテラスに連れて来られ、座っています。なんでこうなった……。


 今ミーちゃんは王妃様に抱っこされ、ペロはお姫様とお菓子を食べている。ふたりの物怖じしない性格が羨ましいね。



「み~」




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