46神猫 ミーちゃん、ネロのスキルに喜ぶ。

 ミーちゃんが野良猫さん達との交流も終わったようなので、ゼルガドさんの工房を後にした。


 ハンターギルドに行く前に屋台でサンドイッチを買っていく。馬舎からスミレを連れて街の外周を、散歩兼ウォーキングを始める。今日も街を半周した所でスミレを自由にさせてあげる。鑑定しても何も出なくなったので完治したと見て良いだろう。後は太るだけだ。だいぶ痩せこけているからね。


 防壁の傍にシート敷いて、ミーちゃんとお昼にする。


 お昼を食べ終わるとミーちゃんは胡坐をかいた俺の脚の間で、丸くなってスピスピ寝てしまった。寝ているミーちゃんも可愛いね。


 こないだの迷宮の時に出た透明な板を出す。新しくスキルが覚えられるようだ。選べるものに毒耐性、水、体力UPが増えている。毒耐性はアヴェラントリザードの毒を受けたからだと思う。体力UPは散歩や走り込みのおかげかな。水ってなんで? ミネラルウォーターのおかげだったりしてね。


 しかし、水かぁ。面白そうではある。大気中にも水はあるしね。大気スキルと相性は良さそうだし、使いようによってはいろいろできそうだ。よし、水スキルにしよう。ポチっとっな。


 あれ? まだ消えない。アヴェラントリザードが強敵だったからかな。まあ、ラッキーって事で。


 選んだのは、当初の予定通り幸運スキルだ。運気上昇と幸運スキル、実力がまだない以上運に頼る以外にないのだ! ワッハッハッハッ! なんか虚しい……。


 ミーちゃんの桶にスミレ用の水筒から普通の水を注ぐ。さっそく水スキルの検証だ。


 よし、俺の周りの水よ集まれ! ぴちゃ……桶に一粒の水滴が落ちたね……。これだけ?


 ならば、大気スキルで水蒸気を多く含む空気を集める。すぐに水スキルに切り替えて水に変換。これでどうだ! ぴちゃぴちゃぴちゃ……つ、使えねぇー!


 やっちまった……。どんだけの範囲の大気から水を集めれば、まともな水が出るんだろうか……。


 挫折しそう……いや、まだだ。周りに水が無いからこうなるんだ。桶の水を操作してみよう。


 まずは、形状変化からだ。丸くなれ~。おぉー丸くなった。なったけどそれだけだ……。動け~。ズルズルとスライムのように桶の中を動いている。宙に浮け~。丸かった水が細長くなって伸び上がって行くけど、一定の長さになると伸びなくなり止まった。どうやら重力には逆らえないようだね……。


 更にやっちまった感が……。


 ほ、他に何かないか! そ、そうだあるじゃないか、あれをやろう。


 止まれ~。おぉー、水が凍っていく!


 せ、成功だ! 水分子の動きを止めたのだ! ならば逆もできるはずだ。水分子よ動け~。桶から湯気が立ち上り始める。よっしゃー!


 で、これって何の役に立つの?



「み~」



 いつの間にか起きたミーちゃんが、桶の外からお湯をぴしゃぴしゃ叩いて喜んでるね。ミーちゃんのお風呂用かな……これは。


 スミレが戻ってきたので水に戻して飲ませてあげた。便利と言えば便利なのかな?


 スミレを馬舎に戻してから、共同浴場に行っていつもの如くお湯を堪能する。ミーちゃんも艶々になって番台のおばさんにモフられている。


 ハンターギルドに行くと、迷宮探索に行っていたパーティーが戻って来ていたみたいだ。


 二パーティーが行ってたようで、どちらも大漁だったと言っている。二階層には隠し部屋以外にも普通に隠されていない部屋があったらしく、武器などを見つけて帰って来たそうだ。三階層に降りる道もちゃんと見つけて来てくれたらしく、明日からは三階層の探索になりそうだね。


 時間なのでミーちゃんと俺は通常業務についた。


 業務の終わりの時間に近付いた時、ふと気付いた事をヘンリーさんに聞いてみた。俺の直感スキルが何かを鳴らした気がしたからだ。



「ヘンリーさん。今日、やけにゴブリンのコアが多くないですか?」


「ん? そんなに多かったかな?」


「ゴブリンだけでなく、ゴブリンウォリアー、アーチャー、シーフなんてのもありましたよ」


「ふむ。君、今日の買い取り伝票を見せてくれ」



 受付のお姉さんが伝票の束をヘンリーさんに渡し、ヘンリーさんはそれをチェックし始める。



「確かに、ネロ君の言う通りだ。コアをネロ君に任せた事で、私が見逃したようだね。済まない」



 ヘンリーさんはすぐにエバさんの所に向かった。



「ゴブリンの襲撃ですか?」


「襲撃では無いとしても、大きな集落を作っている可能性はあります。速やかにハンターから、聞き取り調査をすべきです」


「わかりました。明日の朝から始めましょう」



 そんなのんきで良いのかな? まあ、クイントの防壁があればゴブリンくらいなんともないか。村とは違うもんね。……ん? 村? それってヤバくねぇ。クイントと一番近い村って荷馬車で数時間の距離だよね。ゴブリンが狙うならクイントよりそっちの方だよね。



「あのう……」


「なんです? ネロ君」


「商隊とここに来る時、クアルトの街の次の村でゴブリンの襲撃に遭いました。それも二日続けてです」


「ネロ君は村の方が襲われると言いたいんだね?」


「クイントを襲うくらいなら、村を狙う方が簡単ですから」


「確かに、ネロ君の言う事には一理ありますね。わかりました。ハンターを走らせましょう」



 俺にできる事は無いので、業務終了後は宿に戻って夕食を食べた。今日は蒼竜の咆哮のみなさんは居なかったね。


 明日は迷宮探索だから朝も早いしもう寝ようか、ミーちゃん?



「み~」




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