16神猫 ミーちゃん、乙女の秘密を覗かれる。
ハンターギルドで働き始めて七日が過ぎた。
仕事にも慣れてきて、途中に一日休みもあった。五日働いて一日休みが一般の習慣だそうだ。まあ、必ずしもそうではないようだけどね。現にこの宿には休みなんて無い。あったら困る。個人商店なんかは余程の事がないと休まないようだ。
そんな休みを貰ったが、ミーちゃんと一日惰眠を貪っただけで終わった。女将さんから、良い若いもんが……って呆れられたけどね。疲れてたんだよ……。
そして今日、召喚出来る猫用品が増えている事に気付く。猫じゃらしです。定番中の定番、猫と言ったら猫じゃらし。先端にフサフサの付いたスティックタイプで、なんとスティックにはレーザーポインターまで付いた優れ物。電池はどうしてるんだろう? 神様仕様だから深く考えない。
この猫じゃらし、他にも効果が付いている。フサフサの方をモンスターに対して振ると、強制的に注意を引き付ける効果があり、レーザーポインターをモンスターに向けると嫌がると言う効果があるチートなアイテムなのだ。ミーちゃんに使うと喜ぶだけだけどね。
ギルドでの朝の仕事が一段落した時に、パミルさんに呼ばれた。なんだろう?
「隣の街までお使いに行って欲しいの」
隣街と言っても、歩いて五日はかかる距離だ。駅馬車を使っても二日はかかる。
隣街クイントは職人さんが多く居る街で、さしずめ工業都市と言うところかな。そんなクイントの街のとある工房にこの街のハンターギルドからある物の作成依頼が出され、その期日がそろそろくるのでそれを引き取りに行って欲しいって事らしい。
何故、俺なのか? 理由は簡単、一番の下っ端だからと言う事と鑑定持ちだからだ。その依頼した物が不良品でないかのチェックと、使い方をちゃんと聞いてくるのが仕事だ。
出発は明後日の朝、この街からクイントに向かう商人さんの商隊と一緒に行く事になっている。明日をその準備の為に休みにしてくれるらしく、少しだが準備金も貰えた。
パミルさん曰く、ハンターになるなら身近でその働きを見ておくことに損はないわよ、との事。
その商隊には二つのハンターさん達のパーティーが護衛する。荷馬車四台と聞いて結構大きな商隊なんだ思ったら、それが普通らしいね。
食事は商隊の方で用意してくれるけど保存食は必ず持って行くように言われ、その他にも買い揃える必要のある物をメモして渡してくれる。助かります。
取り敢えず、宿に戻って朝食を食べてから、買い物に行こう。それに部屋の荷物どうしようか? 特にペットボトルが山になっている。どこかで燃やすか? この世界なら保健所が来るなんて事もないしね。
宿の部屋に戻りバッグをテーブルに置くと、ミーちゃんがバッグをテシテシ叩き始めた。どうしたのかな? 何か入ってるの? バッグを開けるとミーちゃんは、いつかのようにハウツーブックを咥えて引っ張り出してきた。全部読んだはずだけど、何かあるの?
ミーちゃんが器用にハウツーブックを開くと、そこには新しいページが追加されている。読んでみる。神様からのようだね。
自分を送り出しスキルの改変をおこなった後、この世界を管理している実姉の神様にこっぴどく怒られた事が綴られている。魂をこの世界に送った事は問題無いが、この世界に無いスキルを俺に付けた事が不味かったようだ。だろうな、神様あの時自分で言ってたよね、この世界にあるスキルしか駄目だって。ある意味、自業自得じゃない?
しかし、そんな愚痴の為にこのページを送ったのだろうか? 読み進めると最後の方に、ペットボトルの処理方法が書かれていた。返還と言う能力で召喚で出した物を気力に戻す能力だ。猫缶の空き缶は鉄クズとしてゴミに出してたが、それも返還できる。
と言う事は……ペットボトルを召喚する。だるくなる。空のペットボトルを十個程返還してみた。ほんの少し楽になったね。返還効率は余り良くないようだけど、これでゴミ問題が解決した。
最後の最後に書き切れなかったせいか異様に小さい字で、ミーちゃんを鑑定しろと言う事と、この神様が書いたページは余程の事がないと今後送れないと書いてあった。
そんな大事なページの殆どを愚痴で埋めた神様って……敢えて何も言うまい。
「ミーちゃん、鑑定させてね?」
「み~」
乙女の秘密を覗くのだ、断りを入れるのは当然だね。もちろん、ミーちゃん以外にはそんな事しないで勝手に見るよ。なにか?
ミーちゃん
性別 女の子
年齢 永遠の五ヶ月
持ってるスキル
不老不死
ミーちゃんバッグ(容量∞)
好感度UP
苦痛軽減
神の隠蔽
称号
神様の眷属
神様のペット
「……」
突っ込み所満載過ぎて、逆に突っ込めません。
特筆すべきは、好感度UP……じゃないですね。神の隠蔽かな?
「ミーちゃん、神の隠蔽使ってみて」
「み~」
鑑定して見ると、ミーちゃん 可愛い子猫としか出てこない。これで鑑定持ちにもバレないで済んでるのかぁ。知らなかったよ。
「ミーちゃんバッグって何なのかな?」
「み~」
目の前にあったペットボトルが消えた。
「え!?」
「み~」
また、目の前にペットボトルが出てきた。
「もしかして、ミーちゃんバックって無限収納って事?」
「み~」
チート来たぁー! チートの大御所、良く言うアイテムバッグの御出座ぁ~。こいつは凄いぜぇ、物流システムを根本から否定するチート能力。これさえあれば、金儲けなんておちゃのこさいさいってもんだよ。しないけどね。そんな事したら目を付けられる事間違いなし、先ずはこのスキルがこの世界にあるかを調べないといけないな。
「そんな凄い能力があるなら、教えてくれれば良いのに」
「みぃ……」
ミーちゃんがしょんぼり顔になってしまった。
あっ、怒ってないよ、全然怒ってないからね。
ミーちゃんを抱っこして、頬同士をスリスリチュッチュッして怒ってない事をアピールしたよ。
「み~♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます