第33話「第二章」その19
「──自衛隊は?」
「間もなく桜橋に到着するそうです」
「なら案件を自衛隊拠点にいる連絡員から伝達させろ」
「了解」
「あと岐阜に指示、自衛隊の接触まで上陸しないよう監視」
「それは既に指示しています」
久屋大通駅北側、とらのあな名古屋店七階に置かれた巨大生物対策本部。中隊長の期待通り、成瀬及びその部下は次の手を打っていた。自衛隊に先行して巨大ウナギに接近、自衛隊にぶつかるまでの上陸をしないか監視を強化することである。その準備は当初から行っており、尾頭橋突破はそれが岐阜県機動隊に指示された矢先のことだった。
「なお天候悪化につき更なる警戒を全隊に重ねて徹底するよう。笹島にも念のため伝達」
名古屋地方気象台発表による予報では、雨はさらに激しくなる可能性があった。それはつまり機動隊潰滅の危険をも秘める。警察にとってそれは何がなんでも避けなければならない。
「新たに到着した応援はあるか?」
「警視庁がー、到着したそうですー」
「すぐに向かわせろ」
成瀬は手元の書類に目を落とす。先ほど届けられた手書きの「笹島南地区・巨大生物群駆除実行計画書」であり、警察の面子を保つための作戦である。この作戦が成功したとしても直接指揮を執らない彼にとっては何の功績にもならないが、それでも成瀬はその成功を祈っていた。
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