ButterflyEffect~1993年バブル崩壊直後のススキノに1人のキャバ嬢が旋風を巻き起こす~

瑞城(みずき)

第1話 1993年 春 ススキノ

1993年頃。


時代はバブル崩壊直後。


1991年から地価や株価の下落が始まり、

企業の倒産、証券会社の不祥事と、

飲食店業界の中では、大得意様とされていた業界のお客様方が

次々と歓楽街から、軒並み姿を消していったあの時代。


バブル時代では、

新卒採用Welcomeだった大企業達は途端に採用を渋り始め、

新卒学生にとっては、涙・・・涙の就職難時代が始まった。


これは、そんな日本がグダグダになり始めた直後のお話。



当時のススキノは、今と変わらぬ桃色歓楽街ではあったが、桃色度合いが違った。


今と変わらず、当時もまた、

風俗店や飲食店が所狭しと立ち並んではいたが、

当時のススキノは、それ以前のバブル時代の影響で、

高級クラブやラウンジバーも今より多く存在し、これらがススキノをけん引していたため、

それなりに派手な店もありはしたが、比較的落ち着いている店のほうが多く存在していた。


どちらかと言えば、

当時は女性のお店より男性パブのほうが派手で、

歌を歌いながらパフォーマンスをする子や

陰部を燃やす「ちん毛ファイヤー」などを披露する子もいたりして、

体を張って頑張るパブ男も多かった、この時代。



そんな当時のススキノにおいて、

女性キャストが働く店で一番派手だったと言えば、キャバクラ。


しかしそれは、世間でいうものとは、だいぶ勝手が違っていた。



そもそも本来の「キャバクラ」はキャバレークラブの略称で、

バブル時代多かったクラブの高級感を時間制料金で味わえるという、

リーズナブル設定のお店の事。


いわゆる、綺麗なドレスとヘアメイクという感じの女の子たちが多いイメージ。


これに対して、

当時のススキノの「キャバクラ」は

世間でいうなら「コスプレセクシーパブ」に近かった。


ちなみに、世間一般でいうところのキャバクラに該当する店は

ススキノではニュークラブの位置づけになっている。



私が在籍していた松岡実業の「カーニバル IN フォーレ」もまた

ススキノでいうところのキャバクラだが、

サッカーユニフォームをワンピースのように着るスタイルで接客する

コスプレセクシー系キャバクラだった。


村松ビル8Fのワンフロアにあり、お客様は200~300人ほどを収容し、

フロアレディーはレギュラー・アルバイトを含め、およそ150人弱という

ススキノの中でもかなり大きな箱だった。


10分1,100円で飲み放題、場内指名はなく、

入店時のご指名のみ指名としてカウントされる。


個人の売り上げは関係なく、指名数のみでポイントが増減し、

スライド制という基本日給をベースに、

毎月の指名本数によってその日給がスライドアップしていくシステムだった。


強制同伴日は月に1回。


店の開店は19時からスタートで、

閉店は平日が26時まで、金・土・休日前日は27時まで。


松岡実業グループのキャバクラは各店ごとにコンセプトがあり

それにちなんだ衣装があった。


キャスト達はそれぞれの各店ごとの衣装に、

松岡実業グループ推奨の「松岡ストッキング」なる厚手のストッキングを履いていた。


接客面でもこのグループは、他のキャバクラとは一線を画していた。


グループ全体で義務付けられていたのは「松岡基本姿勢」という

ソファーに座っているお客様の片足の上にキャストが足を乗せ、

お客様の股の間に足を置くという密着接客。


これだけ密着していれば、男としては当然ながら触りたくなるものだが、

店内ノータッチのため、お触りは出来ないお店のルール。


何とも言えない蛇の生殺しを味わうお客様にとっては

ドキドキとモヤモヤを併せ持つ接客スタイルとなっていた。


これらを考案したのが、亡き先代松岡グループ会長だというのだから

会長はなかなか前衛的な人だったと言えるだろう。


まぁただ、一応ノータッチというルールはあったが、

それがほんとに守られていたかは定かではないが…。



そしてショーといえば、当時はトップレスショーだった。


指名上位のキャスト数名が順番にトップレスでお立ち台に上り

くねくね踊りながら1回転して交代していくというもの。


これが、いわゆる「ススキノのキャバクラ」と言われるものだった。




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