コロルドの片隅で

紫ガール

第1話 入局試験

紫の帝国には中央局という組織がある。

そして私、カエデは今日、その入局試験を受けにいく。


不安だ。不安以外の何でもない。もし受かれば、あの中央局のメンバーになれる。すなわちそれは政治や技術開発、つまりこの帝国の中枢に関われることを意味する。それってすごすぎることだ。そう思うと更に心臓がうるさくなってきた。だけど、不安になったところで頭の回転が鈍くなるだけだし。。。


やっぱり、なにか勉強しておけばよかった。入局試験ではなにが出題されるかを知らされないから、対策はできないが、無駄な対策でもしておいたほうが自信はつくもん。


この帝国では、3歳から10歳の子供は初等学校に通い、義務教育を受ける。その後、自分の学びたい分野を学ぶため、専門学校を選ぶ。でも私は中央局に入局したくて総合学校に進学した。自分で言うのもなんだか嫌味だけど、総合学校に入れるのは初等学校卒業時に最高ランクの成績だった生徒だけ。総合学校の卒業生(だいたいは5年で卒業できる)は中央局に入るか、そうとう良い仕事につく。でも中央局の入局試験を受ける無謀な人は年に50人ほどしかいないから、ほとんどは生活の安定する仕事に就職しているのが現実かな。


試験の受験者が少ないのは、総合学校の中で一番賢い生徒でさえ、だいたい受からないほど難易度が高いからだ。あとは、一生に一度しか受験できず、不合格の場合は試験内容の漏洩を防ぐために一生監視がつく。しかも普通の試験とはまったく違う内容らしく、本当に頭の良い人間しか受からない。


つまり受験には相当の覚悟が必要ってわけ。

でも私はリスクを背負うだけの覚悟はしていたし、中央局で働くことが一生の夢だから落ちたとしても悔いはない。はず。


中央局のエンブレムが描かれたシンプルな正門をくぐり、試験会場につくとそこには私よりずっと年上の人たちが何人かもう集まっていた。


赤いメガネをかけた30代くらいの美人。いかにもエリートって感じのスーツを着た25くらいの男の人。どうみても60歳はこえてるおじいさん。髪を水色に染めているチャラい男の人。

そして、グレーのコートの中で一段と頼りなくみえる、17歳の私。


「よっ、君、18ぐらい?よかったー話が通じそうな人がいて。さっきあのメガネ美人に言い寄ったら殺意のこもった目で見られちゃってさあ〜〜」


うげ。一番関わりたくないタイプだ。まず髪の毛を水色にした時点でセンスを疑う。


「なんですか。。?」


「あーあ、そう冷たくすんなって。こんなんでも一応俺、王女さまの彼氏なんだぞ?この髪だってあいつがふざけて染めてきたんだし。。。ま、気に入ってるんだけどな!」


「え、カスミ様の!?」


「おま、馬鹿か。あいつには別の相手が。。。じゃなくて、年齢的に考えてヨヅキの方に決まってんだろ。カスミはまだ15歳だよ、たしか。」


ヨヅキ様はカスミ様のお姉さん。でもたしか13歳の時に最年少で中央局に入局してからめったに見かけなくなったとの噂だ。まさかこんなチャラ男と付き合っているはずはない。


「ほーらどうせ疑ってるんだろ。いや、わかるよ。ヨヅキと結婚しようと思ったんだけど、帝王様が許してくれなくてさ。俺が頭悪すぎてさすがの帝王も娘に結婚を思いとどまるように毎日話してて。仕方ないから半年間死ぬ気で勉強して、ヨヅキと同じ職場で働けば、万事解決かなって思ってさ!」


どうかんがえても胡散臭いが、このタイプの人は実はすごく頭が良かったりするから、もしかしたらもしかするのかもしれない。顔も、よく見たらイケメn。。。いやいや、ないないない。


「水色髪さん、すこし声が大きいですよ。あちらの美人さん、恐らくあなたを睨み殺そうとしています。」


「うわ、やっべえ。おっかねーな。あと、俺の名前はレンだよ。じゃあ、またあとでなっ!」


そう言い残して、水色髪はどっかへ消えていった。どっか、というのは男子トイレだったけど。

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コロルドの片隅で 紫ガール @murasaki-girl

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