コロルド〜闇の帝国と光の王国〜

紫ガール

第1話 白の王女

壊れかけた窓から差し込む太陽の光が、目の前のグラスにあたってキラキラと色付く。

太陽は時間帯によって周りの空の色をかえる。白、青、赤、ピンクや黄色。。。ありえない色の組み合わせでさえ、美しくみせる。だからこそ、昔の人々は太陽を感情の神と崇めたのだろう。

なんて、実際はその神話を昨日学校で習ったのだけど。


「はやく朝ごはんの残り食べちゃって。今日はせっかくお母さんも休みなんだし、このあと川までいかない?」


うーん、そうだね。晴れてるし。

すこし上の空で返事をすると、母さんは不満そうな顔をしながら食器の片付けをしはじめた。


「ねえ、母さん。」


「なあにー?」


「川にいくならさ、カスミも誘ってくるよ。あいつどうせ暇してるだろうし。」


「あらあら、あのかわいい女の子ね。いいじゃない。」


母さんは、にやにやしながらこっちを見てくる。

そんなんじゃないさ、カスミは友達だ。少なくとも、あっちはそう思ってる。

もし僕らが付き合ったとしてもカスミが本当に紫の帝国出身なら、周りはあまりいい顔をしないだろう。結婚なんてもってのほかだ。。

いやもちろん、僕は14になったばっかでカスミはまだぎりぎり12だから結婚なんて遠い未来の話だけど。


カスミとは数日前、川で会った。可愛くて、吸い込まれるような黒い瞳と同じ黒色の髪は、首からさげた綺麗な紫のペンダントにとてもよく映えていた。


わたしはカスミ。よければ友達になりたいな。あなたの名前は?

僕?僕はシェル。いいよ、友達になろう。

やった!ありがとう、シェル。


その翌日も、そのまた翌日も川辺に行くと、きまってカスミはそこにいた。


ずっとここにいるの?家は?

うーん、家出しちゃったから。今は向こうの公園に住んでる。

そっか。僕の家に住んでもいいんだよ?

ううん、大丈夫。きっとすぐお姉ちゃんに見つかっちゃうし。

え、じゃあもうすぐあえなくなっちゃうの?


寂しそうにそういった僕に、カスミはペンダントをくれた。そのペンダントをもってると、離れ離れになってもまた会えるらしい。


そんなことを思い出しながら、公園に向かう。

公園と言うよりは養護施設の庭、といったほうが正しいかもしれない。この国の公園は他国と違って、身寄りの無い子どもやお年寄りを一時的に世話してくれる施設になっている。どんな辛い時も、そこにいれば受け入れてくれるんだ。思いやりにあふれた国、と授業で先生がいっていた。


「カスミー、川まで行くから一緒においでよ」


「あ、シェル!うん、そろそろ行こうかなって思ってたとこ。」


「今日は僕の母さんも一緒だけど、いい?」


「そうなの?素敵なお母さんなんでしょ、楽しみだなー。」


「うん。だけど母さんには言うなよ、僕が褒めてたって」


実際、母さんはこの国で何番目かに頭が良くて、学校で教えてくれないことを教えてくれるし、紫の帝国についても詳しい。学校では帝国についてあまり教えてもらえないから、母さんの話は新鮮で聞いてて飽きないんだ。


「あら、あなたがカスミね。よろしく、シェルの母のエルっていいます。」


「エルさん、こんにちは。帝国について詳しいってシェルがいってたけど、本当なんですか?」


「ええ、昔、帝国の人ととても仲がよかったのよ。」


母さんとカスミが話で盛り上がっている間に僕は川の下流の方へすこしあるいていった。すると、僕と同い年くらいの女の子が川で泳いでいるのが見えてきた。めずらしい。ここで僕らの他に誰かをみかけたことはないのに。

もうすこし近づくと、その子が溺れかけていることに気付いた。


 溺れてる子に正面から近づくと、その子に掴まれて自分も溺れるのよ


とっさに川に飛び込んだ僕は、そう母さんが言っていたのを思い出し後ろからその子を掴んだ。充分に浅いところまでその子を連れて行くと、音を聞いたカスミと母さんが駆けつけてきた。そして母さんはその子の顔をみて、こういった。


「アリシア王女さまだわ。なぜここに、、、」


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