29. 合意
「え?!」
二人が同時に驚く。
「俺はタイムパラドックスボックスの研究をしたい。
追求もしたい。でも、その結果、四宮や三条がこの世界軸、時間軸に来てまで食い止めたかった世界の混沌は食い止められないかもしれない。
だったら、お前達も俺と一緒に作るんだ。
タイムパラドックスボックスを。
一緒に作り上げていく過程で危ないな。っと思ったら止めてくれればいいし、なんなら俺を殺してくれ。
そこまでの状況になったとしてまで、俺が作り続けたいというのであれば、本当にそれは狂気に満ちたマッドサイエンティストになっているだろうし、もし正気を保っているのであれば、その前段階やその段階で、やっぱり作るのをやめよう。という話になるはずだ」
二人は驚く。
まさかすべての平行世界を混沌に陥れるかもしれないタイムパラドックスボックスを食い止める為にきた彼女達が、その食い止める事象自体の作り出す事に関わっていく事の道を提示されてる訳なので。
しばしの間、沈黙が流れる。
四宮シノアは深く考えているようだ。
三条カノンは安心したような顔つきをしていた。
いうなれば相談をしながら進めていきましょう。という三条カノン陣営の曖昧な道筋にひとつの詳細な提示をしたようなものなので、反対のしようがあるするのであれば、今の俺の案よりもいい案がある時だけであろう。
「わかったわ。その考えに一旦賛同するわ。考えようによっては、一緒に側にいながら、如月くんがタイムパラドックスボックスのキッカケなのか開発なのかに携わっていく様を手伝う形で追っかけていけるわけだし」
「そうだ。伴侶にならなくていい訳だ。
なぜならばいつキッカケを生み出すか分からない訳でなく、むしろ一緒に作り出していく。ってことは答えを出す時期が迷惑になるわけだから、その後は一緒にいる必要が無いだろ」
「そうね。。。。。」
四宮シノアは喜ぶわけでもなく、微妙な相槌を打つ。
散々一緒にいるのは嫌だ。って言ってたじゃんかよ。
「三条さんはどうなの?」
四宮シノアは、筋を通す形で三条カノンにも確認をとる。
「私はもちろん、大賛成だよ」
えへへ。と嬉しそうな三条カノン。
もはや提案内容が自分達の考えに沿っていたからうれしいのか、三人で一緒にいれるからうれしいのか。
分からないような反応である。
「すこしでも、私の意からそぐわない場合は、眠ってもらうわよ」
殺してくれ。っとは言ったものの、殺す事自体は四宮シノアの考えには当たり前だが、ないので、その際の当初案を持ち出す。
「そうだな。死ぬのはよくないな。眠り薬で大丈夫だ。むりやり飲ませてくれ。俺の意思を尊重しながら飲ませたい。って言っていたけど、飲ます時は俺とは意見が食い違う時なので、今ここで同意しておくよ。三条もいいよな?」
「え、それはちょっと私や私達の考えかとは違うかも」
ここで三条カノンは決め打ちをさせてくれない。
おいおい。まさかここまで来て、また決裂か?たしかに三条カノンや陣営は、俺という存在がいなくなっても世界を変える運命は変わらない。という考え方だったか。
「それなら、これはどうだ。多分四宮が俺に薬を飲まさす事になる自体が起きる時って、タイムパラドックスボックスが色んな奴に使われる事が確定する。というか断定できる時だろ?」
「うん」
三条カノンはその時の状況を想像しているかのように目を上にキョロキョロさせながら考えているようで、空返事のように相槌を打つ。
「でも俺達はこれから一緒にタイムパラドックスボックスを研究し、追求し、作り上げていくんだ。
それであればその場面になった時は三条も四宮も作り出せる環境下にいるってことだ。
それであれば四宮が俺を薬で眠らせた後、三条自身がタイムパラドックスボックスの手綱を握ればいい」
「たしかに」
実際は必ずしもその場面で三条カノンや四宮シノアがタイムパラドックスボックスを作れる環境下にいるとは限らないが、大事なのはそこじゃない。
三条カノンと四宮シノアが共に納得するラインで道筋を決める事である。
「四宮と三条は、平行世界の行き来をなくし、混沌に陥れない事を目的をしている以上、お互いがタイムパラドクスボックスを生み出すプロセスがわかっていたとしても、その使い道を二人で話あって決めていけるだろ」
これも実際のところは、断定できる事では無い。そもそも元々の二人のプラン自体も”目的地は同じ”なのだ。
それでもプロセスが違うからこそ両者は対立する事もあれば共闘することもあるわけだ。現時点がそうであるように。
三条カノンがふむふむふむ。と自分の中での整理を始めている様をみて、四宮シノアをチラッと見てみると、四宮シノアには見透かされているような表情をされる。
さすがは四宮シノア。多分、このネゴシエイトの穴は分かっているいるように思える。
けれども大事なのは、意に沿わない時に俺を眠らせる事ができるという合意の事実だけである。
三条カノンが納得する形で、意に沿わなかった時に四宮シノアの意思で俺を眠らせる事がFIXする事ができればいいのである。
だから四宮シノアは黙っているのであろう。
「うん。それでいこう」
三条カノンは、自分の中での整理がついたらしい。これでFIXだ。
ふー。っと俺の中での少し緊張が解けてきたところに、四宮シノアから
「それじゃ、如月くん、薬を飲む事に対しての、魔術契約を交わさせて」
想定もしていなかったオファーを受ける事になる。
「ちょ、そこまで」
するの?っと言いそうな三条カノンの言葉を制止して、四宮シノアは、俺のほうを瞬き一つなく見てくる。
心配そうな三条カノンをよそに俺は、平然と答える事にする。
「魔術契約とは?」
魔術という言葉を普通に交わせるようになった事に俺自身も少し興奮度を隠しきれないが、なんとなく想像がつくその言葉への質問を四宮シノアにしてみる。
「魔術契約というのは、合意事項の行使魔術ね。
簡単に言うと、魔術契約を交わしておけば、どちらかが反故にしたとしても、その魔術を発動させれば強制的にその契約を執行できるの。
だから今回みたいなケースでいうとうってつけ。しかるべきその時が訪れたとして、その時に合意した時の意思がなかったとしても、私が魔術契約を発動すれば、如月くんは、その時の自分の意思とは無関係に薬を飲む事ができるわ」
そんな恐ろしいものがあるんだな。
想像していた通りのものであったが、改めて聞くとゾッとする。
嘘八百でしていたすれば危ないところである。
もちろん、本心をいれば、そんなものを交わさずに行きたいが、それを言ってしまったら今までやりとりしていたすべてが無駄になってしまう。もちろん、その場を取り繕う嘘を言うつもりもなかったが。
「そんなものがあるんだな。もちろん大丈夫だ。その魔術契約ってやつを交わそう」
俺のなんの迷いも無い返答に四宮シノアはびっくりしたようである。ふふふ。と笑い始めて。
「如月くん、すごいわね。ちょっとだけ尊敬したわ。魔術契約は今はまだいいわ。
これはこれですごく体への負担も大きいし、そこまで如月くんが躊躇なく返答しれくれたから安心できる。
タイムパラドックスボックスを生み出すはじめの一歩を踏み出す時にもう一度確認させて。
その時拒むようだったらそもそも魔術契約の前に、なんとしてでも止めればいいだけだと思うし」
そう言って四宮シノアは、もう会話は終了ね。と言わんばかりにコーヒーを嗜み始めた。
あ、そうだった。今は俺ん家で朝食とっていたんだった。
あまりに重い話をしすぎて異空間にいるような感覚に陥っていた。
「それじゃ、一旦俺らはタイムパラドックスボックスをこの世界軸、時間軸で生み出す為に共同戦線を張る。って事でよろしくな」
「ええ」
四宮シノアの同意にあわせて
「うん、よろしくね」
三条カノンは嬉しそうに同意する
また先ほどの穏やかな空気になり、さらにほっと一息ついて、あたりを見回した時にとんでもない事に気がつく。
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