22. 安心と休息
三条カノンが泣き止んで、落ち着いてきたタイミングで、頭の上に乗せている手をベッドの自分の元に戻す。
ちょっとだけ腕がプルプルする。慣れないことはするもんじゃないな。
「三条、四宮はどこにいるんだ?」
「四宮は、私の家にいるよ。本当は同じ場所で診ておきたかったけど、さすがに一つベッドで二人を寝かすのはまずいでしょ」
おっしゃる通りです。その状況で俺、目覚めていたら、それこそ心臓に悪い。
四宮が先に起きた日には、そこで俺の人生は幕を閉じていたかもしれない。
「そうか。三条自身はちゃんとこの数日間。3日間だっけ?しっかり休んだのか?」
「私ん家、そんなに広くないから、ちゃんと横にはなってないけど、ちょこちょこは寝てたよ」
あ、これはあかんパターンだな。
「三条、とりあえずはしっかり寝ろ。俺の面倒は一旦はいいし、四宮が心配なら、俺が見とくから」
「仮住まいの場所とはいえ、如月に私の家を見られるのは嫌」
おいおいそこかよ。。。そんなこと言っている場合じゃ無いだろ。と言いたい所ではあるが、話がおかしな方向にいくとまずいので、言われた通りにする。
「わかった。とりあえずは、うち、泊まってけ。四宮になんか異変があった時はわかるようになってるのか?」
予断を許さない状態を2人抱えている状態で行ったり来たりしているので、何かはあるのだろうと期待する。
「うん。わかるようになっている」
何がどうして、どうなってわかるようになっているかを知りたい所ではあるが、そこは今確認すべきでもないし、そもそも深堀りするな。と言われていたばかりなので、
「だったら、とりあえず、寝ろ。俺は下のソファで寝るから。風呂とかはさすがにうちの入ったりするのは嫌だろうから、風呂入って着替えもってきて、その状態でこちらに来て俺の部屋のベッドで寝ればいい」
「また襲ってこない?」
三条は、可愛らしく、疑いの眼差しで上目遣いを使って、聞いてくる。
「バ、だから前も言ったろ。いきなり不審者が居たから、その行動を取っただけで、襲うわけ無いだろ。
人が寝てる所を常時襲っているような奴だったら、世界の構造を変える前に、俺の日常生活が檻の中に変わってるわ」
なんて疑いだ!!って叫んでやりたいところだが、した方とされた方の意識の違いなのかもしれない。っというかあんなにすごいバトルを繰り広げていたんだから、俺なんかフルボッコだろ。
っと思ったが、思い返せば、なぜあの時、俺をフルボッコしなかったのか。
もしかしたら色々呟いているのが呪文かなんかで、それをしないとあの戦闘ができる状態を作れないのか。と自分なりに推測してみた。その真意を確認するのも今ではないが。
「うん、たしかにそうだね。じゃ、お言葉に甘えて休ませてもらう。お風呂は全然使わせて。移動も疲れるし、気にならないから」
そこはいいんだな。女心はわからん。
「あ、でも家族に見られると気まずいのだが」
三条カノンが初めて侵入してきた時のことを思い出す。
そもそもは、家族バレの危険があるからの対応だったのだ。
「大丈夫よ、結界張ってあるから」
だったら、初めて侵入した時もなぜ張ってくれなかったのでしょう?っと突っ込みたくなるが、言わない。
あの話題は、俺自身の地雷であるから。
「あ、そうか。四宮が起きるまでは張り続ける感じか?」
時間をコントロールしているようなことを言っていたので、自分なりに解釈する。
「そうね。じゃないと四宮がいない期間ができちゃうので、色々問題になっちゃうでしょ」
「そうだな。じゃ、とりあえず、お互い四宮が起きるまで、ゆっくり静養しようか」
兎にも角にも、三条カノンの精神状態を元に戻したい。
病は気からなので、ゆっくり寝れば、大丈夫だろうと楽観的かもしれないが、思っておく。
「そうだね。じゃ、お風呂借りるね」
そう言って、部屋を出て行こうとする三条カノンは、扉を閉め際。
「如月。。。」
「どうした?」
扉の隙をを少しだけ開けた状態で、半分だけ顔を覗かせて、言う。
「色々と、ありがとね」
そう言って、部屋の扉は閉まった。
おいおい。だから、なんでいちいち可愛いんだよ。惚れてまうやろ。
もちろん、本当に惚れはしないが。俺は、分かっている。三条カノンは普通の行動をしているだけだ。
俺に何か特別な感情があるわけではない。
そうやって勘違い男子は、なんでもない女子のちょっとだけ可愛い仕草の普通の行動に、あれ、こいつ絶対俺が好きだろ。っと勘違いする。
そこからはすべて自分の都合のいいように物事を捉え、そして最後は撃沈するという、とんでもない爆裂魔法を受けることになるのを。
俺は、騙されんぜ。
そう、自分の中でだけ、この物事を消化した後に、一度色々整理をしなければと思った。三条カノンが休んだのを確認したら、整理して行こう。
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