第八十一話 悪い相性
「オ......オノレエエエ!!」
リフレクトが無機質な叫びを上げると、サラの膝蹴りによって入れられたひびは数秒で修復された。
サラのおかげで血液が見え、リフレクトがロボットではないことが証明されたが、それでも尚、そのエネミーがロボットに見えて仕方ないアマツ。
「うるさっ......!」
エネミーのノイズが耳を障る。
しかし、サラはそれについては不快に思う様子はない。
むしろ、リフレクトが回復もちということに対して拒絶反応を起こしているように見える。
「......回復したか」
「我ハ簡単ニハ死ナヌッ!!」
リフレクトは激昂した様子でサラに向かってビームを乱射する。
「おっ」
半ば自棄に撃っているのだから、当然命中率は低い。
サラはそれを尽く避けると、また背後に回ろうとする。
「ヌッ!」
リフレクトはそれを察知し、サラに合わせて身体を回転させ、死角を取られないようにする。
しかしサラは、その時の対策もしっかりと取っていた。
彼女はバリアの端を持つと、リフレクトの回転に身を委ねた。
そして振り向き終わると、リフレクトの前には、呆然と見ているアマツ達しかいなかった。
「イナ――!!?」
彼が驚きの言葉を出しかけたのと同時に、勢いに乗ったサラの手とうが胴を貫く。
土器が破壊されたような音と、リフレクトのロボット声がアマツの耳にも届く。
相変わらず無表情なのだが、アマツには心なしか、顔が歪んでいるように見える。
「居るよ」
サラはそういうと、指を揃えていた手を曲げ、猫の手のような形にする。
そしてその手を引くようにして、リフレクトの体から抜くと、その手と同じ方向に破片や血が飛び散る。
皿をハンマーで思いっきり叩いたときの心地よい音が聞こえる。
「ギギギ......!!」
しかし、リフレクトは死なない。
飛び散っていた破片や血が空中で一瞬、その破片や血だけが、時が止まったかのように静止する。
そして今度は、時間が巻き戻っていくようにリフレクトの穴が開いた部分へ吸い寄せられていく。
そしてやがて、何事もなかったかのように、傷一つなく接合されていった。
「なんだよ、その能力......」
アマツは彼の能力に絶句する。
よりにもよってあんなに回復能力が高い相手とサラは相手をすることになってしまった。
相性が悪すぎる。
「インチキな能力だね、それ」
それにサラの顔は徐々に険しいものになっていく。
「サラさん......」
アマツはその様子を見て確信する。
サラもリフレクトも、必死の攻防を繰り広げているように見えるが、リフレクトが体をほぼ粉々にしない限り無限に修復されるうえに、サラのタイムリミットが迫っている。
サラが不利なのは、だれが見ても明らかである。
「アリアス......」
「ええ、わかっているわ......」
アリアスも思っていることは一緒のようだ。
「......サラさんを助けないとっ!」
そう決意してアマツは立ち上がる。
背中の傷が痛むが、彼の意志がそれを上回った。
「2人同時にいけば、絶対にどちらかに死角を出す筈よ、そこを見逃さないで!」
「ああ、分かってる!」
二人はその戦いの中に入るべく、リフレクトとサラのもとへ駆けていく。
サラの顔が見えるまで近づいてきたころ、彼女の顔に汗が纏わりついてきているのが分かった。
恐らくタイムリミットが迫っていることに焦っているのか。
(怖いのか......)
時間が来ることを恐れていないと、さっきは思っていたが、やはり怯えているのだろう。
すると、彼女の隙を突いてリフレクトが彼女にビームを放ってきた。
「サラさんっ!!」
アマツはそれを阻止しようと、ダッシュをしながら右腕から火炎放射を吹き出した。
炎はビームを覆うと、その炎を吹き飛ばすような爆発を起こしたが、幸い、サラにはダメージがないようだ。
「君達......」
「サラさん、ここは俺たちがやります!!」
そしてアマツがサラの前に立った時だった。
「チッ」
アマツの心を刺すような音が背後で聞こえてきた。
自分自身の耳を疑った。
(は......?)
気のせい、とも一瞬思えたが、たしかに聞こえた。
どこから出てきた音なのかは、知りたくもなかった。
例えあれでも......彼女の身を守るためだ。
「リフレクトッ!!」
彼はそう叫ぶと、炎の鉄拳をリフレクトに喰らわした。
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