彼女が殺された原因

初夢なすび

1日目 朝 突然のタイムリープ

「ほらっ起きなさい!」


 早朝、俺は目が覚める前に母親に無理やり起こされた。


「なんだよ。夏休みなんだから早く起きなくても……」


「何言っているの! まだ六月よ!」


「嘘だろ!?」


 思わず俺はカレンダーを見た。


 なんと八月ではなく六月になっていた。


「嘘じゃないわよ! アンタの夢の中では夏休みだったのでしょうけど」


「そんな……」


 俺は母の言葉に反応した訳ではない。カレンダーの西暦を見て驚いた。


 なんと二年も前に遡っていたのだ!


「し、信じられん……」


「寝ぼけてないで早く起きなさい!」


 これ以上母を怒らせるのは厄介なので納得がいかないままだが起きる事にした。


 パジャマのままリビングに行き、椅子に座った。


「……いただきます」


 用意されていた朝食を食べながらテレビに映っている朝のニュースを見た。


 ……間違いない。二年前に戻っている。


 とっくに忘れていた過去のニュースが最新として流れているので間違いない。


 過去に戻ったのは納得した。だがどうして……。


 ……まさか。


 二年前の六月。その頃は一生忘れがたい出来事があった時期だ。


「母さん。今日って何日?」


「今日? 今日は六月七日よ」


 七日か。って事は……。


 あの女が死ぬ一週間前か。


夜想やそ。先週やったテスト、今日帰ってくるんでしょ」


「え?」


「楽しみだわ。貴方は国語はいいけど他の科目が微妙な成績なのよね」


「いいだろ。俺の第一志望は文学部だし」


「赤点だけは取らないようにね」


 普段だったらこんな会話は違和感無く落ち着いて話している。


 しかし今の俺の心は落ち着いていない。


「ごちそうさま」


 食べ終わった食器を片付け、学校へ行く為の身支度をし始めた。


 歯を磨き、顔を洗って髪をとかし終わると自室に戻ってまだあまり使い古されていない制服を着始めた。


 ……まさか、過去に戻った理由って……。


 食事をしている時から考えてようやく納得するような答えが見つかった。


「アイツを……助けろって事なのか?」

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