第12話 満月の光

昼と夜の逆転生活。

身体はしんどいが自分が世の中に少しでも

貢献出来ているという実感があった。

この手ごたえを大切にしようと思った。


思えば長い孤独な生活であった。

育ててくれた母と祖母にお返しも

出来ぬままに歳月だけが流れ去り

遂に行き詰ったという思いだけがあった。


 英のお陰で働くことが出来るようになった。

ありがたい事だ。


 中秋の名月は、職場の面々が持ち寄りで

懇親会を開いてくれた。

自分の心も開いて行く・・。


 雲ひとつない夜空を見上げ

何やら随分懐かしげな満月を眺めて

今までの頑なな心が和らいで行くのが

実感出来た。


うまい、うまい酒であった。


 まもなく元号が変わる。

自分も生まれ変われる!


別の世界に旅立つその日まで

精一杯生きようと心に決めた。


 お月さんが笑ってくれているように見えて来た。

気持ちの良い涙が頬を伝う。


・・ああ、自分は、元の元気さを取り戻せた・・・

ありがとうございます!


その正直な思いが、夜空に静かに静かに舞い上がって行った。


 その思いは、遥かな故郷の灯台に見事にたどり着いた。


岬の灯台は、その思いを、まっすぐな光に変えて、沖行く船に送り届ける。


生きて行く希望の光が今、世界に!!


                    (終わり)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る