警察庁では狂った疑心暗鬼が始まっていた。というのも既に有力説と化してしまった《全知能者》による犯行だと思われたからだ。

「仮にこれが全て《1人の人間によって行われて》、それも《社会動態全てを操作し》計算尽くした戦略だと????」

 だが、このアイデアは既に警察庁の捜査担当班の過半数を占めていた。国会でも毎日、この案件について騒乱を引き起こしていた。


「総理、あなたの起こした罪は多大なものです。タックスヘイブンで諸外国の取引行い、更には《沖縄の独立》に関与し、《CIA》と例の《宗教連合機構》と〝教科書教書〟の操作を図った。金融庁には更に、《自身の税金の未納》を一切、触れさせないようにした。



―――今回の《〇〇人》を名乗る告発事件――――


は全ての闇を暴こうとしている。かの人種が、確かに国家に対し、混乱をもたらしたのは事実ですが、だからといってあなたの罪が裁かれないわけではない、今回あなたの罪状の全てが!ここに暴かれた。背景組織とあなたの関係は一体」(略)


 と、まあ。このような、本来、保守政党として、長年培った歴史が今、まさにこの日本という国家ともに滅ぼされようとしていた。外の世界ではアメリカ帝国という2017年1月に成立した超国家主義的な性格を孕んだ国家が誕生し、その矛先は


《強力な海軍力を保持し――太平洋の支配を脅かしかねない――日本》に対し向けられていた。

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