アンチェイン~繋ぎ止めておけない者

広瀬智則

序章~始まる時

目的の為に、私は目覚めた。いや、創られたと言った方がいいかもしれない。当ての無い旅。当ての無い道のり…。私は目的の為、探すように定められた存在。例えそれが途方もない旅になったとしても、目的を果たすまでは、私が存在する理由がないから。

「ひと息ついたら始めなきゃ…」

コップの水を飲み、服を着替え、私は大空へと舞い上がった。日は沈み星達が輝いている。街は灯りが灯り、イルミネーションが街を彩っている。今日は12月24日、クリスマス・イブ。商店街は家族連れや恋人たちで賑わいを魅せている。

「私も人間に生まれたかったなぁってそんなこと言ってる暇はないか…」

私は、大いなる目的の為に今日旅立つ。その目的とは、この世界を、この宿命を、この物語をまだ、続けて行くために…。誰も知ることの無い、何千年も託けられてきたこと。この物語で続けることも終わりにすることも、また、始めることも新しくすることにもなる。

「早く会わなくちゃ、運命のヒトに。どんなヒトなんだろぅ…」

そう、すべてはその、運命のヒトに握られている。何千年周期で行われてきている、運命の転換期…。誰も知る事の無い物語。そう…誰も…。


「ピピピッピピピッ」

目覚まし時計の音が鳴っている。時間は六時を指している。

「もう朝か」

目覚まし時計を消して起き上がる青年。服を着替え朝御飯を食べて歯磨きして、今日も一日が始まる。彼の名前は奏太、25歳社会人。いたって普通な今時の男性だ。ちなみに、現在彼女募集中。

奏太「仕事いきたくねぇ」

ぼやきながら家を出ていく。彼の一日は、この一言から始まるのだ。高校を卒業してすぐに実家を離れ、今働いている建設関係の会社に勤務して6年になる。明後日から正月休みだ。

奏太「おはようございます」

社員「おはよう」

奏太「明後日からお休みですね」

社員「そうだな、一年は早いな」

奏太「そうですね」

社員「お前は休みは何をするんだ?」

奏太「そうですね、考えてないです」

社員「実家には帰らないのか?」

奏太「そうですね、年末ですし」

(実家かぁ、たまには帰らないとな)

奏太は軽く会話を交わし、自分のデスクにつく。

奏太「さてと、始めるか。」

彼は仕事を始める。いつもと変わらない仕事を、いつも通りこなして行く。

(そういえば、今日はクリスマスだよな、クリスマスなのに今日も仕事か。)っと奏太は思った。

毎日会社に行き終われば帰宅、毎日休み以外は仕事ばかり。休みの日もこれと言って何かをするわけでもない、日々変わらぬ毎日を送る。(ホントにこれでいいのか?オレ…。)

奏太「はぁ…」

同僚「なにでかいタメ息ついてんだよ」

奏太「いや、別に何でもないよ」

同僚「何つれないこと言ってんだよ、相談に乗るぞ?」

奏太「オレ、これでいいのかなって思っただけだよ」

同僚「なんだ、そんなことか。誰だってそんなもんだよ」

奏太「はぁ…全然ソウダンニナッテナイ」

同僚「タメ息のうえ片言かよ…」

奏太「何かでかい事したいよなぁ」

同僚「でかい事ってどんな?」

奏太「そりゃ~…わからないけど」

同僚「だろ?今のままでいいんだよ」

奏太「そりゃそうだよなぁ…」

「クリスマス…聖なる夜。今夜、始まるんだよ。運命が動き出す物語りが。」

奏太「彼女でもそこら辺に落ちないかな」

同僚「落ちてないから…」

そう、今日彼に始まるのだ、運命の物語が…。


奏太「ふう、今日も終わった」

奏太は仕事を終え、帰宅する。

奏太「クリスマスなのに今日も同じ一日か。」

今日も街は恋人達が多い。

「今晩はお兄さん、見つけるのに苦労したよ」

奏太はそう話しかけられ、ふと目を向ける。そこには、不思議な格好をした、小学生くらいの一人の少女がたっていた。

奏太「え?」

少女「ふふっ」

少女が微笑むと、辺りは一変して光に包まれる。しばらくすると、光はおさまり、辺りはいつも通りの町並みが表れる。しかし、人々は時間が止まったかのように動かない。少女「はじめまして、私はyucca、今日からお世話になります」

奏太「はあ?!」

yucca「驚くのも無理無いよ。貴方がこれからのすべてを決まるんだよ。逃げないで。」

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