第11話 調整

自宅療養生活も落ち着いて来た。


相変わらずぼくは四足歩行だが、トイレや車椅子、ベッドの乗り移りなど少しづつ自分で出来るようになって来た。


そんな生活の中、訪問者が来た。


会社の上司、鈴原部長だ。


『大変だったな、佐藤』


久々の重低音ボイスが懐かさを呼ぶ。


色々とご迷惑をおかけしました。


今までの経緯を話し、今回の要件を聞き出す。


『佐藤、会社までの通勤が現状は厳しいだろ。だから、在宅勤務で仕事の調整をしている。

おまえの意見はどうだ?』


ありがたい話だった。

どうやら、仕事は失わずに済みそうだ。


良かったね、たける。


心配そうだったマナの表情が和らぐ。


『佐藤、いろいろ大変だったことは分かっている。失ったものは計り知れないだろう。だからこそ、今あるものを大切にしろよ』


まなと目が合う。


部長はコーヒーをさっと飲み干し、帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る