第4話 20170504

彼女は、手術の前も、後も泣いていた。

手術前は、体調の悪さと、不安で。

手術後は、痛みと、思うようにならない身体で。


私の説明が足りてなかったようだ。

彼女の嫌な記憶にアクセスしてしまった。

看護師の不馴れな対応で、不安と哀しみがピークに達したようだった。

泣きながら電話してきたんですよ、と彼女の母が憤っていた。


それに対応していた看護師のキレイゴトばかり言う口に閉口しながら、ただ、淡々と説明した。

キレイゴト看護師(確かに肌はきれいだ)が彼女たちの前で治療方針に口を挟んでくる。

申し送りにかこつけて、キレイゴト看護師を部屋から追い出した。

もう一度、説明する。

今度は、膝を折って。


会話の時間より、会う回数を増やしただけだ。

不安が強いのは、先が見えないからだ。

薬がかわるとき、食事が出るとき、処置するとき、すべてすべて、先に言う。

変わった後、どうか、確認する。


彼女は、笑顔で退院していった。

心の支えになってくれてありがとう、と言って。




初めて、下に研修医がついた。

お前は力不足だから、と私の下にはつかないはずだった。


よろしくおねがいします。

患者さんの点滴、組ませてください。


そう書かれたlineを見て、はるか昔の…と言っても、3年ほどしかたってないが…自分を思い出した。

私に点滴の組み方を教えたのは、外科の指導医だった。

先生みたいになりたくて、女のくせに外科の世界に入った。

そのときの自分に恥じないかと言われれば、精一杯やっているが恥ずかしい。

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ひとりごと @y_meshida

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