ケイside

第31話 まだ見ぬその先に

 波夫さんを一瞬でほうむった香織が命じると、京子さんが彼をゴミ箱に捨ててきた。


 どうやら真乃実さん、香織、僕以外はみんな、香織たちの術にはまってコントロールされているようだ。


「ほんと、おにいちゃんに逃げられたときは、びっくりしたよ~」


 香織が言った。


「学校で見つかってよかったわー」


 真乃実さんが胸をなでおろしている。


「だけどマノミン、私が昔作ったシナリオ、覚えていてくれたんだ~」

「もちろん。この数千年間、あたし結構頑張ったんだよ!」


「そうよね。途中、私いなかったもんね~」

「今回も最後の方までなかなか目を覚まさなかったじゃない。お寝坊さん!」


「でもすごいね~ あっという間に世界中を魅了して支配下に置くなんて~」

「それも大変だったのよ」


「こんなシステムの構築ってマノミンしかできないよ~」

「ほんと、一人デスマーチだったわ」


「短期間での通信網の構築はまのみんの十八番だもんね~」

「いやいや、今回みたいなのはさすがに二度とやりたくないわ」


「それはそうと、私たちのこの体、まだまだ持ちそうだし、異次元の門も封鎖しちゃったから、やりたい放題なんだけど、これからどうする~?」

「いかがいたしましょうか? カオリン様」


「そうね、とりあえず、マノミンの奴隷で遊んでもいいかな?」

「いいよん♡」


 香織がわたしの方を向いた。


「ケイさん、京子さんの洞窟に潜ってよ~」


『えっ!』


 僕はびっくりした。

 桐子の前で他の女性の洞窟に潜るなど、屈辱的過ぎて、できるわけがない!


「もしやらなかったら、おねえちゃん、殺しちゃうよ~」


 香織の目が光った。これは本気だ。


『わかりました……やらせていただきます』


 そうは言ったものの、僕の体はなかなか動かなかった。


 しかし、操られている京子さんは、すでに僕にお尻を向けている。



 大勢の見る中、僕は一人、丘を登った。


「ケイさん、頑張って!」


 桐子さんの声がかかる。僕は涙が出た。



 京子さんの洞窟が開く。


(……桐子さんのためだ)


 僕は、観念して洞窟に入った。






 暗がりの中、僕は洞窟を進む。


 外に生きて出るつもりは、もう、なかった。


 ほのかに光りを放つ箇所を抜け、さらに奥に進む。



 突如発生した濁流に押し流されそうになったが、必死に耐えた。


 ここで負けて生き恥をさらすことだけは、できなかった。



 京子さんの体がのたうち回り、僕の体もあらゆる角度に振られる。


 しかし、僕は進み続けた。


 その先に何があるのか、なんとなくわかってもいた。



 そして、今の僕には何の力もないことも。






『フッ……フフッ……フフフッ』


 酸の海の中、体を焼かれながら、僕は笑い続けた。





 京子さんの体の外では、絶叫の宴が延々と続いていた。



【ケイside the end】

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