第11話 古代の秘術
しまった! 俺の特命が桐子さんにバレてしまうとは……
「ひょっとして……カケルさんって……変態?」
ん? 桐子さんは何か勘違いしているようだ。
彼女は俺と俺の横にそびえ立つ塔に交互に目をやり、そしてじっと俺を見据えた。
熱い視線にタジタジになる。
その時だった。
―― T'%"$$(%$"!!*?\##) ――
むっ! 俺の異能力が「この塔から何かが噴出する危険」を感知。
ここにいては危ない! 彼女を連れて逃げなければ!
『桐子さん、話はあとだ、早くこの部屋を脱出しよう!』
そう言って俺は時間稼ぎのための冷却水を塔周辺にまき散らすと、桐子さんを連れ出した。
『危ないところだった……』
俺たちは間一髪逃げ出すことに成功した。そしてお風呂場に避難することに成功した俺は肩で息をしていた。
「カケルさん……」
桐子さんは、お風呂にお湯を注ぎ始めながら、俺を呼んだ。
「今日のことは見なかったことにしてあげる」
桐子さんは俺の気持ちを見透かしていたようだ。
「その代わり、今夜は、私と……」
『え?』
桐子さんは、妖艶なスタイルのまま、俺を塩水の湯船の中に招いた。
『し、しかし、俺には香織ちゃんが……』
「今晩のことは、二人だけの秘密よ」
そう言って桐子さんはゴムでできた何かを取り出し、俺に手渡す。
『桐子さん、これは……いったい?』
「これは私とあなたを守ってくれるもの。あなたならきっと、使いこなせる」
桐子さんはそのゴムを広げると、俺に全身タイツのように
「あとは、自らの本能に従うだけ……」
そのまま桐子さんは俺を湯船の中の海底トンネルに案内した。
そうか、そういうことか……
実は俺も、先ほどの塔で身につけた古代秘術を確かめたいと思っていたところだ。七海雄としての闘争本能が心を掻き立てている。
俺は、はやる気持ちを落ち着かせ、術式を詠唱した。
『スペルマティックピドルエレクチオーン!』
自らの肉体に力がみなぎり、徐々に硬化していく。
そしてそのまま、洞窟内部のひだを感じながら、俺は前へと進んだ。
全身タイツのせいで動きにくくはあったが、無心のまま、本能のまま、俺は体を回転させ、突進する。
何度か押し返される中で前後左右の壁と格闘しながらも、俺は戦い続けた。
何度かアタックを繰り返していると、敵の振動が小刻みになって来た。そろそろトドメだ!
『イグニッション・エクレティオン・ガルム・ヘイド!!』
俺の全身全霊が咆哮した。
ジュバッ!
暗がりの中、目では確認できなかったが、敵は大量の体液を流し、倒れたようだ
戦いは終わった。
と思ったその時
―― *TS'$"!!(%$"!!*?%\##) ――
むっ! 最後のあがきとばかりに壁が俺をここに閉じ込めようとしているのか!
急いで脱出だ!
いや、閉じ込められた? 間に合わないっ!
その時、桐子さんの言葉が俺の頭によみがえる。
――これは私とあなたを守ってくれるもの。あなたならきっと、使いこなせる
そうか! そういうことだったのか!
俺は全身タイツに霊力を注ぎ、ありったけの力で逆噴射の術式を展開した。
『ファイナルイジャキュレーションエクスタシーッ!』
「ギャアアアアアァーッ!!」
敵の最後の叫びを背に俺はすんでのところで洞窟から脱け出すと、桐子さんの肩に舞い戻った。
桐子さんは満足したような笑みを浮かべ、熟睡していた。
(このままだと風邪をひきますよ)
俺は彼女の体を優しく
(ふう、これでゆっくり休める)
そうため息をつきながらも、香織ちゃんの部屋に戻って来た俺は、今日の成果に満足を覚える一方で、何がしかの後ろめたさを感じてならなかった。
こうして七海雄の一人、伊豆田カケルは第三形態に進化したハードな一日を終え、束の間の休息についた。新たなミッションに備えて。
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