お寿司・シャリ抜きで
腹筋崩壊参謀
【短編】お寿司・シャリ抜きで
『あたし、お寿司のご飯の部分をいつも除けて食べるんですよ~♪』
その日、私が偶然見つけたのは、ずっと昔にテレビのインタビューに出演した時の様子を録画したデータだった。確か、あの時回転寿司屋から友達と一緒に出た所、アナウンサーの人がインタビューを申し出て快く受け答えした記憶がある。そして、内容はずばり寿司のご飯の部分を貴方は食べるか食べないか、と言うものだった事も。
大学時代、私や友達はどこからか聞いた、炭水化物を省くためのダイエットに励んでいた。脂肪や糖分よりも厄介だと言うこの物質を食べないため、私たちはあの白く輝くご飯を食べずに過ごしていたのだ。そしてそれは、たまには魚介類を食べたいと訪れた回転寿司屋でも同じだった。
『ね~、だってご飯って太るんでしょ~?』
『あたしたちダイエットに励んでるんで~♪』
画面の向こうで明るく振る舞う私や友達の光景が多くの人の癪に障ったらしく、あの後私は悪い意味でネットの有名人になってしまった。せっかく作ったSNSのアカウントも、あの映像のせいで非公開にせざるを得なくなった記憶がある。だけど、その時の私たちはその行為に対して何も反省を抱かなかった。好きなように食べて何が悪い、と言う軽い気分だったのかもしれない。
「はぁ……」
だけど今、あの時の映像を見ていると、その時の私はなんて馬鹿な事を考えていたのだろうか、と言う気分になってくる。勿論、お百姓さんに申し訳ないと言うものもあるが、それ以上に私はなんて勿体ない事をしてしまったのだろう、と言う後悔の念が大きいのが本音だ。
だってそうだろう、私はここ十数年、『お寿司』を食べた事がないからだ。
私だけじゃない、他の人だってそうだ。
人間たちが皆好きなように魚介類を食い尽した結果、海の生態系が滅茶苦茶になり、お寿司は一般市民が滅多に食べる事が出来ない超高級品になってしまったのだから……。
お寿司・シャリ抜きで 腹筋崩壊参謀 @CheeseCurriedRice
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます