メリーランド

大橋天

プロローグ

東棟3階、音楽準備室前の廊下。

放課後の薄暗い雰囲気が漂う中、青い髪色の少年は全速力で駆けていった。

窓から見えるグラウンドには、サッカー部とテニス部がすでに部活動を開始している。

(やっべー、部長に怒られる!)

彼が向かう先は体育館。

東棟から離れているため歩いていけばゆうに3分はかかるだろう。

運動部特有の大きなエナメルバッグを斜め掛けにし、急いで階段を降りていく。

東棟から本館にいく渡り廊下を通り過ぎ、本館を駆け抜ける。

途中、ちらほらと帰りの生徒がいたが当たってしまっているのも気にしない。

この学校内で彼、谷口俊也はとても無愛想で協調性がなく、怖いと有名だった。

悪いところだけではなく、バスケ部のエースであり、時期部長と噂されるほどの腕前を持っている。

文句を言われようが、睨まれようが、部活最優先の谷口は無表情かつ全速力で本館の一番下。つまり1階に降りる階段まで来ていた。

(また階段かよ!)

階段を降りることが面倒くさくなり、飛び降りた。

その瞬間、桃色の髪の女の子が現れるなどと思うはずがなかったから。

「は?、ちょ、あぶねえ!!!」

その声に驚いた彼女は階段を見上げた。


どんがらがっしゃーん


上から降ってきた男の子は制服の中にパーカーを着ていて、青い澄んだ瞳をしていた。

「ごめん、大丈夫?」

すでに起き上がっていた谷口は、長い髪を右耳の横でくくった少女、安曇由枝に手を差し出した。

ありがとう

そう一言呟いて差し出された手を握った。

起き上がると顔にかかった髪の毛を耳の後ろに持っていきニコリと笑った。

落ちていた鞄を拾い上げ、谷口が落ちてきた階段を登っていく。

谷口も体育館へと急いだ。

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