フタリでひとつ
理佐子
ふたりの距離
ピーピピピ…
朝、俺は鳥のさえずりで目が覚めた。
「とっくんおはよ!」
家を出ると、俺の幼なじみで青ねぎのあおが出迎えてくれた。
ちなみに、俺はねぎとろ。
名前の通り、俺にはねぎであるあおが必須だと、そう思っていた。
夜、俺はふとネットで自分の名前を検索したくなった。
そして衝撃の事実を知ってしまった。
「ねぎとろは中落ちをそぎ取ることを『ねぎ取る』と言うことが語源...?」
俺は呆然とした。
「ねぎとろのねぎは青ねぎのねぎじゃなかったのか?」
動揺した気持ちを抱えたまま、俺は酢飯の上に横になった。
気がつくと朝を迎えていた。
「とっくんおはよ!」
あおがいつものように出迎えてくれる。
「おはよ...」
「ん?どうかした?」
俺はあおに昨日知った事実を言うべきか悩んでいた。
だが、あおには悩んでいる事がバレているらしい。
隠してもムダか。
「あのさ、あお。俺はねぎとろで、お前は青ねぎだよな?」
「うん」
「実はな、ねぎとろのねぎは、青ねぎのねぎじゃなかったんだ」
あおは黙って俺を見つめる。
やっぱり動揺するよな。
「とっくん、私知ってたんだ」
え?
「うそだろ?なんで教えてくれなかったんだよ!」
あおはまた黙って俺を見つめた。
少し、切ない瞳で。
「教えたらもうそばにいられないと思ったから。私、とっくんと一緒にいたいの!」
「え?それって...」
「もう気づいてよ!私の気持ち!」
背を向けて走りだそうとしたあおの手を掴み、強く抱きしめる。
「ごめん、そんなこと言わせて。俺はあおのことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思ってる」
「え...?」
「ねぎとろの語源なんてもうどうでもいい!あお、俺と...」
その時、あおが飛びついてきた。
「嬉しい!もう離してあげないからね!」
あおが笑っているのが、見えなくてもわかった。
「俺だって」
チュッ
突然キスをされて真っ赤になるあお。
約束するよ。ずっとあおと一緒にいるって。
俺たちは、『ふたりでひとつ』なんだからな。
フタリでひとつ 理佐子 @risakopm
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