タイムアウト2『監獄は揺蕩う』編
夏葉夜
序章
監獄の噂
「脱獄不可能の監獄と聞いて、あんたは何を想像する?」
真っ黒のスーツ姿の女性は、蠱惑的な声で最初にそう言った。
「看守が優秀な監獄? それとも技術の粋を注ぎ込んだ監獄? はたまた絶海の孤島にある監獄か……なんにせよ脱獄不可能と聞いて、ピンと来る人はこうも考えたはずや――フィクションでの監獄は、破られる為にある――そりゃそうや、そのカタルシスがたまらへん。暗闇の中から、光のある外へと飛び出した時の開放感。その一瞬が輝かしい……だけどな、これからあんたが挑戦するのは、それとは少し趣旨の違った現実や。うんうん、そうやね……そろそろ本題に入ろうか」
女性は、真撃な瞳で次にこう言った。
「存在不確かな監獄への潜入と脱獄。今回の目的はその監獄の正体を掴むことや。この意味わかる? ……そう、ウチらには肝心の監獄の場所がわからへん。だから名前を知る由もないし、運営してる組織も不明。実態すら曖昧な監獄の正体を暴いて欲しい。そうやな……こう言えば刑事の君には慣れた響きになるやろ」
女性は、童女のように微笑んで最後にこう言った。
「監獄の捜査――要は犯人の素性を調べるのと一緒。監獄は何者で、どこに居て、何が目的なのか……要するに潜入捜査やな。なぁに、潜入の方法事態はウチらで考えてある。あんたは入った後に情報を持って脱獄してくるだけや。おっ、二つ返事とは頼もしい……そう、いつものお仕事や。健闘を祈ってるで、特別時間管理局の刑事さん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます