体はお寿司でできている

彼曰く、体はお寿司でできている

　ええ、ええ、ちょっと聞いてくださいよ。

　私、嘘つかれたんです。騙されましたよ。

　彼はSNSで知り合った友人なんですけどね、直接会うことになったんです。

　人柄に問題はなかった、はずです。会うときに性別を偽ったり年齢を偽ったり、そういうことをされたりはしませんでした。

　彼、お寿司が好きで。私も大好きで、それで仲良くなったんですけども、昼食を摂るときもじゃあお寿司屋さんに行こうって。

　それでまあ雑談なんですけど。

　なんでお寿司好きになったのか、って。……私は答えられませんでした。たぶん、子どものころに親に連れられて食べにいったお寿司がおいしかったからかなー、って思うんですけど、親、そんなに好きじゃありませんでしたからね。ああ、親死んでるんですけども。

　それで答えられなかった私に、彼は……ええ、ええ、この耳ではっきり聞いたんです。

　彼はこう言っていました。『好きとか嫌いじゃなくて、体が寿司でできている、みたいな。日本人なら、誰でもじゃないかな』

　とね。

　私もいっぱしの寿司好き。そうと聞けば試してみないといけません。

　なので、彼を解体してみたんです。

　私の体、寿司ではできてませんから。彼は違うんじゃないかって思って。

　寿司でできてる、なんて不思議体質ならそうだなぁ、血液は緑茶で、目玉の白い部分はシャリで、内臓は……なんだろう。まあ内脂肪はトロで、肉の部分は赤身かなって。

　私、トロより赤身が好きなんですね。だからちょっとわくわくしながらかぶりついたんですけど……いや、これがマズくて、食えたもんじゃないんですね。

　目玉とか、口の中ではじけてくっついちゃって。全然、シャリの役割なんか果たせてないんですよ。

　やっぱり、いくら好きでも人間なんて食うもんじゃないですね。マズイとやっぱり嫌いになっちゃいますからね。体がお寿司だって聞いたから、ちょっぴり期待したのに。騙されました。ひどい味でした。

　昔なんですが、親を食べたときも──