《Brave〉The Immortal〉

落下

ある廃虚で拾われた手記

 の節/五十四日



 しくじった。多分、死ぬ。

 今、地下のどこかの部屋に隠れてる。

 床が抜けて、俺はそこの扉の向こう側の通路に落ちた。

 地上への道はわからないし、上から魔物どもの声もしたので脱出は不可能だと判断した。


 逃げられない。

 詰みだ。


 応援の兵団が間に合ってくれることを祈っているが、望みは薄い。

 いざとなったら、そこで拾った毒薬でも飲んで自害するつもりだ。

 あいつらに喰われるよりはマシな死に方だろう。


 この手記はここに置いていこうと思う。

 いつか、これを見た人が、俺という無名の勇者のことを思い出してくれることを願って。


 扉が叩かれ始めた。勘付かれた。手のふるえがとまらない


 もうだめだろうさような




 ──乱雑に書かれた最後の一文を読み終え、その手記を懐に仕舞いこんだ。

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