ULTRA SOULS

鈴木怜

ULTRA SOULS

「…………」

今、目の前にいるこの男は何を思っているのだろう。

期待か、達成感か、はたまた恐れているのだろうか。

それともこの男は楽しんでいるのだろうか。

それを推し測ることを許さないのが時間というものである。何せ初対面なのである。

そして俺は、初対面ながら持てる力の全てを出してくれたこの男に対して敬意を評するべきなのだろう。しかしそれは叶わなかった。動けなかったのだ。

どのくらい動けずにいただろうか。一秒だったのか、それとも一時間は経ったのか。それほどそいつ・・・は強烈なオーラを漂わせていたのだ。

やっとの思いで息を飲む。その瞬間、男が右の口角をニッと上げた……気がした。

こいつ・・・も楽しんでくれているのか。

そう思うと自分もいつの間にか笑っていることに気づいた。

俺がこの男に会うのは今日が初めてのはずなのに、奇妙な友情が芽生えた気がした。

だがしかし、この楽しいような苦しいような時間もそろそろ終わらせなければいけない。

この男の改心の一撃を食らわなければいけないからだ。それが俺の義務だからだ。

俺は意を決して、そしてこの男との出会いに感謝して、そいつ―――ネギトロの軍艦巻を口に入れた。


_____



最初に感じたのは、ネギトロの甘味だった。

強く主張することなく、しかしそれでいて存在をしっかりと感じさせるその甘さは、ネギトロを食べたいと願っていた俺の口から唾液を溢れさせ、まるで俺の体をとろとろに溶かしてしまいそうであった。トロだけに。

そして次に感じたのは、良質なすし酢を身に纏ったシャリの旨味であった。

一粒一粒がふっくらとしながらも先ほどのトロの甘味の邪魔をすることはなく、むしろ互いに引き立て合っていた。

そしてそれらをまとめていた海苔は俺の心を磯へと誘いだし、そこでネギトロとシャリと共に心が踊りだすようなハーモニーを奏で始めた。

やっとの思いで全てを飲み込んだ俺は、目の前でニカッと笑う板前にこう言った。

「……旨い!」

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ULTRA SOULS 鈴木怜 @Day_of_Pleasure

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