レッド=リーダー?


よい子のみんな! 私はレッド。

そう、戦隊ヒーローのリーダーだ。


リーダーたるもの、責任感が強くなくてはいけない。

上からの指令には忠実に、かつ迅速に対応し

隊員たちが元気に出動できるよう健康に留意し、心のケアも怠らず

世界のみんなを笑顔にするために、日々奔走するのだ。


なーんて、できないです。ぐすん。

そんな器じゃないんだ、ほんとは。

だって私は、私生活では赤川家の四人姉妹の後に

やっとできた男一人。


上げ膳据え膳で甘やかされてはきたけど

自分の意見なんて言おうものなら

怪人よりコワイ姉たちに散々言い負かされ

レールの上に乗せられた人生を歩んできたんだ。


なぜ私に白羽の矢が立ったのかは、いまだ謎。

もしかしたらヒーローずきの2番目の姉の差し金かもしれない。


私は本当は、グリーンがうらやましい。

あの本来あるべき末っ子気質の、のほほんとしたあいつが!

あんな風に生きてみたかった!


🐓


今日もついグリーン村に来てしまった。魂の洗濯に。


あらもー、千客万来だ。

グリーン家の木の陰で、ブルーが指くわえてじっと見てる。


その後方でピンクが、そのまた後方でイエローが

目の前の相手を、ガン見してる。

なんて直線的なわかりやすい視線。

10メートル間隔の、片思いベクトル!


それを統括して見ている私は

やはりリーダーの器であると言えるのか否か?


大体、今日はオフなのに、何みんなユニフォーム着ちゃってんの?

まったくこれじゃ、「5人ソロッテ」だぞ!


「あれ、どうしたの? みんな集まっちゃって。事件? 出動?」

さすがに濃厚な視線に気づいたのか、家から出てきて

のんびり聞いてくるグリーン。


わぁーっと集まってくる村のこどもたち。

「なになに、今日って戦隊ショーなのー? 握手してー」


「で、あの人誰?」 

グリーンが、私の背後をくいくいっと指差す。

え、は? そういや、さっきからやたらと視線を感じてたんだ。


振り向いた私は、驚いた。

そこには、黒のコスチュームを着た新人が立っていたのだ。

ドナタデスカ!

総括していたつもりの私を含めて、全体を見渡していた

あなたこそが陰のリーダー?


私はあわてて卵を産みそうになった。コケッコー。

そう、私の正体は「ニワトリ」だ。トサカはレッドの印。

おんどりだから卵は嘘ね。パサパサパサ。



<つづく>



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る