第10話 ヤクソク

 気がついたら朝になっていた。


ゆっくり休んだことで、これまでの旅の疲れも解消できた。 約束の時間まで、陽はまだ別れを惜しむ時間をくれるようだ。と言っても別れの挨拶は、だいたい昨日済ませた。残すは、あの二人だけだ。



ベッドから降り、窓際で大きく伸びをしてから、脇に置いていた剣を手に取った。


 手入れは入念にしておこう。

 先は長いんだ。


 ~~~~~


賑やかな町のなかの落ち着いた酒場の一画である男女が話していた。

「ルーク、あんたはイリスに着いていくの?」

「一緒に行きたいけど、、僕じゃ足手まといだよ。」

「...気にしないと思うけどなぁ~。」

「そうだといいね」


「そういうイブキはどうするの?」

「...保留よ。」

「そのこころは...?」

「あたしは後衛。今のアイツに必要なのは前衛の仲間なのよ。」

「...それこそ気にしないと思うけどね...。」



 ~~~~~

「...そろそろ行くか。」

イリスは手入れの手を止め、部屋を去る支度をした。

ここに来てまだ日は浅いが、世話になった部屋だ。


(出る前に、お礼もかねて軽く掃除していこう。)

イリスは簡単にだが掃除してから出た。

 

 約束の時間まであと少しだ。



広場に着いたとき、二人の姿はそこにはなかった。


(...来ないか。そりゃそうだよな。)

陽は天上から僅かに傾いていたが、二人は現れなかった。たかだか一人の冒険者相手に、真剣なさよならを言う人は多くない。

諦めて出発しようとしたとき、二人が現れた。

...なんてドラマチックな展開のひとつのくらい欲しかったのだが。。


イリスがをあとにしたのを、一匹の小竜が上から見ていた。


         ~~~~~

 ♪輝く朝に決意を

 ♪輝く夜に祈りを

 ♪奏でる音に勇気を

 ♪僕らの旅に歌を


 寂しさを吹き飛ばすように、

 靴をならして歌って歩く。


 きっかけは父さんの言葉だ。

 出たのは自分の意志だ。

 心淋しさは覚悟のうえだ。


 涙は、もう流さない。



 町から少し離れて、もう少しで一つ目の通過点、ダンジョン・インジュの森に到達する。

 そのとき

「待って!イリスっ!」ルークの、声だ。

 振り返ると、ルークが走ってくる。その横にはイブキも居る。二人はあっという間に俺の横に来た。ほぼ同時に、俺の頭上から小竜が降りてくる。


「バアム、案内ありがとね。」

 どうやら、ずっとこの小竜-バアム-にけられていたらしい。

「イリス。」と、改まった顔つきでルークが言う。



     「僕も連れていって!」





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