第1話 ハジマル

「安いよー!今が買い時だよー!」

「聞いたか?最近、王城地区で」

「昨日のあの酒!うまかったな!」


 そこに立っているだけで、色々な話題が耳に入ってくる。<活気>という言葉を具現化したかのような、とても賑やかで商売の手本のような町だ。


 その賑わいの中心から少し逸れた、といっても充分すぎるほどに賑やかな店の一画で、蒼髮の男が悩んでいた。傷薬を買うか否か、。


「店主、...この傷薬、いくらですか?」

「お、兄ちゃん、見ねぇ顔だな。旅のモンかい?

傷薬なら、1つ150コルだぜ。」

「や、すくないですか...?」

想定外だった。傷薬は単価200コルの所が多い。

しかも、ここは商売人が多い町だから、いくらか高値だと思っていたのだが。

 すると、店主は少し自慢気な、顔で一歩よってきた。

「そうだろそうだろ、安いだろ。この町じゃ、良いモンを安くってのがモットーだからな!

他より安けりゃ、買う人が増える。

買う人が増えりゃ、俺達商人は儲かる。

儲けが出りゃ、多く仕入れられる。そんでまた安く売るってワケさ。ハッハッハ」

「それは良いですね。じゃあ、、10個ください。」

「おぉ、兄ちゃん、羽振り良いねぇ!ん、確かに1500コル。ほれ、兄ちゃん、1個オマケだ!」

「ありがとうございます。では」

「おぅ、毎度あり~」


 店をあとにした青年は、

店主に、どこか懐かしい感じを抱いていた。

(...あぁ、父さんに似てたのか。)

 体格も、話し方も全然違う。

 ただ、笑い方がそっくりだった。

 豪放で荒々しい笑い声。


 ...この旅の原因になった、あの忌々しい笑い方だ。



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