ホーリーフラッグ

イルミネ

プロローグ

 プロローグ


 住み慣れた町を出てから、どれくらい経っただろう。


 真新しい地図を拡げ、現在位置の確認をした。

次の町まではもうすぐ。

(こんなに進んでたのか)

感慨深いような、それでいて、なんとも言えず心細くなった。

地図を戻し、代わりに一枚の記事を鞄から取り出した。

     《失われた歌声》

 昔、魔物に親を殺されたトラウマで声が出なくなってしまった我が国の姫。最近、ようやく少しずつ声が出るようになったが、どうしてか歌だけは歌えない。

 これは、姫の持つ声の威力を恐れた魔王が、歌声を奪ってしまったと考えられる。いつの日か姫の歌声を聴ける日は来るのだろうか。


 ひとつ前の町で情報屋に貰った記事だ。

姫の声が戻りつつあるのは朗報だった。

だが、俺が知りたいのは姫のことじゃなくて、

その声を奪った魔物の方だ。


 この旅の目的は、姫の歌声を奪った魔物の討伐なのだから。あとついでに、俺の故郷を攻撃した魔物も討つ。


 後者がついでなのは、幸いにも住人に大きな怪我は無く、多少の不安はあれど、平穏に暮らせているからだ。決して俺が薄情とか、そんな理由ではない。


 後者の魔物の正体は、大体つかめている。

しかし、問題は前者だ。この旅の本来の目的なのだが

正体はおろか、姿、大きさ、数、何一つ判ってない。


 今までの町では、魔物の情報を得られなかった。

次の町では、何か手がかりを掴めるかもしれない。

姫の歌声を奪った、魔物の手がかりを。

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