ベルトコンベアー・スシ・アルバイターの死
ゴッドさん
綺麗な形の寿司
ある日、僕の友人が死んでしまった。
遺族から詳しい死因は聞かされなかったが、どうやら自殺らしい。
* * *
彼を自殺へと追い込んだ原因は『長年勤めてきた回転寿司屋を解雇されたから』という線が濃厚である。
解雇後、彼は別の職を探した。しかし、資格も学歴もほとんどなかった彼は就職活動に行き詰まり、生活に苦しんでいたという。
そして、回転寿司屋を解雇された大きな理由が、『回転寿司屋の完全機械化』である。
回転寿司屋は人工知能によって完全に自動制御されるようになったのだ。
食材の輸入も、調理も、皿洗いも、全て人工知能に繋がれた機械がやってくれる。
寿司を客に出すまでの流れで関わる人間は、米の生産をする農家、安い魚介類を獲る途上国の漁師、そして消費者だけである。
こうした回転寿司屋革命の流れの中で、僕の友人は人工知能にとって邪魔な人間になってしまったのだ。
* * *
僕は友人の葬式の帰り道、彼が勤めていた寿司屋へ入店した。
日曜日の夕方ということもあり、店内は多くの家族連れで賑わっている。
おそらく、そこにいるほとんどの子どもは、そこでどのように寿司が作られているのか知らないのだろう。
僕はそんな彼らを横目に、店の玄関にある『来店』ボタンを押し込んだ。そのすぐ横に設置されたカメラが僕の姿を捉え、人工知能が機械音声で僕に話しかける。
《イラッシャイマセ、何名様デショウカ?》
「1人です」
《カシコマリマシタ。カウンター席ゴ希望デ、ヨロシイデスカ?》
「それでいいや」
《番号札ヲ発行シマス。シバラクオ待チクダサイ》
すぐに番号札が発行され、僕の番号も呼ばれた。
僕はカウンター席に座り、食べたいネタが流れてくるのを待った。
玉子、マグロ、サーモン、タコ、イカ……、
どのネタも、綺麗に形が揃っている。
僕はその中から好きなネタを一つ手に取り、口の中へ運んだ。
「うま……」
友人が握るヤツよりも遥かに美味かった。
ベルトコンベアー・スシ・アルバイターの死 ゴッドさん @shiratamaisgod
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