第26話 ある日のナイショばなし
翔太も彩未も、学校とそして部活と。
気がつけばしばらく、キスもハグもおあずけのままである。
玄関を開けて、廊下に出て、そしてほんの何歩か歩けばそこに、カレシがいるというのに...。
(これって、欲求不満ってやつかなぁ...)
机に向かって、半分くらいしか進んでいない宿題を前に、いたずらか!と思わなくもないRENを送る。
『つぎ、いつできるかなぁ』
『なんのこと?』
とぼけてるのか、試してるのか...。彩未は少し大胆な文を打った。
『きもちいいこと』
『えろ』
あ、ちょっとノッて来たかな?とからかう文を返してみる。
『なにかんがえてんの?翔太がえろ』
意地悪だったかな、なんて思っていると、
『ハグしたい』
なんだか、カワイイ返信がくる。
『ハグ?いいよ』
『どうやって(笑)』
『なんかじゃあ写メおくって』
と、続けて入ってきた。翔太も少し悪ノリをしているようだ。
『えー、恥ずかしいな…』
どうしようかと思い、机の前で自撮りをする。この日の部屋着はキャミソールとカーディガン。他人に見せるには露出度は高めだった。
『送るんかい。ダメでしょ』
『悪用する??』
『しちゃうでしょ、こんなの見たら』
プッと笑えてしまう。
翔太もこうやっておふざけが出来るくらいには浮上したのかと、少し嬉しい。
『はんのーした?』
さらに大胆な事を送る。
『した。せんとうかいし』
それを見て彩未もウケて笑った。
『イヤン』
『あ、父帰宅...ヤバ』
翔太の父は少し厳格な雰囲気がある。こんなふざけたやり取りを知られたら、きっと厳しく怒られるに違いない。
『今どこ?』
『部屋。机に座ってる』
『なんのべんきょーや!』
『父、風呂いった』
『まぢめに、べんきょーしなさい』
『はい、せんせー。べんきょーしまっす』
『えっと、せんせー今から教えにいっていい?』
『来てくれんの?』
『まっとって』
『いつまでもまってるよ』
『まっとって』
ケラケラと一人で笑って、その後はなんだか勉強もすんなりと終わる。
その、翌朝。
いつものように、エレベーター前で翔太と会った。
「おはよ」
「はよ」
昨日のRENみたいな文章を打ってくるとは思えないくらい、今の翔太はクールで知的である。
「昨日、来てくんなかった」
ちょっとわざと拗ねたように言うのが可愛い。
「昨日行くなんていってないでしょ」
本気じゃないのをわかってながら、そこに乗っかって返事をする。
「待ってたのにさ」
「ごめんね翔太。でも、本当に行っても良かった?」
「スモールライトある?あれでちっちゃくなれたら、ポケットにはいっちゃえば見つからないでしょ」
「えー、じゃあ。翔太がポケットサイズになってよ」
「俺は男だから、無理」
「私も女だから無理」
「何の話してんだか」
プッと笑えてしまう。
朝の家の前から、春花たちが乗り込んでくるまでのそのわずかな時間が、相変わらず二人の時間。
「本当に、次はいつデート出来るかな?」
「中間最後の日とか休みとかかな...?」
「あ、それいいね~」
「まずはテストやっつけないとな」
「だね...」
あともう少し、次のイチャイチャはお預けだ。
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