第18話 つかのまの
付き合いだした。と言ってもお互いに部活と勉強とそれに...秘密にしないといけないこともあって、なかなか外でおちおち手も繋げない。
彩未は地方大会の会場に来ていた。
先日の座奏は全国に進むことが出来た。そして、今日はマーチングの方である。客席には彩未の両親の真人と京香がいるはずだった。
彩未たちは惶成大学 高等部 吹奏楽部は、紺色に白のラインと金ボタンの飾りの、ユニフォーム姿に黒のハイソックスである。
「こうせいー!ふぁい!」
あづき先輩の号令に
「やぁーーー!」
全員で答える。
走って位置につくと、あづき先輩の合図で演技が始まる。
一個ずつ、練習通りにキチッキチッとピタッと決まる。
最後の最後まで、いつも以上と言えるくらいの完璧な出来だった。
そうして歓声が沸き上がる。
それに伴う結果はもちろん、全国へのキップを手にすることが出来たのだ。回数を重ねるごとに自信がつくし、毎回緊張はするけれど何よりも度胸がつく。
そして、サッカー部のインターハイの試合の応援の日。
翔太は吹奏楽部の横で中等部のみんなと応援で座っていたし、試合には瑛斗が出ている。
この日はKosei high schoolのロゴTシャツと紺色のミニスカート。白のハイソックス。
カラーガードのパートはポンポンで応援だ。
ハーフタイムでメインの演奏をする。来年は、翔太は出てるかな?と思うと、その時が楽しみになる。
試合結果は残念だったが...。
3人での帰り道。
「...ちーっとも。デートの1つも出来ないんだけど...」
ほとんど練習の毎日に、彩未はボソッと不満をもらした。
「まぁ、お互いに忙しい部に入ってるもんね」
春花が言った。
「今度、休み続くでしょ?出掛けなよ」
「今度?」
「ほら、ここ。休みでしょ?」
ぴらりと見せられたのは活動スケジュール表。
「ふぁっ!」
彩未はその何でもない日が特別な日に一瞬で変化した。
早速翔太に休みが合うかRENで聞いてみる。
『大丈夫。休める』
『じゃあさ、出掛けよー』
『いこ!』
そうして、出掛けたのは映画だった。
この日はパウダーピンクのサマーニットに白のミモレ丈のコットンスカート。白の透け感のあるソックスにグレーのサンダルだった。
翔太の方はホワイトのシャツと黒白ボーダーのTシャツにネイビーのクロップパンツでマリンテイストで爽やかだった。スニーカーはハイカットでホワイト。
しかし...、後部座席を陣どった二人は映画もそっちのけで、久しぶりにイチャイチャしたくなってしまって、席がまばらなのを良いことに、キスも何回もしてしまった。
「彩未ちゃん、見れた?」
「ううん...あんまり、もったいなかったね」
映画館を出れば、まだまだ暑い夏の事。
しかし、翔太も彩未も熱い中で動き回っているから全く平気だった。
翔太とは小物類の好みがぴったり合うからウィンドゥショッピングをしていてもとても楽しい。
大型の雑貨店に入ると、見ているだけで楽しめる。
美容系から、ファッション、文房具、家具まで様々だ。
「あ、カラーペン欲しい」
「俺はこのシリーズが好き」
「なんで?」
「細いから書き込みしやすい」
「あー、教科書書き込んじゃうから?」
そういえば、翔太の教科書もノートもカラーペンでの書き込みがたくさんあった。
「ふぅん~ いいかも」
あとはクラブ用のメモノートを買い、また違うエリアに向かう。
「彩未ちゃん、ヤバイ。あれ高等部の先生だろ?」
林田先生は、高等部の2年の国語教師だ。私服だが間違いない。
「えー?」
「まさかの見回り?」
「かも」
棚に、隠れながらこそこそと話した。
「別々に、下の階に行こうか?」
「うん、そうだね」
「じゃ、下に着いたら連絡する。先におりて」
「わかった」
危険だけど、ちょっぴりスパイみたいな気持ちでワクワクもする。いけないけど...!!
下のフロアはインテリア雑貨が置いてある。いつもならかわいい雑貨たちにウキウキするところだが...。
きょろきょろと辺りを警戒していると、連絡の前に翔太が見つけてくれたので危険なこのエリアは離れることに決めたのだ。
「夏休みだから、かな」
「だね、捕まえにくるやなんて、やらしいわぁ」
結局その後も、何人かの先生を見つけてしまい電車で合流することにしたのだ。
(先生たちのドアホ!私の休日をかえせ!)
ぷりぷりしながら、待ち合わせのホームでいると、
「めっちゃリスみたい」
「え、うそ。膨れてた?」
「うんおもいっきり」
「アイスでも買って、うちで食べる?」
「うん、そうする」
翔太の家は、翔太ママの趣味なのかナチュラルな雰囲気のインテリアだ。
木目調の綺麗なすっきりとした部屋になっている。
翔太の部屋も、机とそれに小さなテーブルとグリーンの丸いマットと、それにクッションが置いてある。
「クッションに座ってて」
「郁都~?」
郁都は翔太のすぐ下の弟で、惶成よりもレベルの高いトップ校、秀鵬(しゅうほう)学園中学校に進学している。
「いないな、ライブラリーでもいったかな?」
マンションにはライブラリールームがあり、利用率の低いスペースがある。
「涼介は?」
「たぶん、夏期講習かな」
涼介は一番下の弟で5年生。きっと受験するのだろう。
「翔太ママは?」
「涼介と一緒かな」
つまりは、二人きりだということだ。
「「...」」
「アイス、溶けないうちに食べよっか」
「そう、だね~」
最初は少しばかりドキドキしてしまったけど...。
つい、
「食べる?」
「うん」
「あーん」
と、悪ふざけをしてしまうと、少しずつ行為はどんどん際どくなってしまい、唇のアイスを舐めとったりしてしまう。
そうなると、本格的にキスをしてしまうわけで...。
しかも、二人きりの密室なわけで...。
翔太の膝の上に乗って夢中で、甘いアイスの味のするとろとろに溶け出したそれを味わい合った。
ゆるっとしたサマーニットの下はキャミソール。その内側、素肌の背中に、アイスで冷えた手が忍びはいる。
素肌に直接触れたその手に強く抱き締められながらのキスは、いつも以上に興奮してしまって思わずため息が出てしまった。
「...彩未ちゃん...、ダメだって俺を止とめて...」
ピタッと動きを止めた翔太は、手を離すと床にバッタリと寝転がり両手で顔を覆った。
「しょーた」
隠してる顔からのぞいてる、彩未にはとっても色っぽく見える唇に馬乗りになってキスして舐めた。
「ダメなんて言わないよ...?」
「ぅわ!」
飛び起きた翔太の衝撃で、ごろん、と転がってしまい弾みでスカートがまくれ上がってしまう。
「ごめん、彩未ちゃん。今ちょっと、サワリがあるからちょっと待ってて」
(サワリ?障り?)
耳から首筋まで赤くなった翔太は、前もあったようにしばらく戻ってこなかった。
すこし残っていたアイスは、ドロドロ溶けていた。
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