Ⅰ-Ⅰ
「お、おお……! やりましたぞ姫様!」
目を開けると、露骨に喜びを示している誰かがいる。
白い法衣に身を包んだ老婆だった、隣には同じく、法衣を纏っている赤髪の美しい少女。少しばかり上気した頬が、何かしらの行為が行われたことを示している。
他にも人は大勢だった。鎧を装着した軍人らしき者、黒いローブに身を包んだ、絵本に出てきそうな魔術師然とした者。
他に注目するべき点があるとすれば、全員が女性であること。
最初に感嘆の声を漏らした老婆以外、若い者の姿が多いように見える。法衣を纏っている少女なんかは、恐らく十代後半だろう。赤い長髪で、目を引く容姿の持ち主だ。
「な、なんだこれ……?」
「どこだよここ!?」
次の驚きは周囲から。
言わずもがなクラスメイトである。自分達に起こった異変についてこれないのか、次々に困惑を口にしていた。
俺達は今、室内にいる。どことなく教会のような雰囲気の場所だった。
なるほど魔術を行うには最適な場所かもしれない。召喚術はもちろん、神の力を借りることが前提だからだ。
「皆さん、突然のご無礼をお許しください!」
一番最初に見た赤髪の少女は、両手を広げながら呼びかける。
「わたくしは王女イオレー。皆さんをこの場にお呼びした者です」
「!?」
困惑は深まるばかり。中には既に平静を取り戻している者もいるが、どこか恨むような視線を向けている。
彼らの都合に構わず、イオレーと名乗った赤髪の美少女は話を続けた。
「皆さんの了承も得ず、このような場所に呼び出して申し訳ありません。……ですが、わたくし達には皆さんの協力が必要なのです! 異世界から呼び出した、勇者である貴方がたの!」
「待ってくれ!」
相変わらず混乱しているクラスメイトを掻き分け、一人の少年が前に出た。
黒髪で整った顔の持ち主である彼は、クラスのリーダー的存在である
取り巻きの女子生徒達に囲まれながら、彼は勇ましくイオレーに噛み付く。
「助けてくれって、そんなの突然言われても困る! 見れば分かるだろうけど、僕らは普通の人間なんだ! 特別なことが出来るわけじゃ――」
「いえ、皆様には勇者として、既に特別な力が備わっています! これをご覧ください!」
言って、イオレーが取り出したのは、何十枚にも重なった紙だった。
俺を除くクラスメイトは、不思議そうな顔でその紙を眺めている。……あれ、確か召喚された者の能力を表示する、特殊な道具だった筈だ。
以前は『ギルド』と呼ばれる組織が使っていただけだったが、さすがに事情が違うらしい。
「では!」
直後、イオレーは持っている物を頭上へと放り投げた。
そのまま紙は重力に引かれて落ちる――わけではない。独りでに踊りだし、持ち主の元へと滑り込んでいく。
当然、俺の元にもやってきた。
一番上には名前。ユウ・タクイ、と短く記されている。
その下には、俺がかつての冒険で手に入れた能力。代表的なものが三つほど並んでいた。
クラスメイト達も同じなんだろう。これまでとは一転、緩やかな雰囲気の中で
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