第44話 外出の許可

由梨がようやく落ち着いたと言うことで、貴哉から志歩に頼んでチケットをとって貰い、久しぶりに和花と出掛けることにした。


服は春らしいピンクベージュのワンピースと、ジャケット、それにベージュのリボンつきローヒールパンプスと、バッグである。


アクセサリーもお揃いのイヤリングとネックレスをつけて、友人とのお出かけに自然とテンションがあがる。

綺麗にして貴哉の見送りに玄関まで行くと、


「仕事、早く終わらせるから、向かえに行くよ」

「一人で大丈夫ですよ?」

「俺を安心させると思って」

「貴哉さんは、私に過保護です」

「大事な、奥さんと子どもたちだからね」


貴哉は絶対に引き下がらなさそうだ。


「どうしても、嫌とか言うなら休んで着いていくよ?」

本当にしてしまいそうで、由梨は、慌てて笑顔になった。

「はい、じゃあ待ってますね」

由梨の返事に貴哉は満足そうに頷くと、

「うん、じゃあ行ってくる」

そう、額にキスとお腹に手を触れると、仕事に出掛ける。


(過保護過ぎるけど何だかんだで幸せ…かも…)


由梨は、高坂さんの運転で和花と待ち合わせをしている劇場の近くに降ろしてもらう(これも貴哉とのお出かけの条件だった)。


「ゆーりー!」

手を大きく振ってる美人は間違いなく和花である。


「のん」

由梨は、目立っている和花に頬を染めて近づいた。

「ようやく落ち着いて、よかったね!」

きゅっとハグをすると、由梨のお腹に目をやった。

「ん~、なんかこの丸み。かわいいよねすでに」


「ほんと?まだまだもっと大きくなるって聞いてるから、大丈夫かなと思ってるけど…」


先に近くでランチをしていると、

「なんか由梨、綺麗になったよね。愛されてるんだ?」

向かいに座った和花が言った。

「ええ?そうかな」

「それに、セレブっぽくなってる」

「…服のせいかも」

「似合ってるよ」

「全部、貴哉さんのお母さんが買ってくれるの。だから、多分そのせい」

「凄いなぁ…。イケメンだし金持ちだし、言うことないね。それに優しいんでしょ?」


「のんはあれから、絢斗さんとはどうなの?連絡とってるの?」

「うん、時々ね。彼も新入社員でがんばってるみたいよ?元がボンだから苦労するんじゃないかな?」

「そっか…」

「あ、お祝いに欲しいものある?まぁ、ほとんど親が買っちゃいそうだけど、みんなで一緒にお祝いしちゃうから割りと良いもの買えるよ」

「んー、やっぱりお揃いの服とかかな?まだ性別わからないけど…」

「それ、テンションがあがるわ~同姓でも、男女でも、楽しみだわ」

「ふふ!私も、それは楽しみにしてる。あとは不安だらけだけど」

「一人でも、不安になるって言うもんね。産まれたら病室に見に行くよ」

「あ、そういえば、わ…白石先生、小児科に行ったみたいで、出産の時スタッフとしているらしいの」

「複雑?」

「少し…」

「大丈夫、良い感じの医者になりそうだよ?頑張ってるし。その辺は切り替えてちゃんとするよ」



この日の公演は、志歩のいない組の公演だった。

志歩は今、関西の方の公演なのである。このときの公演は、有名な小説を元にした舞台。

辛い時期をこえた由梨は心から楽しんだ。


「ね、ダンナさん。迎えに来るって?」

「うん。今からこっちに来るみたい」


通話を終えた由梨に和花がそう聞いた。

「じゃ、来るまでお茶でもしよっか?」

「賛成っ」

由梨と和花は近くのカフェに入った。


「やっぱり、カフェインも避けてるんだ?」

「うん、そうなの」


由梨が頼んだのはフルーツジュースである。

「みんな、助けてくれるから、私は気を付けて頑張らないといけないなって」


和花の、仕事の愚痴を聞いているとあっという間に時間が過ぎて貴哉が店に入ってきた。

「お待たせ」

由梨の隣に来た貴哉は、

「清川さんも、一緒に夕食をどうですか?」

「ありがと、でも。夫婦二人の時間が二人には限られてるからね、お邪魔はしないことにするの」

和花は綺麗な笑みを向けて、元気よく立ち去っていった。


「じゃ、行こうか?」

うん?と貴哉を見上げると、

「せっかくお洒落してるからさ」


なんだか久しぶりなデートについ、由梨の気持ちは浮き立つ。

貴哉が由梨を連れていったのは、大型の水槽があり、ブルーの照明で照らされた空間の寿司の店である。


お洒落な空間で、お寿司なんて!と由梨はとても感激した。

「回ってないお寿司やさんははじめてです」

こそっと由梨は、貴哉に耳打ちをした。

「おまかせでいい?」

「はい」


由梨は新鮮な、海鮮を使用したお寿司に感激した。

「貴哉さん、貴哉さん、ものすごく美味しいです」

「食べられるように、なって良かった」

美味しそうに食べる由梨を貴哉は満足そうに眺めていた。

ひさしぶりに外に出れて、やはり気分はリフレッシュ出来たのだ。

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