第41話 彼と友人

結婚式も、無事に終わり由梨の体調が落ち着いて、貴哉の友人たちが訪ねてきていた。


辛い時期に、お世話になったせいか、すっかり高坂さんの存在に慣れていた由梨は、彼女と二人でキッチンにたってもてなしの料理を準備を済ませていた。


慣れというのは不思議なもので、すでにこの広すぎる家も住めば違和感がなくなってきている。

最新式のキッチンも、ものすごく使い勝手がよい。


リビングのソファセットには、貴哉と友人たちが寛いでお酒を飲み交わしている。


「紺野が、まさか一番に結婚するとはね」

真也がそう機嫌よく言った。

「でもさ、奥さん。どこかで見た気がするんだよな」

陸人が言った。

「名前きいたかな?」

テーブルに料理を並べてる由梨にそう聞かれて名前を答えた。

「あ、由梨といいます」


由梨は料理を並べながらいうと、

「由梨…由梨…。あ!由梨ちゃんだ」

顔をぱっと、明るくして陸人が叫んだ。

「?」

「桐王大学附属病院にいただろ?」

「いましたけど…」

「覚えてないかなぁ…。榎原 陸人。入院してたんだよ骨折して」


「あー、そうなんですね…」

由梨は記憶をたどろうと、陸人を眺めた。

何となく、覚えがあるようなないような。


「その、感じ…忘れてるね」

「すみません…。あまり、覚えてられないんです。私」

「仕方ないか、看護師さんならたくさん患者見てきてるんだもんな」

「すみません…あの病棟は急性期の方がほとんどなので、患者さんの入れ替わりも早かったので」

「そうだよな!いや、でも偶然だな。ビックリしたよ」

「本当にそうですね」

由梨はそういって、またキッチンに戻る。次のつまみを準備しにだ。


リビングでは古くからの友人同士の賑やかな会話が聞こえてえてくる。

「それにしても、紺野がデキ婚とはね。そんな失敗はしなさそうなのに」

陸人はかなりお酒を飲んでいて、機嫌がいい。

「いや、失敗は絶対にないだろ。紺野がするなら確信犯だ」

秀悟が苦笑いしている。

「お前なら、わざ…いや、ごめん」

言いかけて、止めると。


「それ、ほんとにしてたら逆サギじゃないか?」

明るく笑ったのは陸人である。

「陸人、やめろ。洒落にならない」

真也が貴哉の気配を察したのか止めるが、陸人はお酒のせいか気がつかない。


「陸人…、ちょっと飲みすぎじゃないか?」

貴哉が薄く笑みを浮かべて言った。

「飲んでるよお~。この間協力しただろ?」

「そうだな。よし、もっと飲め。そしてつぶれろ」

貴哉は思いきり、陸人の前にブランデーをおいた。


ご機嫌な陸人は貴哉のその言葉を明るくとらえて、

「飲むぞ~」

と叫んで、飲み出した。


(…確信犯?)


そんな事をしなくても、貴哉はいくらでも女性が寄ってくるんだから。


酔いつぶれた陸人と、それに付き添って真也と秀悟も和室に泊めることになった。


由梨は、すっかりお馴染みになったネグリジェで、貴哉と寝室にいた。

「由梨…」

そっと後ろから抱き締められて由梨は貴哉を見上げた。

「今日はありがとう、疲れたんじゃない?」

「高坂さんがいたので、平気です」


「少し…膨らんできたね」

わずかに膨らんだお腹は週数のわりに出ている。やはり双子だからだと由梨は思っていた。


体調が戻ってきてからは、貴哉はよくこうして体に触れてくる。

「触っていい?」

由梨は頷いた。

優しく触れる手が、由梨の髪から、首へそして、胸からウエストへと触れていく。


「辛かったら、我慢しないで」


辛くはない。貴哉の手は心地よくてうっとりしてしまう。

ゆっくりと、由梨の身も心も解きほぐすような愛撫が由梨につい、気になることを口にさてた。


「危険日…なんて…知りませんよね?」


「ん?さっきの話?」

「はい…」

「たまたま…だろ?狙って子供なんか出来るわけないじゃないか。それに…双子なんて、俺と由梨はとても相性がいいんだよ」

「ですよね…」


「うん、そうだよ?」

「ごめんなさい。変なことをいってしまって」


「いいよ、由梨なら。どんな由梨でも好きだ」

唇と吐息が、敏感になった由梨の肌に直接触れて由梨は甘い息を吐いた。


じっくりと味わうような、貴哉の行為に由梨は身を委ねていく。激しさはないが、その分時間をかけて由梨を導いてお互いの気持ちを確かめ合うように、重なりあう。

貴哉は由梨を、愛してくれている…。

それは紛れもない事実であると感じられた。

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