僕らの魔法は何も救わない

人は未知の恐怖と相対した時

一つは恭順し仲間になろうとする

一つは敵対し消去しようとする

互いの恐怖を分かち合おうとする者は沈黙した


昔々、魔法使いは絶滅に瀕していた。

魔女狩り、異端者として魔法使いの多くは殺されていた。

魔法を使えない人も巻き込み、多くの人間が密告を恐れて息を殺す日々。

魔法使いは抗う力を持っていた。

だが、それを使うことはしなかった。

神の教えに従い、その力は人に向けて使われる事は無い。

ただただ、殺されていく魔法使い達に女神は慈悲を与えた。

己が身を守るために、その力を使うことをお許し下さった。


魔法使いに矢は届かない、嵐のような風が全てを薙ぎ払う

魔法使いに剣は届かない、怒れる山の赤い炎が全てを溶かす


たった一人の少女が、全ての魔法使いを率いて

理不尽な暴力と、神の権力を口にしながら人を殺める人間に立ち向かった

またたく間に魔法使いは人間を屈服させ、そして安住の地を得る


それから幾年

今度は人間同士の争いに魔法使いが駆り出される

国を守るため、民族を守るため

魔法使いの力が、何かを守るという正義のために

対する他の正義とぶつかり、そして殺し合った

いつしか力を利用する相手同士、魔法使いの力を恐れるようになる

魔法使いの存在は禁忌として扱われるようになった


さらに長い数十年

魔法が現代文明と共存する現代

魔法使いの力は、人々の暮らしを良くするために使われている

飛行機が空をとぶのも、多くの電波が飛び交い高速通信を可能にしているのも

手紙が一日早く届くのも、科学と魔法が生み出した技術

魔法は使えない者にとっても、知らぬうちに身近な存在となっている

そんな世界で


魔法使い達は、魔法を使わない者達に嫌われていた

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