第6話城と砦ともてなしと。
「魔王様、魔王様!」
「何だ闇巫女よ。騒がしいぞ、我々は誇りある魔族の中でもいわばエリート。言動には常に気を使ってだな………」
「そんな形ばかりの誇りを語っている場合ではありません魔王様! これ、これを見てください!」
「誰の誇りが形ばかりだ! 全く、どれどれ………? ん? 何だこれは」
「月刊【
「月刊誌………お前、前回世界観について散々言っていた癖に………」
「良いから、これ、ここを見てください!」
「あぁ? 何々………、ん、ん?
『勇者に聞く世界の名所』? ………何だこれは」
「今月の特集記事です! 勇者が旅した世界各地について、感想とランキングを付けてるのです」
「何だそれは」
「その中でも、これ、この部分を読んでください!」
「………『2度と行きたくない
「何て不名誉な記事でしょうか!」
「………え? そうか?」
「そうですよ! こんなところ2度と来るかと言われたのですよ! お前の家に魅力がないと侮られたも同然です!」
「我輩の居城は観光地ではないのだが………」
「『魔王城は世界を救う旅の最終目的地、期待していたけれど大した罠もない、まるで国王様の城みたいだった。何かガッカリした』」
「何だとこの野郎!! 大した罠だと貴様解けないだろうが!!」
「どうですか、こんなこと言われて良いのですか! いいえだめです。次回に向けて、改善を提案します!!」
………………………
………………
………
「先ずは現状を把握しましょう。魔王様、図面を」
「我輩はアシスタントではないのだが………いやいい。もう早く済ませたい」
「ご覧の通り、良くある城ですね。何の変哲もありません」
「まあ、城だからな」
「魔王様の玉座までは、うーん、普通に歩いて30分位ですか?」
「そのくらいかな」
「短いですね」
「嘘だろ?」
「最終ダンジョンですから、最低でも五時間は掛からないと」
「長過ぎるだろ、何処のマラソン競技だそれは」
「最終ダンジョンですから」
「………かといって、距離は易々とは伸ばせんぞ。改築にもそれなりに手間が掛かるのだからな」
「そこで、罠ですよ」
「罠?」
「仕掛けと言っても構いませんが、とにかく、普通には進めなくなる仕組みです」
「自宅に、罠?」
「いかがですか。少年心が疼きますか? とかく男子は、秘密基地に憧れるものですからね」
「それは外に造るものだろ、自宅を秘密基地にしてどうする。我輩は、ここで生活しているのだぞ?
大体、何故そんな仕組みを作らねばならないのだ。敵の進行を防ぐ砦に罠を仕掛けるのは解るが、ここは我輩の居城だぞ!」
「しかし、外敵排除の罠くらい何処の城にもあるでしょう?」
「お前が参考にした城の資料が解らんがな、普通はない。………あのな、何処の城にも秘密の通路やら隠し部屋があると思ったら大間違いだ。精々隠し金庫という位だろう」
「え、岩とか落ちてきたり、落とし穴があったりはしないのですか? 順番通りに踏まないと崩れる床とかは?」
「確実に誰かが引っ掛かって終わるだろうなそんなもの。来賓とか、そういうのが」
「そんな………」
「そこまで打ちひしがられる事だろうか………」
「いえ、解りました。しかしだとしても、諦めませんよ私は。
この城を、誰の目に触れさせても恥ずかしくない極上の
「そのルビは止めろ!」
………………………
………………
………
「先ずは此方を御覧ください」
「何だこれは………模型か?」
「魔王城のミニチュアハウスです。良く出来ているでしょう?」
「まあな。………で、この人形は?」
「勇者です。手元の
「………まあいい。もう突っ込まない。
それで? ここにお前の考える仕掛けが施してあるというわけか」
「そういうことです、さあ、どうぞ!
先ずは一部屋目です」
「………テンションは上がらないが………とにかく、入るか。えっと、前進はこれか? ………あ」
「死にましたね」
「何があったんだ今………床から剣が………」
「やはり、罠といえば先ずはこれ。踏むと発動するタイプですね、ポピュラーです」
「即死は酷くないか」
「剣で全身貫かれた訳ですから、普通死にますよ」
「それはそうなんだが………。とにかく、絨毯が大変なことになったじゃないか、却下だ」
「えー」
「せめて廊下にしろ、彼処なら一面大理石だから」
「廊下には別の罠があるのです」
「………やり直すぞ。えっと、飛び越えて、と。む?扉が開かないぞ」
「当たり前ですよ、ここは他人の家ですから。さあ、鍵を探し出してください」
「まあ、確かにそうだな。えっと、じゃあ、一先ずは本棚を調べるか」
「一冊の本から鍵が! 流石ですね魔王様!」
「今勝手に本が飛び出してきたが………」
「本棚の本を全部調べるのは面倒でしょう?」
「面倒というなら今の行程全て面倒なんだが………まあいい。あったのだからな、先に進もう」
「お待ちかねの廊下です」
「待ってない」
「カツン、カツン。大理石の床に足音が反響します。静かな廊下には、やけにうるさく響く………」
「ナレーションは要らない。というか、何でこんな静かなのだ。モンスターは?」
「居ますが、今回は仕掛けだけを堪能していただきたく」
「さっきの部屋にいたら罠を踏んで死んでるだろうがな。………ふむ。ずいぶんと長い廊下だが………」
「お気付きになりましたか。無限回廊です」
「ループか、成る程定番ではある。解除は………」
「解除は無理です」
「は?」
「実はさっきの部屋に仕掛けがありまして。それを解除しないで廊下に踏み込むと強制的にこうなります。もう二度と、出ることは出来ません」
「面倒な………、ではどうすれば良いのだ。リスタートは?」
「
「これか。………うわ、ぐろっ………」
「拘りのグラフィックです」
「要らんところに拘ったな………。破裂する頭の映像を見て誰がうれしいのだ」
「魔王様の勇者が死にましたね。あ、いえ、魔王様が死にましたね」
「止めろ!」
………………………
………………
………
「あ、その扉は、開くためには宝玉が要ります。赤と青どちらでしょうね? あー、残念、
「………」
「宝箱には罠が付き物、基本ですよ? 確認もせずに開けたりしたら、それはもちろん毒矢くらい飛んできますよ。即死です」
「………………」
「絨毯を踏むなんて! 落とし穴に決まっているでしょう何を考えているのですか? 落ちた先は毒蛇の巣です。あなたは死にました」
「………………………」
「その白いのは蜘蛛の巣なので、死。あ、その剣は釣り天井のスイッチです。死亡。天井から垂れている液体に触れましたね? 強酸でした、即死です。
………移動した方が良いかもしれないと言ったでしょう! デスワームに食われて死亡です」
「やってられるかぁぁぁぁぁぁっ!!」
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