お疲れ様です魔王軍

レライエ

第1話そして打ち上げへ

「これで終わりだ、魔王! 喰らえ、聖剣全力斬りフルパワースラッシュ!!」

「ガハッ! ば、馬鹿な………この、魔族の王たるこの我輩が………。く、くはは、はははははっ!! 見事だ勇者よ! だが、我輩は滅びぬ。100年の後に甦り、再び世界を………グハッ」

「………何度でも甦れば良い………魔王。俺は、俺たち人類はけして諦めたりしない! お前が甦る度に、新たな勇者がお前を倒す! 御先祖様がそうしてきたようにな!」


『………こうして、勇者の3年にも及ぶ戦いの末、魔王は倒された。

 だが、魔王は闇の象徴。

 人類に悪しき心有る限り、100年の後に再び甦るだろう。

 だが、その都度人類には、必ず勇者が生まれ立ち向かうだろう。何故なら、闇が在るところ、必ず光も在るのだから………』


………………………


………………


………


「………お疲れ様です魔王様。私です、闇巫女ダークメディスンです。勇者は帰りましたよ、起きて下さい」

「………うむ、そうか。ふうー、やれやれ、身体が固まったような気がする。

 全く、やけにのんびりとしていたようだが、何をしていたのだアイツは」

「魔王様を倒した後で何か宝箱でも出るんじゃないかと探し回っていたようです」

「出るわけないだろ終幕エンディングだぞ?! ここで仮に何かアイテムを得て何に使うつもりだ」

「まあまあ、貧乏性なのでしょう。折角の万能治癒薬マックスポーションも使わないままでしたし」

「あれには、地味に賞味期限もあるというのに………から瓶に書いてやれ」

「まあまあ、魔王様。終わりですし、反省はまたにしましょう」

「やれやれ、そうだな。久方振りの終幕エンディングだ、のんびりするとしよう。

 ――では、闇巫女ダークメディスンよ。準備は良いか? 始めるぞ………、!!」


………………………


………………


………


「しかし、いつもの店が予約出来て良かったですね」

「全くだ、何しろ大所帯だからな。普通の店では入りきれん。

 さて、では一先ず乾杯の杯を用意せねばな。えー、お前たち、生者は?」

「何ですかそのこなれた感」

「『無事勇者に倒された記念』打ち上げも今回で4回目だぞ、流石に我輩も学ぶのだ。

 で、どうだ?………なんだ、居ないのか? とすると我輩だけか………。

 すまない店員さん、我輩は赤ワインと、あと生ビールを人数分、」

「「「え?」」」

「む? どうした、バンパイアキング」

「い、いえ、すみません魔王様。『生』と仰ったのでてっきりかと………。生き血にしても良いですか?」

「あぁ、成る程、お前たちとしては確かにそうか。それは我輩も配慮が足らんかった。

 構わん、えっと………この飲み放題メニューの『生き血(男)』で良いか? いや、美女の生き血は無い。良し。

 すまない店員さん、バンパイアたちには生き血に変更してくれ。

 他には? 折角の打ち上げだ、遠慮せず言ってくれ」

「あ、あの魔王様。………おらは生と言ったら、海水なんだども」

「………サハギン………、海水なんてメニューに………え、ある? 嘘だろ水だぞ? いや、別に文句と言うわけではないが………。

 解った、解ったって。

 店員さん、すまないが、サハギンたちには………えー、この生海水(ノースコープタウン産)に変えてくれないか?」

「あの………魔王様」

「………すまないが店員さん、スノーゴーレムに氷。あと、マグマゴーレムにはお湯を。うん、煮えたぎったやつ。他には?」

「ピピピ、マオウサマ」

「あぁうん、お前はもう解ったぞ時計仕掛けの剣士ギアファイター、油か、油だな?」

「ウイスキー、ロックデ」

「呑むのかよそんな強いの?! しかももうそれ生の要素無いよね、じゃあ生じゃない方に手を挙げろよ!!

 あとサキュバスはなんだ?!」

「あのー、魔王さまぁ? ワタシィ、生搾りレモンサワー」

「俺、生搾りサワー」

「ボクは生茶」

「私は」

「オイラは」

「アタクシは」

「もう各自で頼め………」


………………………


………………


………


「魔王様。各自に飲み物行き渡りました。

 ほら、拗ねてないで。開会の挨拶をお願いします」

「ふん。もう各自で勝手にやれば良いではないか………」

「え、良いんですか? じゃあ始めてしまって………」

「喋るよ喋るとも!


 えー、ではお前たち。今回もご苦労だった。勇者に直接やられた者も、えー、イベント関係無いしとスルーされた者も、お疲れ様。

 我輩が400年前、第一回創造神会議で『100年毎に甦り世界の覇権を狙って勇者に倒される魔王』役を引き当ててしまって、今回で4回目だ。うん、本当に大変な運命を背負わされたし背負わせたと思っている。くそ、愉悦神め………敵対者が居れば他の種族は争わなくなる等と抜かしおって………」

「魔王様。手短にお願いします。お湯のお湯割りが冷めます」

「解ったよ! 何でそんなぐいぐい来るんだお前は………。

 えー、とにかく今回も無事に終わった。後片付けや次回への準備もあるが、何しろ10年掛かったからな、ここらでひと息………」

「魔王様」

「なんだ、文句を言うな。もう終わるから」

「いえ、その………。今、10年と仰いました?」

「言ったよ。奴等の冒険は、10年掛かったろう」

「いえ。3年です」

「………え?」

「3年です」

「いやいやいや、何を言うか。奴等、レベル上げやら何かイベントあるかもって村やら町やら足しげく通いおったろう、その間何泊したと思ってるんだ。

 ………おいまさか、我輩の知らん内に、よもや1年が1000日になったとか言うまいな?」

「いえ、ほら、秩序神様のエピローグ、聞きませんでしたか?」

「めんどいからスキップした」

「………魔王様」

「しょうがないだろあいつの話は長過ぎるんだから! 『おめでとう、じゃあまた100年後に』とか言えば済むだろうが!」

「威厳というものが必要なのです魔王様。

 そしてその中で、秩序神様は言ってしまったのです、『3年にも及ぶ戦いの末』って。だから、3年です」

「いやいやいや、そんなの言い間違えただけだろ? 言い直せば済むだろう」

「事前録音だったので………」

「録り直せよ! どう考えてもそっちの方が辻褄合わせ易いだろうが!」

「とにかく、3年です。3年なのです。主催の秩序神様のお言葉なので、それでお願いします。大丈夫です、皆意外に気付かない筈ですから」

「気付くと思うけどなぁ………いくらなんでも。10年が3年だぞ?」

「魔王様」

「解ったよ! そんなに睨むな、全く………。

 えー、では、3年の戦いもこれでめでたく終わりを向かえられ、これもひとえに、」

「手短に」

「くそ………、あーもう解ったよ! お疲れ様! また100年後に!! 乾杯!!」

「「「かんぱーい」」」

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