アラサー女、恋をする。

まりんみい

プロローグ


一葉 芹

いちば せり

それが私の名前だ。


 小さい頃から、やれ芹市場だの、やれ競り市場だの言われ続けほとほと自分の名前が嫌いになった。芹市場ってなんやねん。いっそのこと芹を市場で競ってくれや。今まで両親を何度恨んだことか。私だって、レイカ、とか。エミリ、とか。もっと可愛い名前が良かったわい!


 なんて、履歴書書いたり役所で書類申請したり、ことあるごとに考えていただけであっという間に29歳だ。アラサーだ。いや何の話やねん。


 29歳、来年30歳。その数字が、数字の響きが私を焦らせる。焦らせられて汗が出る。…つまんな。


 高校卒業後、18歳で上京し、Webライターのバイトをしながらこつこつと小説を書いていた。私は小説家になりたい。ファンタジーでも、ラブコメでも、SFでも、何でもいい。とにかく何か話を書いて、食べていきたかった。来年こそは、来年こそはと出版社に小説を投稿し続け、見事に全て残念賞。私の人生残念賞。小説で無念でショー。そんなこんなでまたたく間に10年がすぎた。あ、11年か。


 今は日中に小説を執筆し、夜に水商売でバイトしている。29歳で職なし?29歳で水商売?高卒だし?高校の同級生なんか、みんなアレでしょ?学校で担任してたり。病院で注射打ちまくってたり。あの子なんか某ブランドショップの支店長。って、視野、狭っ。みんなもっと色んなキャリア持ってるっつの。そーいえばアヤコから3人目産まれた~とかLINE来てたな…。出産祝い、何あげようかな。私もほしいな。出産祝い。ってその前にカーレーシ。何年?もう5年はいないよ。5年?うん、5年。こりゃ本格的に焦らないと。

 

だって


もう、なんだから……




 29歳 独身。

 職なし、彼無し、希望なし。

 そんなアラサー女の恋物語。

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