『リラ荘殺人事件(りら荘事件)』ネタバレありレビュー

『リラ荘殺人事件そうさつじんじけん』を読み終えた僕は、例によって谷藤屋たにとうやを訪れた。これもまた例により、読んでいる途中の時期に通りがかると閉まっているくせに、僕が本を読み終えると、それを見計らったかのように店は開いている。次の本を読み終えたら、今度は真夜中に来てやろうかな。


「やあ、いらっしゃい」


 果たして、レジに座っていたのはまたしても鋭一えいいちさんだった。


「タイミングが悪かったね、永城えいじょうくん。またちょうどふうは買い出しに出ているんだよ」


 ぬう。せっかく『リラ荘殺人事件』のことを谷藤さんとゆっくりと話せると思ったのに。


「で、どうだったかな?『リラ荘殺人事件』」


 カウンターに身を乗り出すようにして、鋭一さんは訊いてきた。こうなったら「妹さんと語りたいから、また来ます」とは言えない。覚悟を決めた僕は、


「面白かったです。鋭一さんから聞いていたとおり、とても純度の高い本格でしたね。古典的価値は抜きにしても、現代の読者にも十分通用する内容だと思います。これぞ『ザ・本格』と呼ぶに相応しい傑作だと感じました。特に、犯行現場に置かれるトランプが、ただ単に舞台仕立てや恐怖を煽る小道具じゃない、ある二件の犯行の順番を錯誤させるという、極めて合理的な使い方をされていたのが印象的でした」

「いかにも、現代の作家がやりそうな仕掛けだよね」


 そう言いながら相づちを打つ鋭一さんは、とても嬉しそうだ。こういうところは表情なんかも谷藤さんによく似ていて、やっぱり兄妹なんだなと微笑ましくなる。


「あとですね、僕が、これは! と思ったところが二箇所ありました。それはどちらも、読者の目から犯人であるあまリリスの嫌疑を背ける目的で書かれたテキストなんですけれど、ひとつは確か、第四章に当たる『砒素』の最後の部分で――」

「ああ、あれだね。そう、永城くんの言うとおり、第四章のラスト二行。角川文庫版の『リラ荘殺人事件』でいうと、105ページに当たる部分だね」


 僕の言葉に鋭一さんは即座に同調してきた。ページ数までで言い切った? この人、本の中身が全て頭に入っているとでもいうのだろうか? 僕が心の中で驚いていると、鋭一さんは続けて、


「こう書かれていたんだよね。『のちに彼女が殺された際に(以下略)』って。ここで出てくる代名詞である『彼女』は、文脈から登場人物のひとりである尼リリスのことを指しているんだけど、その尼リリスがこの先の展開で殺されてしまうぞ、と大胆にもかなり前の段階で宣言してしまっているんだよね」

「そうそう、それです。で、一連の連続殺人の犯人は、まさにその尼リリスじゃないですか。犯人を推理しながら読んでいる読者も、こんなことを書かれたら、さすがに尼リリスのことは容疑者から外してしまいますよね」

「そうなんだ。実際、尼リリスは第二の犯人である日高鉄子ひだかてつこの手によって殺されてしまうんだけど、この記述が出てくる段階では、殺人がリリスから鉄子に経由される展開になるとは夢にも思わないわけだからね。作中の二条義房にじょうよしふさと同じく、開示された手掛かりから『尼リリスが犯人なのではないか』と推理した読者がいたとしても、この記述があったことを思い出して、あるいは、そこまで憶えていなくても、実際にリリスの死が明らかになった時点で、彼女が犯人だという考えはすっ飛んでしまうだろうね」

「テキストを読み込んだ読者ほど騙されてしまう。メタ視点にいない、作中人物のほうが真相に迫る可能性が高いという、奇妙な仕掛けですね。巧妙な記述でしたよ。で、同じ目的で書かれた二つ目の記述が――」

「58ページから始まる、尼リリス主観の場面だね」


 またしても鋭一さんは、そらで該当する箇所のページを口にした。どうなってるんだ? この人。僕は呆れ――いや、驚いたが、そんな感情はおくびにも出さずに、


「そうです。夜中に目を覚ましてトイレに行った尼リリスが、その帰りに食堂で物音を聞いて、そこに何者かが潜んでいることを察知するという場面です。のちにそれは、日高鉄子がトランプのハートの3とクラブのジャックを抜き取っている現場であったことが判明するんですけれど、これは本来一連の連続殺人とは全く無関係の出来事なんですよね。鉄子はただ、タバコでトランプを焦がしてしまったため、同じものを購入するためのサンプルとして自分が焦がした二枚のカードを抜き取っていただけだった。鉄子がこそこそしていたのは、カード抜き取りの現場を尼リリスに目撃されると、口うるさい彼女のこと、色々と言われてやっかいなことになるのは明らかだと見越していたからでしかなかった。でも、この場面の視点を尼リリスに固定することで、鉄子の存在が、身を潜めてカードの抜き取りを行っている正体不明な人物、ということになってしまい、すなわち犯人と同一視されてしまう。その犯人とおぼしき人物と同じ場所にいたということで、ここでも尼リリスの嫌疑は晴れてしまうんですよね。

 しかも、もしこれが彼女の証言による記述だけであったら、目ざとい読者は『虚偽の証言をしているのではないか?』と疑ってしまうかもしれませんが、この場面は尼リリスの視点に立ちながらの三人称、いわゆる〈視点固定による三人称〉となっていますから、れっきとした〈地の文〉なんですよね。だから、ミステリの絶対法則に従って、地の文であるこの場面が虚偽のものであるはずはない。尼リリスが深夜の食堂で謎の人物の気配を感じたことは、確かに起きた事実だと確定して、彼女が疑われる可能性は一気に下がるという仕掛けなんですよね」

「凄いよ。さすがだね永城くん。目の付けどころ、読みどころがもう、立派なミステリファンのそれだね」


 いやぁ、そうですか、と僕は少し照れてしまう。くそぅ。その言葉、谷藤さんの口から言ってもらいたかったぞ。


「ところで永城くん、この『リラ荘殺人事件』を読んで、ひとつおかしなところに気づかなかったかな?」

「えっ? おかしなところ? そんなのありましたか?」僕は首をひねって、「うーん……どこだろう?」

「すぐに気がつかないのも無理はないね。決してストーリーに矛盾をはらむ致命的なエラーじゃないし、数ある手がかりの中のひとつでしかないから。まあ、実はこれ、俺が気づいたわけじゃなくて、永城くんが買ってくれた角川文庫版じゃなく、『りら荘事件』のタイトルで出ている創元推理文庫版の解説でミステリ評論家の佳多山大地かたやまだいちが指摘したことなんだけど」

「なんですか?」

「第一の被害者――実際は事故死だったわけだけれども――である炭焼きの死体のそばに置かれていた、尼リリスのレインコートの懐に〈緑色のペン〉が入っていたことなんだ」

「ああ、確かにありましたね。そのペンがあったことが、リラ荘管理人のお花さんが殺されてしまう原因になったんですよね」

「そう。時間軸で整理すると、こういうことになるね。


午前9時頃

 のちの聴取で、尼リリスがこの時間帯頃にレインコートを盗まれたと証言(虚偽)


午前11時

 尼リリスがお花さんにペンを貸す。


お昼過ぎ

 散歩に出かけた尼リリスが川べりに炭焼きの死体を発見し、これを第一の殺人に見せかけようとリラ荘に引き返して、自分のレインコートを持ち出す。


 尼リリス自身はレインコートが午前の早い段階でなくなっていた、つまり炭焼きに盗まれたのだと主張したんだけど、お花さんは、それ移行に自分が借りたはずのペンがそのレインコートに入っていたため、この矛盾に気がついて尼リリスを詰問しようとして殺されてしまったんだ」

「ええ、そういう流れでした。何か問題でも?」

「うん。この流れによると、尼リリスはお花さんにペンを貸したあと、どういうわけか、、ということになるよね」

「……確かに、言われてみれば変ですね。普通、ペンの保管場所としてレインコートの懐なんて選ばないですよね。普通は筆入れとかにしまいますよね。わざわざ入れたとしか思えない」

「そうなんだ。尼リリスは、わざわざペンを犯行現場に持ち込んだことになる。でも、指摘した佳多山大地自身が、同じ解説内でその問題に回答を出してはいるんだ」

「どんなものですか?」

「曰く、尼リリスは殺人を計画しながらも心の深層では、想い人である牧数人まきかずんどに自分の犯行を見破ってほしい、犯行を止めてほしいと願っていて、その想いがペンをレインコートに入れるという、矛盾だった行動をさせてしまった、というんだ。『どうか、この矛盾を突いて、犯人が私だと気づいてくれ』ということだね」

「屈折した愛情表現ですね。ロマンチックだなあ」

「うん。これはこれとして優れた回答だけれど、当然のことながら、これが真実とは限らないよね」

「えっ? そういう言い方をするということは、まさか、鋭一さん、別回答を持っているんですか?」

「実はそうなんだ。聞きたい?」


 ここで、いえ、いいです。と言う人間なんているわけないだろ! 何考えてるんだ、この人は! 僕は呆れ――湧き上がった感情を抑え込みながら、


「はい。ぜひ聞かせて下さい!」

「よし、わかった」と鋭一さんは嬉しそうな表情になって(絶対話したくてたまらなかっただろ!)、「俺はね、尼リリスの行動は、佳多山大地説のような情緒的な理由によるものじゃなかったのではないかと考えている。あのペンは、極めて実質的な目的に使用するため、レインコートに入れられたんだよ」

「そ、それは?」

「その前に、永城くん、この事件で犯人は、どうして死体のそばにトランプのカードを置くという行為を繰り返したんだろう」

「え? 決まっているじゃないですか。第二と第三の犯行の順序を誤認させるためです。犯人、つまり尼リリスは、二人目の被害者――実質第一の被害者だったわけですけれど――である橘秋夫たちばなあきおの死体のそばに〈スペードの3〉を、三人目の被害者である松平紗絽女まつだいらさろめの死体のそばに〈スペードの2〉を置き、死体の発見順序も〈2〉から〈3〉とさせることによって、〈スペードの3〉の犯行におけるアリバイを確保したんです」

「まったくそのとおり。犯人がこういった、死体のそばに特有の目印を置くという犯行は、他のミステリでも描かれているテーマだけれど、この手の犯行を重ねる場合、犯人には気をつけなければならないことがあるんだ。それが何か、永城くんは分かるかい?」

「気をつけなければならないこと……? えーと……」


 僕は頭をひねるが何も思い浮かばない。


「降参です」


 と白旗を上げると、鋭一さんは、


「それはね、便乗犯の出現なんだ」

「便乗犯?」

「そう。一連の犯行の真似をして、同じ印を自分が殺した死体のそばに置くことで、その罪をちゃっかり真犯人になすりつけてしまおうという人間の出現さ」

「なるほど。だから、便乗犯」

「そう。そういう便乗犯を防止するためには、どういった対策が効果的か」

「それは……便乗できなくしてしまえばいい。例えば、現場に残す〈印〉を真犯人以外には真似のできないものにするとか、ですか?」

「そのとおり。本来であれば尼リリスは、死体のそばに残すカードに、その〈便乗防止〉を施そうとしていたんじゃないかな。ペンはその目的のために持っていった」

「あっ! もしかして、カードに何かを書き加える?」

「そうなんだ。もしかしたら、尼リリスは現場に残すカードに、何か特有のマークなりを書き込むことで、便乗、模倣犯の発生を防ごうと考えていたんじゃないかな。緑色のインクのペンなんて、そう滅多にあるものじゃないからね」

「でも、実際作中ではカードには何も手を加えられていませんでしたよね」

「うん。土壇場になって尼リリスは、カードへの書き込みをやめた。正確には断念したんだと思う」

「どうしてですか?」

「死亡時刻の問題だよ。実際に尼リリスが炭焼きの死体のそばにレインコートとカードを置く工作をしたのは、午後になってからだ。その日は朝から雨が降っていたけれど、その時分には止んでいた」

「そうですね。午後になって雨が止んだからこそ、尼リリスは散歩に出かけて、そこで炭焼きの転落死体を発見したんですから」

「でも、炭焼きが実際に転落したのは、午前のまだ雨が降っている途中のことだ。午前中に事故死した炭焼きを他殺に見せかけることで、その死亡推定時刻には間違いなくリラ荘にいた自分のアリバイを確立できる。つまり、第一の被害者の死亡時刻に完璧なアリバイを持ち、まず嫌疑から逃れられるからこそ、このトリックを仕掛ける意義が出てくるんだからね」

「はい」

「ということはだよ、尼リリスが描いた事件の構図は次のようなものになる。犯人は午前中の雨がまだ降っている時間に炭焼きを突き落として転落死させて、死体のそばにカードを置いて犯行声明とした、と。当然、警察の捜査でもそのような見解になることを期待していて、実際にそうなったわけだ。そこまで考えたとき、尼リリスはペンでカードへの書き込みを断念せざるを得なかった。なぜか。恐らく、彼女が持っていたペンは、だったんじゃないかな?」

「水性インクだと書き込みが出来ない? どういう……あっ!」

「永城くん、気付いたみたいだね」

「はい。ですね! 炭焼きが殺された時刻には雨が降っていた。その時間にカードに何かを書き込んで死体のそばに置いていったなら、! でも、実際に尼リリスがカードを置いた時間には、すでに雨は上がっていた!」

「そうなんだ。雨に打たれたところで、インクが全て流れ落ちてしまうとは限らないけれど、それならさらにやっかいなことになるからね。犯行時刻から雨が上がるまでの間、カードに書かれたインクがどの程度、どんな具合で流れ落ちるのか。そればかりは、実際に雨に打たせてみないと再現のしようがない。雨が上がっているときには絶対に再現不可能だ。川の水に浸けたって、雨に打たれたのとは明らかに違う不自然なインクの流れ方になってしまうだろうしね」

「でも、鋭一さん、トランプが紙製だったら、インクは即素材に滲んでしまうため、川に浸しただけでも雨に打たれた状態はかなり再現できるかもしれません」

「さすが永城くん、いいところを突いてくるね。でもね、『リラ荘殺人事件』本文には、こんな記述があるんだ。50ページ5行目だよ。『カードは、汚れれば洗うこともできるようにビニールがひいてある』って」

「ビニールコートされたカードだった! それじゃあ、水性インクなんて簡単に流れてしまう。といって、完全に流れ落ちないかもしれない。どの程度インクが流れてしまうかなんて、実際にやってみなければ分かりようがありませんね!」

「だろ。尼リリスはカードに書き込みをする目的でペンを現場に持っていった。でも、犯行時には雨が降っていたはずだということに土壇場で気付いたため、カードへの工作は断念せざるを得なかった。まあ、このことで結局、カードは市販の状態と同じまま使われることになって、同じものを入手すれば誰にでも便乗を可能とさせてしまい、最後、尼リリス自身が日高鉄子の手によって殺されてしまう土台を築くことになってしまった。これが真実なら、ちょっと皮肉な結果だよね」

「さらに、最後の最後には名探偵星影龍三ほしかげりゅうぞうが鉄子に対して仕掛けた罠としても〈便乗〉されることになってしまった、と」


 僕は深いため息をついた。この谷藤鋭一、名前のとおり、実に鋭い推理をする男だ。この前、谷藤さんが披露した『五十円玉二十枚の謎』といい、この兄妹、やはり似たもの同士だ。


「あ、最後に、鋭一さん、尼リリスは、ペンをどうしてレインコートのポケットになんて入れて現場まで持っていったんでしょう? 自分の着ている服の懐に入れていけば、結果現場に残してしまうこともなかったはずなのに」

「それも俺の推測になるけど、尼リリスが着ていた服は、デザイン性を重視した、ポケットの付いていないものだったんじゃないかな。女性もののおしゃれな服って、そういうの多いじゃない。作中冒頭でも、尼リリスが所属している音楽学部の学生は『上等の服装をしている』と書かれているからね。ポケットがあったとしても、ペンみたいな細長いものを入れるには適していなかったのかもしれない。だから、使うことのなかったペンを持ち帰ることもしないで、コートのポケットに入れて残したままでいいや。と考えたのかもね。そのときは現場の工作のことで頭がいっぱいで、昼前にそのペンをお花さんに貸していたことなんて、完全に忘れてしまっていたんだろうね。それさえ思い出していたら、彼女はペンを現場に残すなんていう失態、絶対に犯さなかっただろうし、結果、お花さんもペンについての疑惑は持たず、命を落とすこともなかっただろうね」

「……なるほど」

「ちなみに、さっき言った服装に関する記述が載っているのは、9ページの終わりから3行目だよ」

「そ、そうですか……」


 もう、この場で鋭一さんが『リラ荘殺人事件』を一言一句正確にで語り初めても驚かない。

 ふう。結構話したな。これまで僕が谷藤屋にいた時間では最長記録かも。その記録の相手が、谷藤さんではなく鋭一さんだとは……。僕が思わず背後にある出入り口をチラ見すると、


「風なら、もうそろそろ帰ってくるんじゃないかな」

「なっ――!」


 心を読まれたのか? 危険だ。この男は危険だ……。


「ねえ、永城くん」

「――うわ!」


 鋭一さん、カウンターの向こうから出てきて、僕の横にぴたりとついた。


「な、何ですか?」

「さっき俺が言った『ペンの推理』なんだけど」

「は、はい」

「風に披露してみたら?」

「えっ?」

「自分の推理だって言ってさ。あいつ、永城くんのことを尊敬すると思うよ」

「そ、それは……」


 と、そこへ、ドアが開く音がして、


「ただいまー……あ、永城さん!」


 谷藤さんが姿を見せた。


「おかえり、風」と鋭一さんは僕から離れて、「ちょうどいいところに帰ってきたね。実はね、風のいない間に、永城くんには『リラ荘殺人事件』を読んでもらっていたんだ」

「えっ? 本当ですか?」

「う、うん」


 僕は頷く。すると谷藤さん、


「私、あの作品大好きなんです! ひどい、鋭一! 私のいない間に『リラ荘殺人事件』を勧めるなんて! あれは私のとっておきだったのに……」

「まあまあ……」


 と鋭一さんは谷藤さんをなだめながら、僕の背中をぽん、と押した。行け、という合図なのか? しかし……。僕が少しの間、無言でいると、谷藤さんが、


「鋭一、どうせまた、を永城さんに聞かせて得意になってたんでしょ」


 なに? 鋭一さんが何も答えないでいると、さらに谷藤さんは、


「犯人がどうしてレインコートにペンを入れていたのか。昔、私や穂愛ほあいと散々討論して出した答えじゃない。ひとりじめはズルいわよ!」


 な、なんだってー! 僕があの推理を自説と偽って披露していたら……。まさか、鋭一さん、僕のことを試したのか? 見ると、その鋭一さんは屈託のない笑顔を浮かべ、にこにこしている。やはり、この男は危険だ……。


「あっ! 永城さん!」


 谷藤さんの声を背中に受けながら、僕はドアを飛び出したのだった。

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