新世代が贈る次代の本格『ノッキンオン・ロックドドア』青崎有吾 著
『ノッキンオン・ロックドドア』プレビュー
「
開店していた
「今回は、これを読んでみてください。
「おお、何だかお洒落なタイトルですね!」
~あらすじ~
不可能(HOW)専門の
画家が密室のアトリエで殺害された。しかも、アトリエの中には、画家が描いた六枚の風景画が額縁から外されて床に放られており、そのうちの一枚は真っ赤な絵の具で塗りつぶされていたのだった。密室|(HOW)と塗りつぶされた絵画|(WHY)の謎を、御殿場と片無は解き明かすことが出来るか?
「この作品は短編集なので、ご紹介したあらすじは、第一話『ノッキンオン・ロックドドア』のものです。全部で七話収録されていますよ」
「短編集を紹介してもらうのは初めてですね」
「そうですね。じっくりと読ませる長編もいいですけれど、限られた紙幅で謎を鮮やかに解決する短編にこそ、ミステリの醍醐味はある、と考えている人も多いですよ」
「なるほど。短編なら気軽に読めますしね」
「この作品の作者である青崎有吾は、『
「二十歳でミステリを書いて、しかも賞コンテストで受賞するとは凄いですね! どんな作品を書く作家なんですか?」
「それはもう、バリバリのド本格ですね。今どき珍しい」
「そうなんですか。じゃあ、この『ノッキンオン・ロックドドア』も?」
「はい。七編全てに魅力的な謎が提示され、それが見事に解決されます。清潔感が漂うくらいの美しい論理が炸裂する短編集ですね。しかもですね、登場キャラクターが個性的で、キャラクター小説としての楽しみ方もできるんです。ミステリでキャラクターで、しかも七本も入っている。こんなにお得な本は、なかなかないですよ」
「キャラクターって、探偵役の二人ですね」
「ええ。御殿場と片無の二人はもちろん、捜査一課の
「何だか皆さん、名前も個性的ですね」
「作者が若いから、こういったネーミングセンスも絶妙なものがありますね。文体も軽快で、台詞も気が利いている。若い読者、それも若い女性に人気が出ると思いますよ、このシリーズは」
「若い女性、ですか」
「はい。永城さんも、お友達の女の子にお勧めしてみてください」
「えっ?」
「はい?」
僕と谷藤さんは、黙ったまましばし見つめ合った。谷藤さん、眼鏡の向こうで大きな目をぱちぱちさせている。
「もしかして、永城さん」
「な、何ですか……?」
「女性のお友達、いらっしゃらないんですか?」
「なっ! そっ……そんなことありませんよ! 大学に女友達くらい、大勢――いや、何人かいますよ!」
「そうですか……女の子のお友達、いらっしゃるんですか……」
そう言うと谷藤さん、声のトーンを落として目を伏せた。
「えっ? えっ? い、いえ、いるといってもですね……」
「お買い上げいただけますか?」
がばり、と谷藤さん、一転、顔を上げてきた。
「は、はいっ!」
反射的に僕は返事をしてしまう。「では」と谷藤さん、笑顔になってレジへ向かい、いつもの手さばきでカバーをかける。代金と引き替えに僕は本を受け取った。手が少し震えていたかもしれない。最近ペースを乱されっぱなしだぞ。しっかりしろ、永城
笑顔で手を振る谷藤さんに手を振り返し、店を出た。僕のほうは笑顔だったかは知らない。引きつった顔だったのではないかと思う。多分……。
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