第48話

 


 ロイド歴三八八八年一〇月下旬


 俺はニシバタケ家を討伐する為にイゼに出兵を決定した。

 俺がロクロウ殿の妹姫を正室に迎える以上、ロクロウ殿を支援するのは正当化されるし、寧ろ支援しなければ不義理のそしりを受けるだろう。

 つまり残念なことにニシバタケは滅ぼす方向性で家内が纏まった。カモン家とホウオウ家がロクロウ殿の援軍として合流した時点で軍を引かせればまだ救いはあったが、ニシバタケとしても面子にかけて簡単には軍を引くことはないだろう。


「兄上! ドウジマルもお連れ下さい!」


 む、ドウジマルが従軍したいという。流石に一一歳のドウジマルを戦場に連れて行くのは憚られるのだが……。


「兄様、ソ「ダメだ!」って何故ですか!?」

「ソウコには頼みたいことがあるのだ!」

「その頼みとはなんですか!?」


 ドウジマルが従軍したいと言い出すものだからソウコが便乗してきたのでキッパリと断った。


「ソウコには嘉東城に赴きアズ姫と生まれたばかりのタケワカを守って欲しいのだ。この様なことを頼めるのはソウコを置いて他にはいない!」

「……分かりました。姉君とタケワカはこのソウコがしっかりお守り致します!」


 何とか丸め込めた。問題はドウジマルだが、元服前なのでと却下するのは簡単だがそれで良いのだろうか?


「ドウジマルは元服前だ。機会は幾らでもある」

「兄上が元服されたのは一〇歳の時でした! 前線に出せとは言いません、戦場の空気を感じたいのです。お願いです、兄上!」

「……分かった。ドウジマルの元服を執り行う!」

「兄上!」


 ドウジマルもいつかは戦場に出るだろう。だったら俺が保護している内に戦場の空気を感じさせる方が俺も安心できるという物だ。

 キシンやコウちゃんには後から謝りに行くから許してねと手紙を出しておこう。俺が叱られれば済む話だ。


「良いのか、キシン殿は来年元服といっておったでおじゃるぞ」

「アズマの父上と母上には手紙を出しておきます。後日、直接謝りに出向きます」

「そうでおじゃるか」

「義父殿にはドウジマルの烏帽子親となって頂きたい。お願いできますか?」

「麿でよければ喜んで引き受けるでおじゃる」

「大納言様、有難う御座います!」


 こうしてドウジマルの元服を早急に執り行うことになった。

 カモン家の重臣が見守る中、ドウジマルは元服し名を改めた。


「これからはシュテンと名乗るが良い! また、カモンを名乗ることを許す! 励めよ!」

「有難う御座います! シュテン・カモン、これより兄上に忠誠を尽し粉骨砕身カモン家の為に働きまする!」


 幼名がドウジマルなので酒呑童子にちなみシュテンとした。

 酒呑童子は多くの鬼を従えていたそうだからドウジマルにも人の上に立つ男になって欲しいと思いシュテンと名付けることにしたのだ。

 鬼だから討伐されてしまうとか言われそうだが、ハッキリ言って俺は酒呑童子は鬼ではなく遭難した南蛮人あたりだと思っているので体が大きいシュテンのイメージにも合うだろう。


 そして元服しシュテン・カモンを名乗ったドウジマルに王から正六位上左近将監さこんしょうげんが送られた。実を言うとこの官位官職はフジカネの正七位上右少史よりも上のものになる。

 これはアズマを名乗るかカモンを名乗るかの差だと義父殿は言うがこのことを知ったフジカネがどう思うか、ちょっと心配だ。






 ロイド歴三八八八年一〇月下旬

 シュテン・左近将監・カモン


「若……」

「ゲンブ、キヨズミ、私は兄上のように成れないが、兄上の役に立ちたいのだ! 兄上の治める国々を見よ、誰もが笑って暮らしている。私はそんな国を御造りになった兄上のお役に立ちたいのだ!」

「……若の仰ることは理解できます! されど今でなくても宜しいと存じます」

「左様、ゲンブ殿の言う通りで御座る。来年には元服とお館様も申されておりました。今元服するはお館様に背く行為となりましょう」


 アズマ家から守役として付いてきたゲンブ・ダイモンジとキヨズミ・アダカの二人は今回の元服に反対だった。

 父上が来年の元服をと言っていたのは確かなので二人の言うことも分かるが、私は少しでも早く兄上の役に立ちたいのだ。

 今回の従軍では私が役立つことなどないかも知れないが、戦場の空気に触れることで何かを感じられればと思っている。そして少しで良い、ほんの僅かでも先に進めればそれだけで私は嬉しいのだ。


 元服して直ぐに兵を率いた兄上に従軍した。ソウコ姉上は嘉東城に向かった。

 大納言フダイ・カモン様は京の都に留まり宮廷工作をし、内大臣ホウオウ様はダイワ方面の指揮を執られるという。

 京の都ではイブキ殿が睨みを利かせているし、アサクマ家はもう直ぐ冬なので出て来る可能性は低いらしいが一応キザエモン殿と北アワウミの諸将が警戒に当たっている。


「どうした、不安か?」

「いえ、やっとここまで来たのだ、と思っていたのです。今すぐは兄上の役に立てないと思いますが、将来は必ず役立って見せます!」

「頼もしいな。……だが一つだけ言っておくことがある」

「なんでしょう?」

「私より先に死ぬことは許さん! 例え死地にあっても決して諦めず私や父上、そして母上の元に戻ってくるのだ、良いな!?」

「……はい!」


 兄上はあまりこの出兵に乗り気ではない。見ていて分かるほどに兄上は嫌そうだ。

 だけど騒乱を起こすニシバタケやアサクマは許せないのか兄上は出兵を決断された。







 ロイド歴三八八八年一一月上旬


 此度の戦では元服したシュテンの同道を許している。

 だからではないが新兵器を投入することにした。


 先ず一つ目はお馴染みの鉄砲だ。

 これまでの鉄砲は火縄銃を改良した肩当て型のライフリングが施されていた鉄砲だったが、今回の戦には撃鉄式の銃に変更している。

 これにより銃弾も薬莢型に変更しており雨の影響を受けにくくなっているし、弾込めの時間も大幅に削減できている。

 カモン家が鉄砲を使った戦をするのは既に他国に知れ渡っているので竹を重ねた竹盾の準備が進んでいるという情報を得ているので竹盾を貫通させる威力と弾幕で敵を圧倒する予定だ。

 そしてこの改造鉄砲であるライフルを使っての狙撃によって長射程からの一方的な攻撃を行う。


 2つ目はバリスタだ。簡単にいえばデカいボウガンだ。その大きさは直径一〇センチメートルの丸太の先に三角錐の鏃を装着して射出するだけの簡単な構造だけど、ここで一ひねりしているのが俺の爆破大弩だ。

 爆破大弩とは鏃の後ろに火薬を装着して打ち出すのだが、この火薬には導火線が付いており導火線に火を着けて打ち出すので着弾した頃に爆発するのだ。

 この爆破大弩は攻城戦でその威力を遺憾なく発揮するだろう。城門に打ち込み破壊したり、抵抗が激しい郭内に打ち込み敵を殲滅したり、攻城戦でなくても射程が長いので遠距離から敵の武将を狙って攻撃を仕掛けたりもできる。

 大砲も考えたが大砲は重たいので行軍の足かせになると思い地上では使わないつもりだ。だからこの爆破大弩は組み立て式になっており行軍時に馬に背負わせて簡単に移動ができるのが特徴だ。


 3つ目はヘル・シップの戦線投入だ。

 今までも日本海側でヘル・シップを中核とした艦隊が貿易の為に大陸に渡航したり、攻撃されれば反撃し海賊たちを殲滅していたが、本格的に戦争に投入するのは今回が初めてだ。

 今回組織した太平洋艦隊によりニシバタケの港を潰して回ったり、ニシバタケ領の港を占領したり、ニシバタケ家の船や御用商人の船を拿捕すると言うものだ。

 そしてニシバタケと関係のない他家の艦隊を攻撃しないように事前に境商人を通じて警告を出している。これでもニシバタケ領の港を使うのであればそれはその艦隊を指揮している者の責任であり、一応は調べてニシバタケ家と関係ない艦隊であればある程度見逃すことにしているけど、戦闘時の被害について一切保障する気はない。


 

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