第32話

 


実史の武将や公家、お姫様を登場させようと思います。

皆様はどの様な人物を登場させたいでしょうか?

そこで2017年6月末日まで本話にコメント頂けた人物を登場させたいと思います。

要望のあった人物を登場させるかは作者の方で決定させて頂きます。

登場人物が実史とは違う!ヽ( )`ε´( )ノ

というクレームは受け付けませんが宜しかったらコメント下さい。m(_ _"m)




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 ロイド歴三八八六年五月


 雪も融けて木々の青さが目に優しい。

 京の都の復興事業も順調でカモンの義父殿からは人が戻ってきており日々活気を戻しつつあると手紙が来ているし、ホウオウの義父殿からはニバの国に封じ込めた十仕家が重税を課し民を苦しめ王も心を痛めていると手紙が来た。

 ニバの国の十仕家は領地を手放して久しいので領地を管理するノウハウがないのだ。しかも官位官職と気位だけは高いので民から搾取してもそれが当然と考えて居る。困ったものだ。

 こういった害虫は早々に潰すに限るが今は見守るしかない。


 キョウサの海を得た俺は余りある財力を投入してキョウサとアワウミを繋げるキョウサ街道の拡張整備を急ピッチで進めると共にキョウサに新しく大規模な港を築いている。

 この港の整備には地元だけではなく全国の商人に出資を打診しており、ミズホ屋とイズミ屋をはじめ複数の商人が出資をしてくれた。勿論、出資を断ってくる商人も多かったが、そういった商人は先見の明が無いと無理強いはしない。


 そんな開発三昧の日々をおくっている俺の前には元冒険者の奴隷六人が雁首そろえている。


「ソナタらに役目を与える。回答次第で奴隷の身分からも解放をしよう」

「俺たちに何をさせるんだ?」


 ダンベエが奴隷たちに話しかけると、奴隷たちのリーダー格であるソウエモンが内容の確認をする。他の奴隷たちは話の趨勢を伺っているようだ。


「何、簡単な話だ。ソナタらには後進の育成をして貰いたいのだ」

「後進の育成?」


 怪訝な顔をする6人の奴隷たち。


「我がカモン家の領内には孤児や奴隷にされた子供たちを引き取り養育を施している施設がある。その施設でソウエモンであれば剣を、ロクザであれば槍を子供たちに教えてやって欲しいのだ」


 俺は単刀直入に奴隷たちに役目の話をする。


「俺たちに奴隷兵を鍛えろと言うことだな?」


 ソウエモンは俺にも敬語を使わないのでダンベエや他の家臣たちはそれが気に入らない。しかし俺は元冒険者だからと言葉使いなど大目に見てやっている。


「少し違うな」

「違うだと?」

「鍛えるのはそれを望む子供だけだけだ。子供たちが望まぬのであればその必要はない。それに奴隷兵など面白くない」

「面白くないって……」


 奴隷兵を組織するのは簡単だ。だが、人を人として扱わぬ政治は腐っていると俺は思う。自由に職を選び自分の才覚で成り上がるのが良いのだ。俺のように金に執着し、金を稼ぐ為に金を使うから楽しいのだ。だから死んだ目の奴隷兵など俺は面白くない。


「俺は貴族の家に生まれたから今の地位にいるわけではない。勿論、親の地位は子にとって将来を決める大きな要素ではあるが、少なくとも俺は自分の才覚があって今の自分が居ると思っている」

「……」

「自分の才覚を自覚させる為に親がない子供を養育するのだ。一五歳になれば施設から出て行くことになる。その時に少しでも役立つように子供たちには最低限の教育を施している。その一環として希望者に剣術を教えているし、今は魔法使いが居ないので難しいがフウコが教えてくれれば魔法使いも育つ可能性はあるだろう」

「一五歳になれば奴隷兵とするのではないのか?」

「兵士になりたと希望すれば考えるが、基本は一五歳で施設を出る時には奴隷から解放することになる」

「……」


 俺の話が信じられないと言う目で俺を見る奴隷たち。


「一五歳になり私設を出た者はこれまでに一〇三人居るが、その内一二人はカモン家の経済衆や兵糧方で登用しておるし、三三人は馬廻り組、矢組、目付組として登用している。他には家臣の養子となった者や鍛冶師や商人などになっておる者もいるが八人ほど行方知れずだ」


 ゼンジが子供たちの就職先を奴隷たちに聞かせると奴隷たちは目を大きく開き驚いているようだ。

 普通は孤児や奴隷の子が文官になることはない。そういった子供は文字の読み書きや算術ができないからだ。なのに文官として一二人も登用されているのだから無理もない。

 それに馬廻り組や矢組は兎も角、目付組はカモン家の警察や検察的な役割を担っている組織であり、その目付組にも登用されていると驚いているのだろう。

 それに子がいない家臣の家に養子として入れてもいるのでカモン家で登用は文官、武官の合計四五人よりも多くはなるが、全て奴隷ではない。


「その子供たちの教育係となれば俺たちは奴隷から解放されるのか?」

「そうだ」

「奴隷から解放されたら俺たちが逃げると思わないのか?」

「逃げたくば逃げれば良い」

「本気かよ?」

「3日後に回答が欲しい。良く考えてくれ」


 逃げてどうする?今のカモン家はタダの十仕家ではないのだ、家柄、兵力、そして何より資金力のあるカモン家から逃げ切れると思うのであれば逃げてみれば良い。止めはしないが、逃げた後は奴隷の方がマシだったと思えるように追い詰めるだけだ。俺は潰す時は潰す。妥協はしないぞ。


「いや、俺はその役目を受ける。お前たちは良く考えて回答すればよい」

「いいえ、私もその役目をお受けします」


 ソウエモンとフウコが教育係を引き受けてくれた。他の4人は少し迷っていたが4人もその場で了承してくれた。


 そもそも彼らを教育係にするという案はキザエモンからの提案だった。子供たちの数が既に四千人を超えてしまったので人手が足りないのだ。武家の人間は気位が高いので孤児や奴隷の子供たちの教育係をやりたがらないし、無理やりやらせても良いことはない。

 だから平民だった彼ら六人にその役を頼むことにした。だが、彼らが嫌々するのであれば教育係などさせたくはないので命令ではなく頼むことにしたのだ。


 数日後、彼らは奴隷から解放され豊新城へ向かった。彼らにはカモン家の家臣としたが奴隷となった経緯も勘案し知行ではなく金で扶持を与えることにした。彼らが冒険者をしていた頃に比べれば遥に少ない扶持金だが一般兵よりは多い。






 ロイド歴三八八六年八月


 キョウサ街道の拡張工事は予定よりも早く完了した。新しい港も完成間近で順調だ。京の都も以前の賑わいを取り戻しつつあり王も満足されていると両義父殿から手紙が来ている。


 ミナミ家討伐についてはアサクマ家とニシバタケ家が当てにできないと業を煮やした王はニバの国に入ったナカトミ家、オモテツジ家、ツキノコウジ家、ヒノコウジ家の十仕家四家にミナミ家討伐の勅令が発せられたのだ。そして共にホウオウ家とカモン家には四家を支援するように御内書が発せられた。

 御内書と言うのは正式な勅令ではないが王がこうして欲しいと言っている的なお手紙なのであまり拘束力はない。これが勅令になれば正式な王の命令なので従わなければ最悪は逆賊として扱われる。


 勅令に顔を青くしたのはニバの四家だ。ニバの国を領有したとは言え四家で一ヶ国を領有している自分たちと三ヶ国を領有しているミナミ家では国力が違い過ぎるからだ。

 ホウオウ家とカモン家に支援の御内書が発せられているとは言え支援などという曖昧なものをあてにはできないし、ミナミ家に当たるのはニバの四家なのだ。


「そうか、勅令が下りたか」

「はい、四家は上を下への大騒ぎでしょう」


 シゲアキがニヤリと嫌らしく口角を上げる。


「うむ。して、どの家が泣きついてくると考えるか?」

「恐らくはヒノコウジ家だと思われます。彼の家には殿の従姉姫が輿入れされております故」


 コウベエが言うようにカモンの義父殿の姉(コウちゃんの姉)が同じ十仕家のコウブ家に嫁いでおり、その伯母の娘がヒノコウジ家に嫁いでいる。十仕家などどこで血が繋がっているか分からぬが、流石に従姉の婿であるキミオキ・ヒノコウジが泣きついて来れば無視するわけには行かない。


「他の家は?」

「ヒノコウジが当家に接触したと分かれば恥も外聞もなくすり寄って来ましょう」

「兵はどれほど集められるか?」

「は、キョウサの新港の普請から一万を割くとしまして七万は」

「新港はそのままとする。六万で足りよう?」

「ミナミとてイシキの轍を踏みとうは無いでしょう。全ての財を投げうって最低でも四万は集めましょう」

「ふむ、勝を確実にするならばやや少ないか?」

「我らもそのように考えます」


 シゲアキとコウベエが交互に応える。こいつら良いコンビだ。

 ミナミ家の四万に対し、俺のカモン家は六万、ニバの四家が石高から考えると八千程度だから七万に届かないし、ニバの四家は数に入れない方が良いだろうな。


「アズマの父上に援軍を頼むのは?」

「近頃ビハリの国との国境がキナ臭く多くは望めないでしょう」


 ちっ、ビハリも面倒な時に動き出しやがって。


「ならば新たに傭兵を雇うしかあるまい」

「ではその様に手配をしましょう。数は二万ほどで宜しいかと」

「うむ、それで良い」


 戦争は金が掛かる。しかも今回の戦争はカモン家がメインではなく他の十仕家がメインだ。できればセイレンの国とセツの国は押さえておきたいが、あまり欲をだすと商売と違って王家をはじめ十仕家や他の大名が俺を警戒することになる。警戒だけなら良いが、反カモン包囲網なんて築かれると面倒だ。

 だから四家にできるだけ大きな恩を売りつけてやろう。

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