4日目―ディラくんの誕生日プレゼントは―
「う~ん……」
かわいい小鳥のさえずりがピヨピヨと聞こえる朝の中
少年は唸りを上げながら早くも目を覚ました
コンコン
それと同時に少年の
ディラの部屋にノック音が響く
「ディラくん、朝で――」
「起きてるよ」
朝7時
ディラは目覚まし係が仕事をする前に起きる事ができた
「朝食がでキてますヨ」
「うん、ありがとう」
ディラミスの持ってきた服に着替え
その間にディラの髪を整えてくれる
ばっちり決まってから
ディラは台所へと移動した
「……あ、そうそう」
その移動の最中、ディラは立ち止まった
「……昨日は、ごめんね」
昨日
それはつまらない意地でディラミスに向かって
暴言や馬鹿な命令をしたことだろう
彼なりにひきずっていたようだ
「?」
ディラミスは人差し指をアゴにあてて顔を傾ける
人で言うならなんのこと?
ロボでいうなら解析不能といったところか
「ディラくん、朝ご飯ごゆっくリ」
「う、うん」
相手が人間だったら気をつかっているのか
などと考えることも出来るが相手は無機質な生命体
どちらとも捉えられないし、あるいは捉えられない
むしろディラミスは何も思ってないとわかったディラは
気持ちを切り替えて朝食の席についた
「おぉ、ディラ 今日はすっきり起きれたねぇ」
テレビをみていた母がこちらを向いて笑顔で言う
「うん、慣れたかな
そういえばお母さん今日やすみ?」
「そうよ」
ディラはやった! と思った
と、いうのも母が休みの時は外に遊びに行けるのだ
「ねぇ遊びに行っていいよね!」
「ん? いいよーいっといで」
母の許可を得てディラは電話のもとへと走り出した
ピッピッピッピ……
誰に電話をかけるのか慣れた手つきで数字を押す
「……」
それを遠目で見つめているディラミス
「あ、おれだよリュオル!」
ディラが電話をかけた相手はリュオルという少年
1年前にディラの住む町に越してきて
その頃から一緒に遊んでいる仲だ
「……登録名、リュオル」
その様子を見ながら呟くディラミス
ひそかに電話番号と相手をインプットしたようだ
そんな事とはつゆしらずディラは電話を続ける
「今日お母さん休みだから一緒に遊ぼうよ
……うん、うん……いける? よしじゃあお昼に家いくね!」
ガチャッ
電話を切ったディラ
会話の様子だと遊ぶ約束は無事取り付けたようだ
「じゃあお母さんお昼にいってくるね!」
「はーい、いっといで
……あ」
これはいつもの日常光景なのだが
母はいつもと違うことに気が付いた
それは勿論、ディラミスである
「ディラくんお出かけでスか?」
母の食べた朝食の後片付けをすませながら問う
「うん、友達のところ」
「同行しましょウか?」
ディラは返事に困った
一瞬、ディラミスを自慢してみようかなとも思ったが
今考えてみると自分と似たような名前に女の形をしたロボット
もし、リュオルにあわせた時のことを想像すると恥ずかしくなったのだ
別にどうということはないかもしれないが……
「……いや、いいよ 大丈夫 こなくて」
だから断った
「わかリましタ」
そう言って後片付けに戻るディラミス
ハッ、としてからディラは置かれていた朝食を食べ始めた
それから数時間後、お昼を迎える
「いってきまーす!」
約束の時間がきたので
久々の友との再会に心躍らせ家を出た
その後ろではディラミスがいつまでも手を振っていた
――リュオル家 前
シャラーーンッ
鈴のチャイム音が鳴り響く
ディラは友人の家に到着した
「……ああディラくん、こんにちは」
ガチャっと静かに扉を開けて顔を出したのは
銀髪のショートカットの少女……いや、少年だ
ディラと背丈はほぼ変わらないが
見るからに内気そうな少年である
「うわ、なにその服」
扉を開けて出てきたのは知った友の顔だが
その友の服装には見覚えが無かった
体全体をすっぽりと覆う白のローブを着ている
「うん……まぁ入ってよ」
とりあえずディラは聞きたい事を後にして
微笑む友の言葉に甘えて家へ入ることにした
「こんにちは」
家に入るや否や今度は少女の声が聞こえた
前髪は揃えておりショートカットと銀髪
いや、顔もリュオル似だ
物静かなところもそっくりで
おおかた彼の妹といったところだろう
背丈もリュオルやディラと変わらない
「おばさん、こんにちは~」
しかしディラは彼女をあろうことかおばさんといった
どこがおばさんにみえるのだろう?
しかし彼女は怒ることなく静かに微笑んで家の奥へ消えた
これにはさすがに説明が必要で
リュオルというのはそもそも 幼魔(ようま) といわれる一族であり
肉体は人間で言うところ15歳ぐらいまでにしか成長せず
寿命が尽きるまでその肉体を維持する極めて珍しい種族だ
つまり親子と外見の差がほぼ無く
知っていなければ誰が娘で誰が父だ などというのはわからない
もちろん先ほどの少女は少女ではなく立派な成人幼魔
リュオルの母ということだ
ちなみにディラは魔界の中でも目立った特長が無い
魔人 といわれる種族である
「どうぞ」
そんな説明をしている間に
ディラ達はリュオルの自室へとやってきた
同じような子供部屋といった雰囲気だ
「でさ、どうしたの? その服」
再び同じ質問をするディラ
「うん……あのね、そろそろお母さんが
魔導師の勉強しなさいって服だけくれたんだ」
「まどーし?」
ディラには少し聞きなれない言葉だ
「まほうだよ、まほうつかい
ぼくのお母さん魔導師だから……」
「へぇー! まほうかぁー!」
ディラはワクワクしてきた
と、いうのも彼の家系は戦士一筋
聞けばディラ母の父母も
ディラ父の父母さえも戦士だったと聞く
およそ魔法とは無縁なのだ
「もう魔法は使えるの?」
「あ、いや……まだ
でもそろそろ勉強する予定なんだ」
そういって一冊の本を持ってくるリュオル
それほど分厚くないが表紙には魔法使い入門
と、かわいいロゴで飾られている
「これね、誕生日に貰ったんだ
でも文字いっぱいで……ちょっとずつ勉強中……」
ちょっと照れた笑みを見せる少年
彼自身も魔法が使えるようになったら、とわくわくしているのだろう
そんな笑みのまま彼は質問してきた
「ねぇ……ディラくんは誕生日に何をもらったの?」
なんとこのふたり 誕生日は同じなのである
知り合ってからそれを知って更に仲良くなったのだが
ディラはその質問に対して返事に悩んだ
「えーと…」
何でもいう事を聞いてくれる忠実な女の子のロボット!
……とはこの年頃で言うのは恥ずかしい
「俺はね………剣!」
あまり長く悩んでは怪しまれるので彼はそう言った
「剣かぁ……ディラくんも戦士になりなさいっていわれたの?」
「……うん そう、戦士になるための第一歩ってことで!」
ディラも戦士になりなさい
そういえばそんなこと言われたことがなかった
親にしてみればなるのは当たり前だと思っているのか
彼自身の、ディラ自身が自由に決める事なのか
義務教育も特に無い魔界では
職業はまだしも戦士や魔導師といった
戦型(せんけい)というものについて幼い年齢から考える必要がある
戦士は正式名称では強戦士
その他にも、拳闘士、呪術師、癒術師 様々な型がある
魔界では自分の能力にあった型を持たずして
強くなる事ができなければ生き延びる事もできない
リュオルの口から何気なくでたその言葉に
……そして、自分の進路を一つ決めていた友人を前にして
実は前々から悩んでいた戦型について
改めて考えさせられるのであった
「ディラくん……?」
「……あ、ごめんね 俺はほんとに戦士がいいのかなって
ちょっとおもったりして」
コンコン
ちょっぴり変な空気が漂いかけたその時
ノックと共にリュオルの母がおやつを持ってきてくれた
「ディラくん、今日は門限まもりなさいね……」
「あ、すいません はは……」
おっとりとやさしい笑みでリュオルの母から注意される
彼はいつも時間を忘れて門限を破ってしまうのだ
その後、彼は友人とお話したりゲームをしたり
久々の再会を楽しんだが
リュオル母の言葉や、その他いろんな考えもあり
今日は珍しく夕陽の落ちる中 家へ帰ることにした
――そして自宅の前
「ディラくん、おかエりなサい
夕食はまだデすよ?」
いつからまってくれていたのか
いまでてきてくれたのか
ディラミスが家の前でディラを迎えてくれた
「あ、ただいま」
そういえば俺の誕生日はメイドロボ
……剣じゃなかったなぁ
そんなことを思いながら彼は自宅の光へと消えていった
4日目―ディラくんの誕生日プレゼントは―
まタ明日……
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