第47話 威嚇される俺

「止まれ! 」


 野太い男の声が森のなかに響き渡る。

 久しぶりに聞いた人の声が警告って人生つまらない。

 歩みを止めて声がした方向に顔を向ける。


「武器を置け!跪いて手を地につけろ! 」


 俺は構わず声が聞こえた方に無かって叫ぶ。


「……誰だ、姿を見せろ! 別に争いに来たわけじゃない!」


 それには声の主は答えず矢が2本、俺の立っている近くの木に突き刺さる。

 相手は二人?

 争うのは嫌なので武器だけは置いて話しかける。


「良くわからないが、俺は争うつもりはない。

 ご覧のとおり武器は手にしていない。

 少し話を聞かせてくれ。良ければ商品を交換させてくれ。

 無益であれば立ち去る」


 少し間をおいて茂みの中から男が出てきた。

 貫頭衣に身を纏い老境に差し掛かったような男だ。

 髪の毛に少し白髪が交じっている。


「後ろの弓を持った何かにも武器を降ろさせろ」


 男に言われ後ろを見るとエバが臨戦態勢をしいている。

 エバに合図して武器を降ろさせると、手を広げ男の方に歩み寄る。


「俺はシンゴという名前だ。少し話を聞かせてもらえないだろうか」


 男は無言で竹槍を構えて無言でこちらの様子を窺っている。


「俺は旅の者だ。何か交換できるようなものはないだろうか」


「……ここまでどうやって来た。お前一人か?

 後ろの動く人形のようなものはなんだ? 」


「廃村から道を見つけてここに辿り着いた。

 後ろのものは勝手に動くようになっている人形だ。

 それ以外には誰も居ない」


「人形だと?

 そんな人形は聞いたことがない。

 貴様何者だ? ラタールの奴らか? 」


「ラタールってのは知らない。いい加減槍を下げてもらえないか?

 迷惑だったら立ち去るつもりだよ」


「弓と剣を預からせてもらうが良いか? 」


「ナイフは渡せないが、それで良ければ了解しよう」


 男は後ろに隠れていた人間に顎でしゃくるように合図をだすと得物を取り上げ、名乗った。


「俺の名前はガル。村には入れられないがその手前の番屋までは案内しよう」


 ガルは俺に背を向け歩き出した。

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