使えない祝福とぼっちな俺<改訂版>

@WOKI

第一章 サバイバルな俺

第1話飛ばされる俺

 いきなり森の中に立っていた。

 手には斧をもち腰には鉈が吊ってある。


 「……えっ! なにこれ!」


 思わず声に出してしまったが、森の中で誰もいない。


 耳を澄ませても風の音と、鳥のさえずりが聞こえるのみ。


 さっきまで事務所でデスクワークをしていたのに…

 朝から調子悪くて頭痛がしてたが…そういえば頭を殴られたような感覚のあといきなりこの場面に変わったな。


 そういうことか。そうか。



 俺死んだ?



 ココは死後の世界?

 でも斧と鉈をもって森の中にいるってちょっとシュール。


 でもってこの体が空腹を訴えてる。


 身体検査してみる。死ぬ?前は37歳働き盛りだったころに比べ手や肌の感じが若いきがする。ほくろや古傷なんかが違うってことは今までとは違う身体なのかね。

 そして、粗末な貫頭衣を纏いと頭陀袋をもっているようだ。中を見てみると少量の木の実とロープが入っている。


 (もしかしてこの一口で終わる木の実が食糧とか…)


 死後の世界でこれは無理ゲーじゃね?


 しようがなく木の実を口の中に放り込むと急激に口の中の水分を取られてしまい、水を探すが何も手持ちが無かった。無理やり飲みこみ周辺を改めて見渡す。


 (何もね~な。)


 足元はけもの道らしき道があるのでそれを伝って向いていた方向と逆に歩き出す。


 (この身体が自分と違うってことはこの身体が生きていた家があるはずだよな)




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 歩いて30分。ずっとけもの道にそって歩いて行くと粗末な小屋掛けがぽつんとあった。


 ――この身体の主はボッチらしいな


 周りを見渡しても他の家作はない。小さな荒れた畑とメダカらしきものが泳いでる小川があるのみ。

 このままモジモジしていてもしようがないので、意を決して中に入ってみる。


 ――こりゃひでぇ


 無残な家である。屋根はボロボロで日の光もさんさんと降り注いでいる。雨の日は屋外よりマシって程度だろう。申し訳程度にある竈。ベッドらしきものも足が朽ちそうだ掛っている布団?もないよりマシな程度の筵ぽいなにかだ。あとは勉強机のようなものと、意外なのは本棚があるところだろう。

 本棚に入っているのはぼろぼろになった日記だけだけど。

 ペラペラめくってみるとアルファベットに似た文字が書きなぐられているが、不思議なところはなぜだか読めてしまうところだ。


 ――それより喉乾いたな


 この家の主。おそらくこの身体の主は小川の水を飲んでたのだろう。

 竈においてある唯一のなべと片手に外に水を汲みに行く。


 ――そのまま飲むと寄生虫が怖いからな


 エキノコックスなんかがいると相当ヤバいので煮沸して飲むのが常道だろう。

 少し残っている薪をくべるが火種は無い。摩擦板や火打石の道具なんかも無い。


 ――こいつはどうやって火をおこしてたんだ?


 喉の渇きも耐えがたくなってきたので、背に腹は代えられんということで、ちびちび飲みながら、手に取った日記を読み始めた。

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