【第112話:封印の鍵】
一斉に跪く獣人たちに何事かと珍しくビビる頭の上のパズだったが、オレ達も展開についていけずどうしたものかと頭を悩ますことになってしまっていた。
「いや。さすがに跪かなくても良いと思うんですけど……?」
とオレが言ってみるのだが、
「いいえ!我らの悲願どうかお導き下さい!」
と言って、今度は地面に頭を擦り付けるようにしてくる。
「ユウト殿……困ったでござるな……」
「そうだな……」
「僕……今まで『パズ様』の事、『パズ殿』って失礼な呼び方してしまっていたでござる!?」
「困ってるのそこ!?」
などと、バカなやり取りをしていると、
「あ!?ユウト!逃げるぞ!?」
グレスがパズがそ~っと動き出していたのに気付いて叫ぶと、グレスの叫びと同時にパズが逃げ出そうとする。
しかし、念のために『第三の目』を起動していたオレはパズの首に巻かれた従魔の証を既にそっと握り締めていた。
「ばぅ!?」
「フフフッ。甘いぞパズ。当事者なんだから逃がさないよ?」
「ばぅーー!?」
と、パズを観念させて一緒にその願いとやらの話を聞くことになるのだった。
~
「……えっと……それでその呪いとやらはどうすれば解けるのですか?何か手がかりとかあるのでしょうか?」
オレは単刀直入にそう聞いてみるのだが、
「すみません。私たちも口伝にてそう伝わっているだけで、具体的にどうすれば良いのかがわからないのです。ただ、『パズ様』に協力する事で結果的に呪いは解かれるだろうと……」
と、申し訳なさそうにこたえる。
「そうですか。さっきオレの権能で調べてみたんですが、何らかの呪いのようなものは感じるものの呪いそのものは獣人の皆さんに直接かかっているわけでは無さそうなので、オレの力で直接呪いを解くのは難しそうですね」
オレは呪いなら聖なる力の≪
「でも、ユウトさん。伝承の通りなら最初の予定通り、私たちは私たちの為すべきことをすればそれが解呪に繋がるのではないでしょうか?」
リリルがちょっと自信無さそうにそう言うと、今度はシラーさんが
「そうですね。パズ様をはじめとしたあなた達がこの獣人の村に来たのは何か目的があったのではないのですか?もしかするとそれが呪いを解く鍵になるかもしれません。差し支えなければ目的を教えて頂けませんか?協力は惜しまないつもりです」
そう言って、頭をさげてくる。
「それなら俺っちから説明させてもらうっち。だけど、絶対に他言無用で頼むっち」
グレスはそう言って、ここに来た目的をシラーさんや集まった獣人の人たちに話し始める。
皇国に攻め込んだ魔人や魔物の軍勢を退けた折に、サルジ皇子が攫われた事。
乗り移られたというのは抵抗があった為、操られている可能性が高いという事。
そしてサルジ皇子の匂いをパズが追ってきたところダンジョンの方に向かっていたこと。
この村にも若干匂いがあったようなので、事情を聴きたくて寄ったこと。
ダンジョン方面にも匂いが続いていたので、ダンジョンに身を潜めているのではないかと疑っている事などを掻い摘んで説明する。
「そんな大変な事態になっていたのですね……。申し訳ございません! サルジ皇子様はこの村の者にとってもご恩のある方なのですが、8日ほど前にこの村を訪れていました。まさか操られてるとは思いもよらなかったのでダンジョンの中に入る封印の鍵を欲しいと申されましたのでお渡ししてしまいました……」
オレ達というかパズの追跡は当たっていたようで、シラーさんから有益な情報をゲットする。
するとグレスが興奮して、
「な!?やっぱり来てたっち!!頼む!シラーさん!俺っち達にもその封印の鍵を貸してほしいっち!!」
と頼むと、シラーさんは
「わかりました。ただ、封印の鍵はサルジ皇子様にお渡ししたものしかないのです」
と申し訳なさそうに答え、リリルも
「そ、そんな……何とかならないのですか?」
と思わず尋ねてみる。すると、シラーさんは
「大丈夫です。お渡し出来る鍵は一つしかないのですが、私がご一緒させて頂きます」
任せてくださいと、そうこたえる。
「どういう事でござるか?シラー殿の魔法か何かで封印の鍵の代わりになるでござるか?」
「いいえ。魔法ではなく私そのものが鍵となるのです。代々村長の家の者に受け継がれる血が鍵となるのです」
~
こうしてオレ達はシラーさんを仲間に加えて急ぎダンジョンに向かう事になるのだった。
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