【第69話:予兆】
≪我は『
≪
光の文様が現れ回転して光の障壁を作り出した瞬間だった。
ガキン!!
光の障壁に巨大な何かがぶつかり砕け散る。
「うわっ!?あっぶねぇなー!!」
オレは2mはあろうかという氷柱をギリギリの所で何とか防ぐが、回り込んでくる小さな影に少し反応が遅れてしまう。
「ばぅぅん!!」
飛び出してきた小さな影がオレの後頭部にかじりつく。
かぷぅっ!
「めちゃ痛いんやけどぉ!?」
そう。パズは本気で心配してくれていたようで、無事だった連絡を入れるのを遅れた事に物凄くご立腹だった。
「ユ、ユウト殿…。頭から血が…」
パズは頭に噛みつくのに成功すると、作戦成功したと勝ち誇った気持ちを送ってくる。
「ほんとにごめんって!後で干し肉あげるから許して!」
となだめてみるが後頭部にぶら下がるパズはまだまだ放してくれなさそうだった。
~
オレ達は闇の眷属がエルフの里に送り込もうとしていた軍勢を殲滅する事と『世界の理を壊す者』を捕らえる事に成功したが、変異種を葬った際にあふれ出た負の力は特殊な呪具で吸収されて逃げられてしまった。
(いや…逃がしてもらったと言った方が良いのかもしれないな…)
オレ達はあの時点でゼクスと名乗る闇の眷属と真正面からぶつかっていれば、恐らく良くて引き分けだっただろう。
『第三の目』を使って読み取った力は計り知れないものがあった。
そもそも歴史に何度か登場しているような魔人なのだ。
パズがいても負ける可能性があるほどだった。
「ユウト…。後頭部にパズぶら下げて真剣な顔で考え事してもただの変な奴だぞ…」
メアリからの突っ込みで我に返るが、結局そこから解放してもらえるまでに30分もかかるのだった。
~
パズから解放された後、オレはエルフの里に向かう道中でゼクス達の情報を皆に共有していた。
何事も情報共有は大事なのである。
「えっと…、それじゃぁさっきいた魔人っていうのは歴史に何度も登場するようなとんでもない化け物だったんですね…」
とリリルが今更ながらに絶句する。
ゼクスは数百年前に魔物の軍勢により3国が滅んだ時の話や、千年前の邪竜が現れた時の記録にも残っているような伝説級の魔人だった。
そのどの話でも切り込み役のような形で登場しており、その全てで甚大な被害を人類に与えていた。
そして更に最悪な事に、その登場した歴史の全てでその後に本格的な魔物の軍勢の侵攻がはじまっていたのだ。
「じゃぁこの後、世界的に魔物の軍勢の侵攻が始まる可能性が高いということじゃない…」
とんでもない事態になるかもしれないという話に、本日驚きどうしのメアリがまた驚く。
「そうですね…。里に戻ったら族長に話して他の街、国などにも警告を発してもらおうと思っています」
「これからどうなるでござるか?ユウト殿はどうするつもりでござる?」
さすがのメイも神妙な顔つきでオレに聞いてくる。
「正直オレもさすがに事が大きすぎて どうすれば良いかわからないよ…祈ってセリミナ様にでも聞いてみるか…何か教えてくれるかもしれないし…」
とオレもどうすれば良いのかと思い悩んでうっかりセリミナ様の名前を出してしまう。
「え?暁の女神様の名前がなんで出てくるの?」
と、メアリがどういうことかと聞いてくる。
「…あ…なんでだろう…ね?」
と とぼけてみるが、
「ちょっと!?何隠してるのよ!?こんな事態になってるんだからちゃんと話しなさいよ!」
メアリに詰め寄られる。
(そうだ…。さっき後悔したばかりじゃないか…。もうバレたくないとか考えずに最善の道を選んでいこう)
そう思い直し、メアリにもオレの秘密(使徒だということ)を打ち明けるのだった。
~
「…ちょっともう私はどこから突っ込んだらいいのかわからないわ。そもそも突っ込んでいいのかしら…使徒って何なのよ…使徒って…」
あまりにも驚きすぎて逆に冷静になっているメアリ。
「まぁそういうわけだから…よろしく!」
ととりあえずよろしく言ってみるが、
「何がどうよろしくすればいいのよ!どんどんスケールが大きくなってしまって訳が分からないわよ!…何かもう腹が立ってきたわ!」
と、そこから理不尽に八つ当たりされそうになる。
「まぁまぁ。メアリさんも落ち着いていください。私も最初はびっくりしましたが、今の話は全て本当の事です。今回の件も暁の女神様のお告げがあったから何とかなったんですし」
そこからリリルがなだめながら説明してくれ、ようやくメアリも納得してくれるのだった。
そしてようやくエルフの里に帰ってくるのだが、魔人登場の知らせは、すぐさま国中、いや大陸中を巻き込んだ大騒動に発展していくのだった。
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